えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

みにくいモジカの子の感想 

ーあらすじー

見た目の醜悪さから僕は虐められていた.幼いころからずっと.隣の席の双葉みゆだけは心配してくれた.気遣いだけでよかったのに,その文字だけでよかったのに,奴らはそれさえ奪おうとするらしい.「種崎君のことが好きなの」やめて欲しかった.ただ心配しあうのは同じく虐められている同族を気遣っているだけで,愛情なんて芽生える筈もない.それでも告白の場に来てしまったのは,ほんのわずかな,ありもしない可能性に夢見てしまったからだ.真実を確かめる方法は彼女の顔を視ること.120cmの世界を飛び出て,彼女の心を視ること.自分のことを醜く嫌う彼女の心が視える.見たくなかった真実.文字化.僕は人の心が文字になって見える.唯一の希望を失い,死んでしまった僕は双葉にキスをした.死んでしまった世界なんだから,もう用はない.変えよう.復讐しよう.内面が醜いんだから,外面も汚してしまおう.

これぐらい主人公は自分勝手な方がいいよ.人生に絶望しつつも,それでも光を求めてしまう弱さも良き.

みゆはみゆで,自らの復讐のため,自らを殺してまで「僕」を利用とするその醜さが美しく感じる.

自らの目的のためならば,なりたくない自分にさえなってやるという決意,漆黒の意思,私は大好きです.

 

ー総評ー

面白いのは序盤,システムに慣れるまでと,椿,鳴子ルートかなあ.普通.ととの。と比べるといけない.ただこういう新しい試みをしているゲームはそれだけで大好きではあります.一方で分岐が選択肢という目に見えてわかるものではない,見えない世界を視るという0のままもしくは0から100になる分岐なので非常に分岐がわかりにくく,バランスを取るのは難しいんだろうなあと感じました.製作者側は分岐をググることを推奨しているんですが,そうしちゃうと普通のゲームと一緒になってしまいますし...結局時間がもったいなく感じて調べたり調べなかったりしていましたが,そうすると中々にボリュームが少ない...選択肢は多い分,分岐も複雑なのかなあ.攻略サイト以外でも分岐はできるので,いくつか必須+好感度的な感じなのかな?サイト見ながらだと1ルート1.5~2時間くらいです(BADはもっと短い).

本来は二項対立的に,特にその中でも相反するものの反対側をそれそのものとして描くように意識しているのかなと思ったりもしましたがよくわからん.

復讐はいったい何を産むのか.

 

ー感想ー

以下順番に攻略

=双葉 みゆ=

復讐に魅入られたみゆ.彼女が好きな「僕」は彼女が喜ぶためなら道化にでもなんにでもなろう.

灰色で善悪の概念はまだあったみゆはついにはそんなものはなく,ただ自分が1番になるためだけに,その快に浸るためだけに行動するようになりましたが,彼女はそれが幸せなんですかねえ...快楽説,欲求充足説というものそのまま支持するつもりはあまりないんですが,みゆのあの笑顔を視ると少し揺らいでしまう気も...しないかあ...一時は幸せかもしれないけれど,きっとみゆは幸せになれない.一方で壊してしまった「僕」ができるのは彼女への贖罪.そんな気持ちはちょっとぞくっとしてよかったです.

 

四月一日 胡頽子=利害関係だけど心強かったー.

綺羅々が酷い目にあったとき,少しだけ心の中でスッとする部分があって自分が自分で嫌になりました.

人間だれしももつ破壊願望.最も醜悪な僕がそんな気持ちを利用する.破壊されたくない相手に破壊されてしまう,最も強く破壊されたい願望が満たされる.そんな気持ちを利用したシナリオ.僕は死んだが,彼女の堕ちる美しい姿が見られて幸せだったろう.

 

=九鬼 綺羅々=

こちらは復讐心のあまり,僕が狂うルート.一応はみゆルートの対称的ルートになるのかな?痛くて辛かった.綺羅々のことは嫌いだったけど,辿った末路を見ると苦しい...しかも最後はただのグロなのでやめてほしかった.復讐に狂った僕の行き着く先は何よりも望まなかった未来.自らを捨て九鬼 綺羅々を愛し,そしてその愛する者が殺された前ですべての真実を知る.嫌いじゃないです.シナリオとして.痛かったけど.

 

=花 椿=

復讐を果たし,権力を手に入れ,この学園で一番偉くなった.しかしそんな僕を憐れむ謎の笑子という人物.奴は僕がモジカであることを知っていた.まるでクラス全体を操るかのような奴を,綺羅々を操っていたやつを追い詰めることこそが次なる目的.

ここからお話が動き始めたという感じ.椿があまりに無表情で怖かった.

タマサを生み出すコンセイサマの生餌とされるため,カンヌキとされた花椿を救うため,自分と同じように能力にとらわれていた彼女に喜びを与えるため,まだ僕の復習は終わっていなかった.

それができるのはモジカであるコンセイサマ同様,心を読める僕だけというある意味王道展開.お前は俺だっ的な.やってること遠目でみればかっこいいけれど,近くで見るとただの性行為というギャッピー.椿の根源的(魂の性質というかなんというか)やさしさが,感情がないという設定がゆえに伝わってきて,よかったです().

TRUEの前で,人の心を読み取らず,考えるということを経由させるためのルートなんだと思います.自分のことが能力故優位と思っていたけれど,本当はそんなことないかもしれないという変化.

壊れたカンヌキは元には戻らない.その身代わりに僕はなろうとしたが,椿もまた僕の身を大切にしてくれていた.自分が信じられなくても,お互いになら信じあえた.僕はそっとこれまでの体験を文字化して,風土記の端に書き加えた.

彼女の顔を視ても感情が読めない→もう彼女の顔を視ても感情が視えない.この表現の仕方は大好きですね.一人称のゲームだからこそ,椿の表情こそが一番の感情が伝わるものなんですから.ここにきて,このゲームのシステムががちっと私の心に当てはまった~~

 

 

 

 

 

 

 

なんて思ってました!私の負けです!!この絶望に落とされる感覚たまらない.安易なハッピーエンドより,TRUEまで全部BADのほうがいっそすがすがしい!すこ!

ひっそりと椿が感情を取り戻して僕を拒絶するなんてのも想像しましたが,ちゃんと椿いい子だった.

 

=被検体END=

椿を見捨てて生き残った末,笑子だというゆみの声を読んで騙されたことに気づいた.すべてバレてしまった.

自らの心を潤わせるのは実験の時に得られる負の感情だけ,死こそが自由っていうのは好みなエンド.マイナスのものこそがプラスっていう二項対立を打ち破るようなストーリーが好きなんでしょうね.

だんだんと笑子の正体もわかってきて,攻略サイトもいい順番で載せてるんだなあと思ったり.

 

=混成END=

こことTRUEの分岐はどうやったらわかるんだって感じ.言われてみれば,まあここっていうのはわかるんですが,それにしても難しい気が.いやTRUEはもっと難しいのであれですけど.一回目でTRUEに行かないようにさせるためには仕方がないか.

ここにきて死というものが明確に描かれはじめ,のめりこめるようになってきました.テーマ性大事.

コンセイサマと混成,なんつって.

 

=TRUE=

眠っていた記憶,いつも一緒にいた彼女.二人を繋ぐ,僕が作った風鈴を持っていたのは許斐鳴子であり,笑子でもある.同じく彼女はモジカで,自分の心の声を偽ることのできる彼女のほうが1枚も2枚も上手である.こうして僕は鳴子のペットとなった.

ただ愛されたかった,人を好きになりたかっただけだった.ペットになった後も意地で生きていたけれど,愛される可能性がないのなら,それは耐えられないことだった.たとえ嘘であっても,彼女が僕を愛すると言うモジカにすがりそうになる.しかし,その憎しみが僕にカンヌキの力を与えた.

しかしそんなことバレないはずがなかった.なぜなら,人は人の表情で嘘を見抜けるから.同じくカンヌキの力を持つ鳴子もまた,父を憎しみその力を得た.ウソがばれるからこそ,駒が必要だった.

コンセイサマから生き延びたものがモジカの力を得られる.その真実を明かした鳴子の父,永業は僕に息子になるよう持ち掛けた.鳴子の代わりに.

そんな時,山が燃えた.すべてを破壊しつくす笑子の炎.鳴子は力を明かさず利用することだってできたはずだった.それでも僕に明かしたのは…

父との対峙.鳴子はコンセイサマに取り込まれようとする.あの時と同じ.あの時のように僕は走り出していた.

全ては僕がカンヌキの力を手に入れ,この町の秩序を壊し,また二人が手と手を取り合うため,僕が前を向いて生きていけるようになるため.

コンセイサマが死の間際残した呪言.それは二人が兄妹というもの.だから二人の愛を鳴子は否定しようとする.彼女の顔を視ても文字は読み取れない.それでもその気持ちがわかった.二人の愛は偽物なんかじゃない.

死んだことになった二人は学校で再会する.それは一致しなかった遺伝子の結果を伝えるため.赤の他人.その事実を鳴子は否定する.なぜなら二人はこれから家族となり,双子の両親となるのだから.

さすがにTRUEは結構面白かった.心を視ることに注視してきたこれまでのルートを否定するように,心を偽っても二人の絆は消えない,手は離されないということが描かれていました.

幼少期の挿入の視点がしたじゃなかったのは,後天的な能力っていう伏線だったんですかね.

やっぱり美と醜,両極端にいる二人が二人で一人なことからも,上で書いていた二項対立的な云々があると思うんですがどうなんでしょうねエ…なんて書いてたらまだ続きがあって,鳴子が同じようなことを言ってた.