えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

サナララRの感想(第3章)

ー0 一週間前AM5:09~ー

時間が迫る.しかし俺には願いなんて決められない.こんなチャンスに何の意味があるんだ.そう思うとやけくそになって一つの願いが決まった.神様への挑戦.このチャンスの意味を問う.

ーーー

少女はチャンスを願う.神様もう少しだけ時間をください...

 

ー1 出会いPM6:02~ー

子供のころは一番に足が速かった.前にだれもいないその景色が自分だけのものだと思うと堪らなく気持ちがよかった.でもしれはただ自分よりずっと前にいる人の背中が見えていなかっただけだった.

ーーー

かれこれ1週間も対象者を待ち続けている.なにもしないままチャンスがそろそろなくなってしまうと言うのに...イライラのあまり道端のカップルに下品な言葉を投げかけているとようやく見つかった.少女の名は三重野涼.覚えていなかったがどうやら元同級生らしかった.

 

ー2 願い PM6:45~ー

信じてくれないどころか素敵と言って喜ぶ三重野.かなりのメルヘン少女に少々参ってしまう高畑.お試しの願いはメルヘン過ぎたせいか不発に終わる.

高畑の学校に行きたいという願いはお試しでもさすがにもったいないので別途叶えると約束したところで,そのまま引っ張られるまま学校に行くことになってしまった.

よだかの星かあ.懐かしいね.

 

ー3 学校へPM7:28~ー

どうしても中に入りたいと強請られ,ついには折れて夜の学校へと侵入した.

三重野のわがままで学園生活ごっこをしようと誘われる.しかしついには少し強い言葉を使ってしまう.もちろんイライラもあったが,それ以上にしっかりと願いを悩んで欲しかったから.自分のようにチャンスを無駄にしてほしくない.

笑顔で願いを決めたという三重野.その願いは高畑と学園生活ごっこをしたいというもの.心が折れる音が聞こえた.もうこうなったらとことん付き合ってやる.

なんだか物語(この章に限らず)を読むほど悲しい気持ちになるな.いい意味で.だって忘れることが決まっているんですから.そんな悲しいことないでしょうに.それでも何か残るはずだから,そんな小さな奇跡を信じられるのは人間の強さなんでしょうか.

 

ー4 一時間目PM8:40~ー

そんなことをしているうちに,宿直の先生が見回りにやってきた.二人して教壇の裏に隠れる.ぎゅっとした空間に不覚にも胸がどきどきした.

高畑まで隠れる必要ないよな~~

 

ー5 二時間目PM9:40~ー

またしても見回りがやってきた.しかも今度は教室の中にまで.間一髪セーフだったが,見回りの先生のお尻を眺めていたら三重野の期限を損ねてしまったようだった.

 

ー6 三時間目PM10:40~ー

次の時間は体育.グラウンドに出たがる三重野だったが,しかし高畑にはグラウンドに出たくない訳があった.なんとかプールへと誘導するが,そこには後ろめたい気持ちがついて回る.

本番のチャンスのことを促すと,三重野は高畑の願いについて尋ねる.言いたくない.それでもなお引き下がらない三重野に思わず強い言葉をぶつけてしまった.俺の事なんてどうでもいいだろう!思わず謝りあう二人.しかし三重野だけは続けて言葉を紡いだ.高畑君のことはどうでもよくなんかないよ.ずっと呼ばれる気がしてて,今日公園に行った瞬間あの高畑君だってわかった.クラスで一番足の速い,陸上部の高畑君だって.だから私にとってはちっともどうでもよくないよと.呼吸が乱れそうになる.なんとか平静を保とうとする.もう昔の事なんて関係ないんだと言い聞かせた.

 

ー7 四時間目PM11:40~ー

いつものようにお見舞いに来たお母さん.いつもと変わらない消毒液臭い病室.お母さんを安心させるため,今日も牛乳を飲む.

ーーー

今度は廊下で見つかりそうになった.教室に逃げ込み,三度目の教壇へ.変なところに足が当たって思わず三重野の声が漏れてしまう.が,どうやら先生に声は聞こえなかったようだった.あの距離であの声に気づかないのはどうもおかしい気もするが,それどころではない体勢だったため違和感もどこかへ飛んで行ってしまった.

 

ー8 昼休みAM0:32~ー

ようやくやってきた昼休み.あと2時間で学校ごっこもおしまいだった.

二人して昼ご飯代わりにジュースを飲む.三重野は牛乳.高畑はカフェオレ...のつもりだったが横から押されて牛乳になってしまった.牛乳は身体にいいから!と.どうしてこんなに寒いのにこいつはそんな寒さも気にせずはしゃげるんだろう...でも悪くはなかった.こんなにも一緒に騒いでいるのに,それでも思い出せなかった.

三重野は高畑のことを語る.地味だった自分と人気者だった高畑君の比較.胸がチクリとする.一度だけ高畑君と話したことがあると言うと,次は今通っている女子校の話をした.話のつながりがわからない.それでも黙って話を聞いているとだんだんと話が繋がり始めた.本当はこの学校に入りたかったこと.入りたい部活があったこと.ちゃんと自分の意見を言えていたら親を心配させることもなかったのにという後悔.こんな風に自分が後悔することもなかったのに.

だったらチャンスを使えばいいんだという高畑に,三重野は前向きな返事を返さなかった.ひとまずはこの学園ごっこが終わるまでは.転校する価値があるか見極めているんだろうか.いずれにせよ,俺には三重野が願いを叶えるのを見届ける義務がある.

 

ー9 五時間目、六時間目AM1:20~ー

本当に三重野は地味な方だったんだろうか.どうも思い出せないのでそうだったんだろうが,今の三重野からは想像できなかった.しかし,もしも三重野が変わったんだとしたらそれはいい方向に変わったんだろう.

この学園の演劇部に想いを馳せる三重野.この学校の演劇部に入部すれば自分を変えられるだろうと思っていた.すべて納得がいった.今三重野は憧れの学校で,憧れの演劇のような学校ごっこをしている.少し三重野がうらやましかった.俺はこの学校にきて失くしてしまったんだから.

また三重野が嬉しそうな顔で何かを思いついたようだった.放課後のクラブ活動.付き合ってばかりだと悪いからと演劇部と陸上部の掛け持ちごっこ.胸が占められる.止めようとも思った.でも苦しさと同時に何かわからな期待もあって,その願いを聞き入れる.それにあと3時間足らずで永遠にわかれてしまう二人なんだから,最後まで三重野に付き合いたいと思った.

 

ー10 演劇部AM2:37~ー

あんまり体調は良くならない.こんなに長い入院は初めてだった.元気づけようと思ったお母さんを泣かせてしまった.鏡よ鏡,元気になった自分の姿を映しなさい.しかし窓ガラスは相も変らぬやせた自分の顔を映し続ける.前の学校のあの人みたいになれるように頑張ろう.そう自分を勇気づけた.

ーーー

三重野が見た魔法の鏡のお話.見たいものを見せる鏡は引っ込み思案の女の子のもとへと渡った.鏡に映ったのは一人の少年.少女の友達.友達ができたことを少女は喜んだが,他に友達は作ろうとしなくなってしまった.それは鏡にかけられた呪い.少女の心は日に日に吸い取られる.そんな少女を見て鏡の中の少年は苦しくなっていた.そしていつの間にか本当に好きになってしまったその感情のまま少年は姿を消した.君が思っているよりも,世界はずっと素晴らしいもので満ち溢れている.少女は鏡に映る自分の姿を見つめる.そしてやがて涙を拭き,鏡に背中を向け歩き始めた.

二人して始めたラストシーンは,三重野のあまりに真剣な表情が怖くなって続けることができなかった.

今度は陸上部の番だった.胸は疼くけれど,ここまで思いを明かしてくれた三重野に言ってもいい気がした.

 

ー11 陸上部AM3:16~ー

久しぶりの走るという行為に高揚する.以前のようには走れなかった.冷たい空気に胸が痛い.けれど中々に気持ちがよかった.

三重野はかつての自分のリレーでの活躍を憧れの表情で語る.そんな三重野に高畑は真実を言わずにはいられなかった.こんなにもちっぽけな自分を打ち明ける.三重野と同じようにクラブに憧れて入ったこの学校.しかし自慢の足は誰よりも遅くって.自分の才能に見切りをつけてしまった.それでも走るのが自分のすべてだったから藻掻いて藻掻いて.それでも1年しか持たなかった.

本当は走る才能を願おうとしていた.しかしそうはしなかった.だって俺は走るのが好きだったんじゃなくって,周りより走るのが速かったから走っていただけで,そんなちっぽけな自分が嫌になって,自分のちっぽけなプライドが許さなかった.だから自分なんかより,チャンスが欲しい人にチャンスをあげてほしいと願った.今になっては馬鹿な願い.三重野はただ高畑に感謝した.再会できたことを,今こうして高畑と話せていることを.そんなめぐりあわせを三重野は運命と言った.

解けた靴紐を三重野が結んでくれた.何重にもした固結び.もうほどけることがないから思いっきり走れるねという三重野に何も言えなかった.

もう一度だけ走ってほしい穂いわれ,自身が走りたかったこともあり1周だけ走る高畑.三重野の応援の中,ただ走る.プライドとか優劣とかそんなもの一切なしにただ走りたいから走った.もうほどけることがないから思いっきり走れるよ,そういう三重野に,今度は肯定することができた.

話にのめりこむなあ.そんな突飛な展開が続くってわけでもないし,三重野のことは若干予想がつくけれど,心にしみる.

 

ー12 屋上へAM3:52~ー

発作を我慢していた自分が悪いのに,お母さんは泣きながら謝っている.そして自分は決して泣かないと決意した.こんなにも他人に泣かれることが辛いとは思わなかった.

ーーー

三重野に連れられて屋上へ行く.これで最後,三重野はチャンスについて決意が決まっているようだった.

油断に足を取られた.ついに教師に見つかってしまう.

ーーー

苦しい.でももうあとは意識を紛らわす薬しかないと先生は言う.苦しみよりも意識を手放すほうが辛かった.でもお母さんを悲しませたくないから,その提案を私は受け入れる.意識を手放す直前,思ったのはただただ後悔.最後の最期までなにも自分で決めなかった自分への後悔.

ーーー

懐中電灯に照らされる三重野.しかし先生はまるでなにも見えていないように独り言を言いながら去っていった.

納得できる理由なんてなかったから,ただラッキーで誤魔化そうとする.そんな言葉に三重野が同意してくれたらどれほどよかっただろう.

 

屋上で,三重野は自分が1週間も遅れてきたことを謝った.行きたかったけど行けなかった.もう長いこと病院のベッドの上だったから.最近は薬のせいで意識もはっきりとしてなかったけど,誰かが呼んでいるのはわかっていた.そしていつの間にか高畑の前にいたこと.もう聞きたくなかった.

高畑はチャンスを使って三重野の命を何とかしようとした.何度も何度も額を合わせて.お試しのお願いが叶わなかったことも見て見ぬふりをして.しかし三重野はただ冷静に一生に一度も自分にはないんだよといった.

三重野は嬉しそうに芝居の続きをしようと言う.三重野涼オリジナル脚本.鏡合わせの三重野は感謝を伝えた.思い残したことを全部やれたのはあなたのおかげ.そして何よりあなたと話せたことを感謝すると.

やり残したことはキス.止まらない涙を三重野はなんとか止めようとするが,高畑は泣いてほしかった.誰よりもなく資格があるのはきっと三重野だから.

辛いなあ...ただ辛い.

 

ー13 屋上で…AM4:34~ー

Hシーンは!いらんやろがい!誰がこの状況で興奮するんじゃい!と思ってしまった.

 

ー14 夜明けAM5:09~ー

もうすぐ夜が明ける.

三重野はフェンスをすり抜けた.二人を隔てる鏡の壁.あの演劇の少女の気持ちがわかった.唐突に三重野は劇を続ける.君が思っているよりも,世界はずっと素晴らしいもので満ち溢れている.消えゆく三重野が発した最期の言葉は別れの言葉なんかじゃなくって,スタートの号令.よーいっドンッ!

 

ー15 エピローグー

隣のクラスのやつが珍しくやってきた.三重野ってやつが死んだらしい.覚えてもいない誰かの死に曖昧にうなずく高畑.

なんとなく時間を潰しに来た屋上で思い出したのは三重野と一度きり話した記憶.進路で悩む三重野に,やりたいことがあるなら才能とかそんなことで悩まないでとりあえずやってみろと偉そうに言った過去.陸上から逃げた今となっては苦い思い出.

そんな苦い思い出から逃げるように靴を取り出す.解けない靴紐.誰かの声が頭に響く.もうほどけないから走れることを,この世界が素晴らしいもので満ち溢れていることを伝える言葉が高畑の背中を押す.よーいドンっ.

 

ー16 アフターー

よくわからない世界へ戻ってきた涼.もしチャンスが間に合って,病気を治してほしいと願っていたなら私はもっと生きられたか.そんなちょっと意地悪な質問をした.答えは自分が持っている.このチャンスにそんな力はなくって,でもそのささやかな願いには人を救って導く力がある.チャンスはあくまでチャンスでそれを活かせるかは本人次第.真実はわからない.けれどそのチャンスを活かせたかどうかは涼のそのにこやかな表情が物語っていた.もし全部忘れてしまっても,高畑君の心には何か残ったと思う.だって高畑君は私のヒーローなんだから.私はこの一生の一度のチャンスにとても感謝している.そんな神様への言付けを頼む.この世界に生きた証を残せたのだから.

ばちばちに泣いた.わかっていながらも.アフターがあるからこそのシナリオだと思います.運命というものと奇跡というものを描いたストーリーじゃないですかね.漫画やアニメで言えばバナナフィッシュやアニメ,映画ではワンモアライフ,のように,死という抗えぬ運命がそこにあって,ただ偶然というか今回の場合チャンスなので奇跡と言い表した方がいいかもしれないものによって,ほんの少し人生のロスタイムが与えられる.行き着く結末自体に何の変わりもないけれど,そのほんのちょっとの時間で本人の人生のとらえ方は180度といっていいほど変わる.ありふれた構成ではあると思いますが,大好きな流れですね.珍しく2章と同じくらいファンタジーな要素が多いですが,それでもテーマが誰しも描く後悔なので2章よりよっぽど好きです.