えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

サナララRの全体の感想

ー総評と感想ー

ライターが章ごとに異なるっていうのもある意味でネックになりますし,人によってはありきたりなシナリオだって言われるかもしれませんが,個人的には傑作ですね.1,3,4,6章がお気に入り.ねこねこの入門におすすめしたい.キーワードはもちろん飛び切り苦いエスプレッソ.

1章は物語の導入を兼ねた積み重ねの重要さを描いていると思いました.当たり前のことを描く,そんならしさが大好き.当たり前の感情と,二人の積み重ねによる奇跡ともいえる偶然の再会(個人的には奇跡と偶然は同一なものだと思いますが,奇跡はなんだか素敵なことによく使う気がします).泣いたのは3章ですが,正直これが一番好き.人の死は泣いて当然(当然と言うのは言い過ぎですが)感がありますが,こっちは美しさが感じられました.こんな風に書くとまるで死があたり前じゃないかの様に聞こえてきましたが,死ほど当たり前のものもないっていうのはわかっています.病院で人が死ぬ現代だからこそ,そんな当たり前も失われつつありますが.

話はガラッと変わるようですが,死を当たり前に描くっていうのは本当に難しいんでしょうね.そんな作品読んだことあったかなあ.死を当たり前にした作品っていうのは極端な設定で簡単に作れるかもしれませんが,描くっていうのはどうも.

2章は微妙ですかね.1章と同じ恋愛に主軸を置いたものですが,テーマ性の乏しさから平坦なものになってしまった感が.つまらなくはないんですよ決して.

3章はアフターがあるからこそのシナリオだと思います.運命というものと奇跡というものを描いたストーリーじゃないですかね.漫画やアニメで言えばバナナフィッシュやアニメ,映画ではワンモアライフ,のように,死という抗えぬ運命がそこにあって,ただ偶然というか今回の場合チャンスなので奇跡と言い表した方がいいかもしれないものによって,ほんの少し人生のロスタイムが与えられる.行き着く結末自体に何の変わりもないけれど,そのほんのちょっとの時間で本人の人生のとらえ方は180度といっていいほど変わる.ありふれた構成ではあると思いますが,大好きな流れですね.珍しく2章と同じくらいファンタジーな要素が多いですが,それでもテーマが誰しも描く後悔なので2章よりよっぽど好きです.

4章は1章と同じ毛色ですが,主人公の背景がやや3章と似たもので,複数ライター故に仕方ないことですが,少し残念.いや大好きですけどね.

5章はハトでかくね!?でおしまいです.2章以上に好きじゃないですね.

6章は...なんだろうこいつ...から始まり,希未が憧れていたかっこいいお姉さんの内面が,強い意志の継承が感じられてよかったです.これを読んで1章は完結ですね.後悔をしないように生きて欲しい,生きたい.誰しもそう願いますが,選択のたび,選ばなかった方の選択の理想的な未来ばかり考えてしまい,だからこそ人は後悔せずには生きていけないと思うんです.だからこそ,選択のたび,そして毎日を一生懸命に生きなければならないと思うんです.できているかはわかりませんが.ここでも一生懸命はなにも本業だけ努力してって意味ではなく.何度も書きますが飛び切り濃いエスプレッソをっていうのは本当に神.

7章はシステムの穴をついたシナリオ.まあ良いシナリオ化はともかく,誰しもが考える穴なので,あってもよかったのかなと思います.週のうち2,3日会いたいのが恋人で,2,3日会えないのが辛くなると結婚なのかなと思ったり.週に2,3日も会いたいと思える相手なんているのか...?打算的な関係からだんだんと相手が大事になるけれど,ネックとなるのは記憶をなくすというシステム.結局神の手のひらの上で,よくできたシステムなんでしょうね.それにしてもまさかここにも苦い苦いエスプレッソがキーになるとは.そういうところ好きですが.4章は1章に近い感じになりましたが,7章はなり切れなかった感が.こう書いてる時点で私は1章が好きで好きでたまらないんでしょうね.

あとはサブストーリー.涼のサブストーリーなんかは,あの明るい性格になるための努力で,演技から始まったその性格もついには涼本人のものになっている過程がわかってよかったです.

 

共通して大事にされているのが,やっぱりそういう願いはかなえてもらうよりも叶えなきゃっていうもので,人によっては綺麗ごとだってなってしまう考え方ですが,私にはマッチしていて(というかねこねこソフトの大事にしているものがかな?)とっても良かったです.私自身どんな願いをするかなあってずっと考えながらプレイしていたんですが,いろいろ考えた結果,漠然と幸せに暮らせますようにって自分なら願うだろうと思いました.具体的な願いっていうのもいくつか考えましたが,どれも虚しいものばかりなんですよね.継続性もありませんし,そんなもので私が幸せになるとは思えませんでした.幸せになるために,何かを願う.そのことを勘違いしないように生きていこう,そう改めて思いました.

もう一つ.忘れてしまうと無駄になる.それは記憶というものの大切さを物語っています.ということは記憶を失うということは,その間のことが無駄になってしまうことに等しい.それでも人は(少なくともこの物語の登場人物)は努力する.努力してしまう.なんてけなげで美しい行いなんでしょうか.

最後のもう一つ.人は一人では生きていけないということ.本作の裏テーマだと思います.特に今作では広くとって二人でも生きていけない.7章のように,主人公とヒロイン,二人で生きていくこともできる.しかしナビゲーターにとってはこの世界には一人だけしかいないんです.そんな人生はあまりに悲しい.家族計画で,(言い回しは違うと思いますが)人生は一人で生きていくことはできるけれど,一人で生きるには長すぎると言うものがありました.まさにそれです.一人で生きていくにはあまりに悲しすぎるこの世の中(ただ生きることしかできないだっけ?).だからこそ,いつまでもナビゲーターではいられないんです,ひかりも洋一も.

最初は人によるなんて言ってましたけど,誰が何と言おうと傑作だと思います.私はコーヒーは薄いものを大量に摂取するのが好きだったんですが,飛び切り濃いエスプレッソに挑戦してみようと思います.

 

いや本当にねこねこに興味ある人はサナララの1,3,4(,6)から入ると良いと思います.

 

以上