えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

マトリックスの感想と考察

あらすじは省略。

ノージックの経験機械が好きなのに見てなかったので今更ですが見ました。

 

ー感想と考察ー

物語冒頭から二つに一つの選択を畳みかける展開。小さなもので言ううとこれ以上遅刻しないか、それとも仕事をやめるか。大きなものは赤い錠剤か青い錠剤、どちらを服用するか。この2つの選択において、転換点となるのは、モーフィアスが捕まった後の、モーフィアスをこのまま放置するか、それともプラグを抜き、残された人類のため殺すかの選択です。ここで初めてネオは第3の選択である、マトリックスに戻ってモーフィアスを助け、人類も見殺しにしないという選択をするわけです。ここで初めてネオは救世主になったのだと思います。ここで第3の選択肢を取ったことを強調するための、二者択一の連続でしょう。思うに、預言者は救世主を救世主足らしめるための存在であって、本当に救世主を見極めているわけではないのです。

マトリックス内において、「世界」に認識を与えることが強さに直結します。だからモーフィアス、ネオは強く、外部からのプログラムに頼った他の人は弱いのです。おそらくはこの認識を与えることとは、生まれ持った、加えて培ってきた自由意志の強さでしょう。この自由意志の強さを増長させるための役割が、さっき述べたように預言者です。予言者がネオにあなたは違うということで、自分は救世主ではないという認識を植え付けます。しかしモーフィアスの選択の際、自分なら救世主でなくともできると信じることでき、能力が覚醒したと思います。覚醒したからこそ、ヘリからモーフィアスの巻き添えを危惧することなく、マシンガンをぶっ放せたのです。

 

特に経験機械との差を言うならば、もともとが機械の中であること、つまり経験機械のように思考実験として考えることができないこと。さらに一度外に出てしまうと記憶が消せないこと、そして世界を選択する際の選択肢の明示の有無が挙げられます。

記憶の継続性に関しては、リーガンがAIとの取引によって克服することができているわけですから、明らかに経験機械を基盤とした物語なわけです。

そして、テーマ自体もリーガンとネオたちの対称性、つまり機械の中の仮想的な理想と、機械の中よりも幸福でない(本作では極端に荒廃した世界での)現実の対称性がテーマとなります。

これに関してはどちらが正しいかなんて言うことはできません。快楽説を完全に否定することは不可能です。一応本作ではNEOの立場に立って、現実を選んでいますが、これに関しては傲慢です。監督が現実が重要だと伝えたいためでしょうが、物語最終場面で、ネオが一方的に世界の人に真実を伝えるのはあまりに一方的過ぎます。もしかしたらそうしているのかもしれませんが、この世界に残るという選択肢も残すべきです。

 

さてあと2つ大きなテーマが本作にはあると思います。その一つが人間に匹敵する知的生命体、もしくはAIが感情を持った際、我々はその生命体やAIにどう向き合うべきなのか。さらにそれらが人類に敵対し、さらに本作のように人類を上回った場合、屈するのか否かです。こちらについてはそれほど深く掘り下げることなく、とりあえずは屈しないとい立場が前提になっています。屈したのがリーガンですね。

 

もう一つは、自らの目的のために他者の命を奪ってよいかです。ネオたちはモーフィアス奪還のため、マトリックスに戻りますが、その際、マトリックス内の他者を殺すことを厭いません。それは現実に目覚めていないから人間として見ていないのでしょうか?それともその決断の重さを知ったうえで、受け入れて殺したのでしょうか。

 

最後に預言者が実際何だったのかについてですが、個人的にはAIのバグもしくはバグでなく、一般の考えと違う考え方のAIだったのではないかなと思います。人類は自らの生活のために自然を支配していますが、もちろん中には自然を救うべきという人もいます。ここで注意したいのは、自然を保護する目的が、人類存続のためサステイナブルに利用しようという考えでなく、ただ自然を救おうという人のことを指しています。つまり預言者は、人類に対し抑圧的でなく、手と手を取り合うべきだという、他のAIからすれば不穏分子だったわけです。今でこそ、この考えは一般的ですが、傲慢であった18,19世紀まではこのような考えは異端だったでしょう。公開当時は今よりは異端だったでしょうし、そのような人類の抑圧的態度に対する警鐘も含まれていたと思います。

 

こんなもんですかね。後はAI側がkillじゃなくてdestroyを使っていたり、完全に人類を生命体としてではなく、物体、電池として扱っていたりするところが、日本語で表現するにはどうするんだろうと思ったりしました。

 

ちなみになんで「行列」っていうタイトルなんですかね?

 

以上