=ネコルート=
これからもずーっとここにいたいといネコ.
~第六話 ネコと、夜。~
トキに話したネコの未練.それは自由に,思うように生きたい.
本当にそれが未練なら,日々を過ごすことが未練の解消かあ.死んでもなお日々を過ごすことが一歩ずつ死に近づくことっていうのは面白いなあ.そして死んだように生きていた生前と,生き生きと死んでいる今.
そして日々をまだ過ごしているということは未練が解消されていないということで,ということは自由に生きていないということになる...
ー1ー
刺された日以来よく甘えてくるようになったネコ.
ある日の夜,遊ぼうとネコに言われて,初めてネコの部屋に行く.死んだゆえに制限が多いはずなのに,それでも自由を謳歌しているかのようなネコの発言は春斗にはネコの生前に自由がなかったのかのように聞こえてしまう.
なついてくるのは同族意識を感じるから.この旅館で死んでいると感じるのは目の前で刺されたが無事だった春斗だけ.そう言われた.
触れ合いが増える中,春斗はネコを異性として意識し始める.ネコはこの気持ちが気まぐれじゃない前からのものだと伝える.そして唇を重ねた二人.そしてH.
展開はやくなーい...?まあ死んでるからいいか.
~第七話 口調と、ゴシック。~
ー1ー
ネコは野良猫を見て,生前たった一つのことを強要させられていた時のことを思い出す.母親から強要されるレッスン.窓の外の自由な野良猫に憧れる日々.
だから美しい音色の子なのかなー.
今日の予約外のお客様は厨二病のゴシック服の女性...デザイナーであるこの女性の未練は作り損ねた服を作りたい.そして来てほしい.
服を着るのはネコ.
旋太郎から,あまり入れ込み過ぎるといつか必ず来る別れが辛くなると忠告される.
ー2ー
しばらくして服が完成した.
おかえりになられたお客様.関わりが多かったネコはどこか悲しそうであった.
夜,春斗にお客様の話をするネコ.なにより,ネコが喜んでくれたのが嬉しかったと言っていたこと.あの口調は自分の世界観を固めるために,気分を盛り上げるために使っていたことなどなど.
ではネコの口調はどうしてなのだろう.そういう疑問が湧き出る.
毎日が幸せで,ずっとこんな毎日が続けばいいというネコ.
~第八話 ネコと、美音子。~
ー1ー
今日の予約は一組だけ.
そのお客様はネコの生前のファンであった.橙花の名前を使ってまで嘘をつくネコ.しかしその嘘は明らかにバレバレ.
ネコから夜にこのことを話すと言われた.
阿久津美音子とネコ.全くの別人であるから,ネコはやめて阿久津美音子として話す.いつもと違う声色,口調はまるで二重人格であった.
ヴァイオリニストだった美音子.CDも出して,コンサートも何度も開くほどの人気だった.母の厳しい訓練を受けて嫌々演奏していたダメな演奏者と自分のことを語る.プロを目指していた最中,事故にあい二度とヴァイオリンが弾けなくなった母は,自分の娘である美音子に自分の夢を押し付けた.それでも生まれて以来ヴァイオリンしかしてこなかった美音子にそこから逃げ出すということもできなかった.そんなある日,病気にかかり,入院し,休止し,そしてそのまま亡くなっていった.そしてヴァイオリンのない自分に何ができるのか知りたい,自由に生きたいという未練を抱いたままこの宿に来た.
ー2ー
幸運なことにお客様はファンならばとネコのことを優先して黙ってくれるようだった.
~第九話 座布団と、やきもち。~
ー1ー
amazonからネコの荷物が届いた.
ネコの荷物は春斗の部屋に置く座布団.「私がどこかに行ってしまったとしても,おにーさんの部屋に私の場所がある,これがここにある限りいつでもここに戻ってくるという証明だぞ」とまるでもういなくなるかのような悲しいことを言う.
ー2ー
今日はお客様は0.みんなで飲み会を開く.楽しい飲み会.ホッケ食べたい.
夜中,旋太郎のもとにご予約の電話.お名前はアクネヒロシ.予約は2名.
~第十話 家族と、雪だるま。~
ー1ー
予約外のお客様,父母と娘さん.予約外の担当はネコ.いつもより気合の入っているネコ.
ネコが聞いてきたところによるとあの一家は借金の末の心中らしい.未練は働いてばかりで娘さんをどこにも連れて行ってあげられなかったこと.最後の家族旅行.3人そろって雪だるまを作っていた.
それを聞いて羨ましいと思ったネコ.それほどまでに両親に気にかけられていたから.道具だった美音子とは違って...
楽しそうな娘さんと両親を見ていると涙が...本筋と関係ないところの方が胸に来るぞ.
いつも以上に率先して,その家族の仕事をするネコを見ていると今日は来ないのかと思っていたが,夜中にやってきた.あの親子をみているといつの間にか自分の母親のことを思い出してしまって,そのごまかしと言って甘えてくる.
まさかネコの親類なわけあるまいと思ったが,念のためネコにご予約のお客様の名前について伝える.ネコの様子が変わる.もう一人のお客様の名前までも知っていた美音子は私の両親ですと呟いた.
~第十一話 美音子と、未練。~
ー1ー
起きるといつも通りのネコに戻っていた.
昨日のご家族はたまたまネコが清掃しているときにお帰りになられた.ネコにお礼をいって3名様はそろってお帰りになられた.
いくら幸せそうと言ったって,この両親はクズと思いますけどね.未成年までにいくら意思決定を任せられないといったって,その生死を決めたり,未来のすべてを決める権利はないでしょう.そういう意味で美音子の両親とやってることは変わらないでしょう.
昼休み,ネコと雪だるまを見に行く.あの家族を気にかけていたのは,あんなふうに自分にも両親が好きだった時があったのだろうと思うと胸が苦しくなるからだと,雪だるまを見ながらネコは言う.そして今も.
美音子はそのまま話を続ける.別に自分は両親を嫌っているわけではないこと.しかし両親はきっと実の娘に嫌われながら死なれてしまったと思っている.それは両親に「もっと自由に生きたかった」と言ったから.
意識も朦朧とした状態で,母はまたヴァイオリンを聞かせてと懇願してきた.それが励ましであるのは朦朧とした意識の中でもわかった.それでもその言葉が腹立たしかった.だからそう最後の言葉を言った.それを聞いた母の言葉は絶望に満ちた顔であった.あの家族の娘さんのように,家族が好きなままならそんなことは...そう思ってしまう美音子.
春斗は本当の未練について聞かずにはいられなかった.それでも美音子は未練は自由に生きたいことという.もちろんもやもやはあるが,春斗に触れるとそれはすぐに消えてしまうから.未練のはずがないと.
ネコは3つの雪だるまをひと時も話さないように日陰に移動するのを手伝ってほしいという.
夜,ネコはもやもやが止まらないから抱いてくれと尋ねて来た.何も考えられなくなるくらい春斗でいっぱいにしてほしいと.
行為の後,ネコの頭に繰り返しよぎるのは,真実ではあるが真意ではない「もっと自由に生きたかった」という言葉.
~第十二話 親と、娘。~
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アクネさんが来る今日にお休みをもらっていたネコ.トキも春斗ももやもやが残る.きっとネコが休んだのは,元気な自分を見せて期待をさせたくないからだと思って.
やってきたのはネコによく似た女性とその夫の男性.
意を決してネコにこのことを伝えに行く.
説得する春斗と言い返す美音子.操り人形を求めていた母は自分なんかを求めていないという美音子は春斗までも拒絶する.
旅館にいたネコの母は働く泣きの若さを見て娘のことを口に出す.大切な娘だと.そして美音子の言葉に後悔し続けていることも.
その話を聞いていたトキさんたち.春斗は今日残りを休みにしてもらう.今は未練が解消された先のことは考えない.
再びネコに会いに行く.察するネコ.美音子に美音子の母が,美音子の最期の言葉をずっと引きずっていることを伝える.美音子が演奏が好きだと勘違いしていたことを後悔していることを.そして何より,美音子の後悔を消すために,会ってほしいことを.
図星をつかれたかのように怒り,自分の部屋に帰る美音子に春斗はただ未練を解消してほしいと願う.未練を叶えられない春斗だからこそ.
これ美音子としての未練は解消されたけど,ネコのはまだだよー的なので残るエンドなのかな?できない私が繰り返すの作者さんだからそんなことはないと信じたい.
部屋に帰った美音子は過去を思い返す.胸に手を当てるまでもなく未練は明白だった.そして部屋の片づけを始めた.
夜,ある部屋に向かう美音子.トキに仕事をやめることを願い入れる.そしてそのために必要なものをお願いする.
~第十三話 美音子と、別れ。~
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朝,トキさんから阿久根夫妻の引き留めを依頼される.その理由は美音子から伝えられた.自分の本当の未練は顔を見せなくても叶えられることも.
母に,演奏を聞かせたい.最後にされた「またあなたのヴァイオリンを聞かせて」というお願いを叶えてあげたい.
ネコとの離別のために頭を下げる春斗.
制限時間は11時.残り2時間.
ヴァイオリンは余裕をもって間に合った.まるで別れが運命かのような都合のよさ.
宴会場へと呼ばれた夫妻.美音子は姿を現さないが,その声で母だけはすぐに気づいた.ただ後ろに向くようにお願いをする声に従う二人.
絶対にこっちを振り向かないように,そう言って,美音子のそっくりさんだけど性格がすこし違って,演奏が少し下手なネコが美音子の言葉を伝えていく.美音子が抱いていた後悔.本当の気持ちを.
美音子はヴァイオリンが大嫌いだった.厳しい練習も嫌いで,それを強いる母も嫌いだった.それでも逃げられなかった.父も庇ってくれなかった.そして死ぬ前に伝えたもっと自由に生きたいという言葉は本心だったが,あのタイミングで言うべきではなかったこと.それが自分の母を悲しませた後悔になっていること.でも本心だからこそ取り消しはできないから,母の悲しみを上書きしたいと伝える.ヴァイオリンは嫌いだったけど,お母さんを悲しませた自分はもっと嫌いだから.
演奏を始める美音子.二人のためだけのコンサート.本人は好きじゃないと言っていたが,その演奏する姿は本当に両親のことが好きでたまらないように見えた.
演奏が終わり,会わせてくれと懇願するネコの母.しかし約束は約束.
憑き物が取れたかのようなネコ.それは二人の別れを象徴する表情.
~第十四話 春と、猫。~
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残された時間は10時間程度.
ネコの希望で宴会はなし.個別に挨拶をするという.代わりに一つお願い.春斗を一日貸してほしい.
二人はみんなにお別れを伝えに行く.
旋太郎から聞いた生まれ変わりの話.次は猫として春斗のもとに帰ってきて,その次はまた女性として春斗のもとに帰ってきたいなどと話をする.
そうかあ...初めてできた友達や仲間なんだもんなあ…そしてトキが母で,まことが父で,橙花が姉で,旋太郎が兄で,春斗が恋人で.
そして残された時間は二人で過ごす.二人になって初めて悲しげな顔をするネコ.まだまだ離れたくないと叶えることのできない本心をこぼす.みんなと,春斗と離れたくないという未練のために成仏できないなんて未来が来ないかとありもしない可能性をこぼす.
ただ何もせずに二人で引っ付いて過ごす.ネコとして生まれてからの思い出を話す.そしてその話が現代にいたるころにはすっかり暗くなっていた.
薄くなるネコは最後にお礼を伝えていない相手にお礼を伝える.ふたりは今度会ったときの話をする.
消えゆくネコは最期の言葉を口にする.「この旅館での毎日が楽しかったのは春斗さんのおかげ,春斗がいたからこそネコでいられた.なんだかんだいろんなことに付き合ってくれる春斗さんが大好きでした.本当にありがとうございました.同化また会える時が来たら,その時もまた甘えさせてください.大好きだにゃあ」
手持無沙汰になり旅館に戻ると,ネコの両親は仕事も休んで延泊していた.ネコさんに会えるかという願いに,もういないという真実を話す.気ままな野良猫は他のところへ行ったと.
~エピローグ~
猫がいなくなって9度目の春.ネコの部屋はずっと空けてもらっていた.
ある日,休みをもらっていつものように掃除をしようとするとそこにはあの少女の顔が一瞬見えた.そこにいたのは一匹の子猫.ネコの使っていた座布団を我が物顔で使っている.あの時の約束.
わかっていたENDとはいえ,最後は泣いてしまった...家族モノももちろん,こういう因縁ものも弱いんですよ...
うーん,なんというか春斗の感情の起伏がなさすぎて感情移入できなかった...まああとは3人家族の死因が心中っていうのも...
それでも胸が締め付けられるのは多かった!
つづく.