=第1章=
ー1ー
物語は桃園萌花の語り部から始まる.これまでのことを忘れないようにと残した録音データ.
橘一真は他人の心の深層がノイズとなって聞こえる.話は一真がこれから一年ともに過ごす3班に入ったところから始まる.心の声が聞こえるからこそ,人付き合いが苦手.
3班のメンバー:
水泳部の風間夏希.夏希は人の好き嫌いが激しいタイプ.
幽霊が見えるという黒月沙彩.一真と同じく周囲から一線引かれている.
演劇部の大鳥百合子.高嶺の花的存在.唯一一真の名前を憶えていた.
野球部の北上陽一.自称頭が悪い.
部活は迷い中の高永瞬太.モテたい努力が空回りしている.
主人公,橘一真.祖母と二人暮らし.別に両親が亡くなったわけではない.
そして遅れてやってきた委員長の雪本さくら.一真の想いの人.さくらも一真の名前を憶えていた.
授業が終わると同時に,名前が呼ばれていなかったという桃園萌花.どんくさいと周囲から疎まれており,一真もそう想う.ただ,それは自己嫌悪だったかもしれない.不思議な感覚.まるで心の声のような萌花の声が聞こえた.萌花を班に入れる生徒.その生徒からは萌花を利用とする魂胆が聞こえた.
急いで屋上に向かう一真.その理由はもう一人の常連,さくらを観察するため.さくらの思考だけは読めない.ただ屋上から飛び降りた自分の自殺体の空想が流れ込むだけであった.そしてその光景に虜となっている一真.優等生のさくらのギャップがたまらなかった.
放課後,遅れを取り戻すかのように一真は班活動の調査に図書室に赴く.周囲の声にうんざりしていると,必要な本を半ば強引に奪われた,正確には何冊も奪われ続けた萌花がいた.そして再び違和感.萌花の心の声だけはそのままの形で聞こえている.同じく虐げられる下層の人間として,何より,萌花の心の声の心細さを聞いて,奮起する一真.萌花からも感謝された.声からも,心からも.
同じ性質を持った祖母に,心の声について聞く.萌花のように表裏のない人は心の声も肉声のようになるとのこと.わかりやすいということは,信じられるということ.そう話す祖母の言葉を一真はあまり理解できなかった.
ーー
録音の萌花はさくらを一緒に帰ったという.
ー2ー
調査してきたので結構好感度up.
人が少ない方が一真にとってはありがたいので,適当な理由をでっちあげて寺を推す.夏希以外は乗り気.不機嫌な夏希を鑑みて他のものの意見も変わる.夏希に聞いても何かと突っかかってくる.しかし同時にそんな理不尽な自分を責める夏希自身の声も聞こえて来た.
さくらはと言えば他のことで頭がいっぱいで,それも知られたくないのか心の声すら聞こえなかった.
全員がコピーをもっていることについて,萌花にあたる班員の金子.その理由は姉だからと我慢させられていて,妹を萌花に重ねてのことで自責の念もある様だった.
みんな自責の念もあるって言うのがいいですね.一般的というか.
今日も屋上でさくらを待つ.
いつもと違って現実的でない自殺体.「こんなくらいならいっそ」という声も聞こえてくる.そして一真はようやく気付いた.さくらの声が聞こえないのは大人だからなのではなく,常に何も考えないようにしているから.
「誰かを殺すくらいなら自分が」「乗り越えてしまおうか」という声がはっきり聞こえる.思わず一真も止める.
さくらにはきっと薄っぺらい言葉は通用しない.だからただ自分が嫌だから死ぬのはやめてほしいと伝える.なんとか踏みとどまらせる.またいつものように空っぽのさくらに戻った.
さくらの心情を読む一真はさくらから共感を得る.そして一つのお願いをされる.さくらの命を長らえさせたことへの一つの責任.そのお願いは「私とセックスしてほしい」というお願いであった.タナトスに魅入られたさくらのエロス的願望.
快感を感じる心の声が,まるで萌花のようにそのまま聞こえる.
確かにあの一瞬幸せだったというさくらの心の声に胸が疼く.様々なありがとうが頭に響く.一真はただ,もっとさくらのことが知りたい,もっと会いたいことを伝える.たとえ死に魅入られていても生きてほしい,そんな気持ちを抱きながら.さくらは「完全な闇と,一杉の光がある闇と,どちらが残酷なんだろう」そう思いながら屋上を去った.
放課後,前日と同様に図書室へ行く.萌花に感謝を伝えられる.あまりにも純粋無垢,人を疑うことを知らない萌花に一真は少々いらいらする.
推理小説が好きという思わぬ共通点に話が盛り上がる.そして女子と話しているのに一度もどもっていないことに気づき,昨日の祖母の運命の相手かもねという言葉がよぎる.
そしてたまたま百合子が地元の名家であることを知る.
さくらと萌花が二大ヒロインなのかなー.死に魅入られたさくらが好みだけど...
帰りの電車,夏希と居合わせる.タイムが伸びないことを思い悩む夏希.そんな時痴漢されていることに気づく.冤罪の可能性を思い,声を出せない.
そんな心の声を聞いて,関わりたくないと思っていた一真も痴漢を捕まえる.まるで探偵のように一真は被疑者の矛盾を突く.恐怖から解放された夏希は涙を流す.
夏希にとっては可哀そうですが,夏希のやさしさが伝わるいいエピソードだったかと.
それでも一日の終わりに思うのはさくらのことだった.
ーー
さくらの一言を忘れられないという萌花の音声.自分と関わらない方がいいというさくらの言葉.それでもその言葉を忘れないように,さくらのことをもっと知りたかったと涙を流しながらいう萌花.
ー3ー
朝,夏希から挨拶され,感謝を伝えられる.
さくらは学校に来ていた.よかったと心底安心する一真.
演技がうまい百合子.それでも部長にはかなわないという声.
百合子も裏表なさそうだよね.
まああとは夏希の泳ぎ姿を見に行ったり.
ワックスがけで校舎に入れないはずなのに,屋上にいたさくらは校舎から出れなくなってしまった.さくらを帰りに誘う萌花に一緒に待つことを願う一真.
とりとめのないことを萌花と話していると,夏希が泥棒と叫びながら飛び出してきた.盗まれたのは体操服という夏希.
夏希のスケジュールを知っていた誰か,つまり3班と先生が犯人ではないかという百合子.それは通報を渋る先生に通報するように促すため.それでも先生は追いつめるふりをすれば犯人が出てくるだろうとその提案に乗ろうとする.
犯人の声が聞こえない一真はそれを止めようとする.当然一真が疑われることになる.
そのまま更衣室へ向かう一同.どんな時ある声を耳にする.通報されるのはまずい,けどこのまま捜索されるのもまずい.そういう犯人の声.
ここからは推理パート.
犯人は高永 .難しいわ!確認しにデータロードしなおしたわ!
ボリュームを最大にして,かつ相手もそのことを深く覚えていれば記憶,感情までも流れ込んでくるっていうのはこの後も大事そう.そして萌花が超越した記憶力の持ち主ということも.ちゃんと図書館で昨日のことを事細かに覚えていた伏線もあったもんね.
おもしろい.ダンロン感ある.一真も推理に入るとかっこよくて好みだあ…
なんだかんだ犯人も庇って,犯人からの好感度も爆上がり.
みんなでさくらを探す.そんな時,グシャっという音とともに聞こえる悲鳴.悲鳴のもとに駆け寄ると,そこには目を見開いて頭から血を流すさくらがいた.「私が殺した」という声.
はあ⁉死んだの⁉衝撃が大きすぎる...
ー4ー
元の日常に戻ろうとする世界.さくらは自殺,そうみんなが済ませようとする.自殺なんかじゃない!そう叫びたくてたまらなかった.たとえ自殺するとしても,不完全すぎる,無様すぎる.あまりにもそれまでしていた妄想と違い過ぎる.
別に怒りがあるわけではない.たださくららしくない死をさくらの死として世界に認めさせたくない.警察の捜査も終わった.できるのは復讐か?何がしたいか自分でもわからない.きっと愛ではなく,歪んだ美しさへの羨望だったのかもしれない.ただ一つ.今日からは一人屋上に立つ.
ー5ー
夏希に呼び出される.さくらが死んだことで一真がショックを受けているんじゃないかという夏希なりの気遣い.きっとさくらのことが好きだったんだろうと.
いつのまにか一真に心惹かれていた夏希.その気持ちが声となり伝わってくる.好きか嫌いか,上か下か,得か損か.誰よりも単純な女の子.
そんな夏希は一真にエッチしようと申し込む.
私が夏希苦手だったのは同族嫌悪なんだろうな.好き嫌いがはっきりして,好きになったらこの上なく慕うけどそれまでは壁を明らかに作るみたいな.だから一真に懐いてきてからの夏希には嫌悪感がなくなったんだと思う.
夏希の誘いに乗った.それは心の声をきくため.
ー6ー
今日も屋上にいると,そこの萌花がやってきた.
萌花はさくらのことを考えていたという.あれからずっと.なぜ屋上にいたのか.何をしていたのか.なにもわからないけれど,それでも萌花はさくらは自殺なんかするはずがないという.本当のことが知りたい萌花と一真.
真実を知る覚悟があるかを問う.わからないけれど,それでもはっきりと,たとえどんなことになっても知りたいと答える萌花.二人の秘密.二人は誰にも頼らず犯人を捜し始めた.
ーー
音声上の萌花はどんなことになっても自分は大丈夫だから,がんばろう.私は本当のことを知りたいという.
ーOPー
OPめっちゃネタバレない...?
続く