えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

装甲悪鬼村正の感想(英雄編)

=英雄編=

ー0ー

かつてこの国で怒った元寇.大和人の男はみな殺され,女はみな道具として扱われた.彼はただ細々と暮らせればいいと思っていた.しかしその蒙古による所業を見て確信する.この世には悪鬼がいると.剣の降り方知らぬ彼は何も考えないまま戦に乗り込み,奇跡的に生き延びた.その時より彼の志は決まったのだ.悪鬼を討たねばならぬ.そうして彼は劒冑打ちに弟子入りした.本来ならば一子相伝の業.しかし彼の志と魂の形はすでに形作られていたため,ものの数年で劒冑を打ち終わる.それこそが正宗である.この世の悪と戦う劒冑.

 

ー1ー

正宗の武者となった一条は景明の非道の数々を雪車町から聞く.信じない,信じたくない.それでも…

 

ー2-

大鳥香奈枝は銀の悪魔に殺された.そして同時期,六波羅の暴君,足利護氏も死去した.

結局離脱するんかーい.

~~

親王,署長は勝手するGHQに危機をおぼえ,最後の手段に出ることを決意する.玉を取り,朝廷の権威を取り戻す.それは一見必要な殺人.しかし銀星号と関係のないところで人を殺すなど,今景明の中でもっとも善しとするものを殺すことなどできなかった.

~~

朝廷側が結局依頼したのは大鳥香奈枝であった,その後の足取りは不明.六波羅も彼女を追っているらしい.さらには八幡宮そのものの消失.あまりに多い謎であったが,しかし親王たちのやることはそれに気を取られていられるほど少なくなかった.それには武者の一人は必要になる.景明は銀星号に手を取られ不可能.そこで署長は一人の名前を口にする.

 

雨が降り何もすることがなく,そうすると頭の中は憧れの,誰よりもまっすぐな彼女のことでいっぱいになった.

ふと気づけば目の前にはその彼女がいる.殺意,憤怒に似たものを感じる.開かれた彼女の口から紡がれた言葉は映画のお誘いであった.

善は善,悪は悪.表でいくら悪と戦おうと裏で悪に染まるのならその人を許さない,そういう一条はやはり何かに気づいているようだった.

最後に連れてこられたのは円往寺という一条が父に連れてこられていた寺であった.悪を許さない閻魔を崇める寺.かつて悪と戦う覚悟を決めるときに父が訪れていた寺で,今彼女は覚悟を決めた.景明は悪鬼なのか.一言嘘だと言えば一条は信じてくれるだろう.しかしこれまで殺めてきた無実の人のことを鑑みれば,そんな嘘などつけるはずもなかった.新田雄飛も,村にいた蝦夷の孫娘二人も,アーマーレーサーの皇路操も,みな自分が殺した.

景明を殺すと言う覚悟とそれを現実にし得る蒼き劒冑正宗.明朝,景明を殺す,そう彼女は宣言した.

 

失意の中にいる一条に,署長は依頼を持ちかける...

景明の口調と声で蕎麦談義するのおもしろすぎでは.

 

ー3ー

銀星号を討つ妨げになるのならば,景明が成すべきことはただ一つである.然るべき断罪なのだと思う.それでも楽になることは許されないのだ.

 

偶然にも同じ流派,勝負を分けたのは情であった.一条と過ごした時間,その一瞬の油断が景明を敗北へといざなう.景明は何も言わなかった.そのことに一条は怒りを顕にする.呪い.そのことを署長から聞いていたのだった.一番最初に,一番大切な義母を手にかけたからこそ,銀星号を止められるのは村正しかいないからこそ,後には戻れなくなってしまったことを.

ついに景明が口にしたのは銀星号を頼むということ.ただ一条は景明が悪くないという名分が欲しかった.しかし景明にそんなことは関係がない.罪は罪で,悪は悪なのだから.正しいのは一条であるから.そんな景明に父を重ねる.ただ縋りつき泣きじゃくった.

一条は父となにがあったんだろう.正義に憧れると言うよりは正義に雁字搦めにされているけれども...

 

ー4ー

一条に頼まれ,連れられた先には署長が立っていた.大和の平和を取り戻すための戦い.それを手伝ってくれと一条は真っすぐな目をして言った.景明はもう誰も殺さなくていい,その役目は自分がやるから.六波羅も,銀星号も.本当に誰も殺さなくていいのならば...景明は一条に協力することを決めた.

 

ー5ー

これからは失墜しつつある雷蝶を支援し,政治に復権する.これが目標になる.そのために狙うは遊佐童心,その城普蛇楽城に潜入することとなった.

岡部姫は小夏と同じ声優だよね?

それにしても一条があまりにお間抜けすぎてなんだかなあ.

 

ー6ー

偶々護氏のご子息,四郎邦氏と出会う.周囲からの表面的敬愛,きっとこのままリフティングの練習をしても上手くなりようがないだろう.本来なら黙っていなくなるのが吉.それでもこの「子供」はきっと幸せではないのだろう,いくら裕福であっても.そう思うと迷いを吹っ切る間もなく,そのアドバイスを景明はしていた.

きっと練習すればすぐにうまくなる,それくらいの才能は備えていた.それでも彼がサッカー場を駆けまわることは決してない.

最後に逸れたボールを拾ったのはたまたま通りがかった岡部桜子姫であった.六波羅が打ち滅ぼした一族.そのことを知った邦氏の淡い恋心は苦いものへと変わった.

想像できないほど大きなものを背負う少年と少女.そこから連想されるはやはり一条であった.まるで器械のように作り物めいたものを感じさせる少女.三人が幸せであることを願う.

 

この城内の幸福な風景を羨み忌み嫌う一条.搾取はやはりは悪で,そのことに無知なことはやはり恥だから.そんな器械じみた彼女に簪を贈った.一条に花にもあればいい,あってほしい.嬉しそうに簪をつけた彼女はもう美しい綾弥一条ではなかった.

 

ー7-

邦氏を襲撃する.遊佐童心を失墜させるならそれで十分だろう.作戦は明日,城内で開かれる能が終わった後.

 

そんな折,邦氏が景明を呼び出す.それは恋の相談であった.結局花を贈ることになったのだが,直接渡せる身分でもなく,景明が届けることとなる.

敗者は敗者,戦ったという矜持しか残らない,それは邦氏も百も承知,そう伝える.勝者と敗者ではなく,同じところからの贈り物.思いやり,同情,未来へ進む力.きっと二人は遠からぬうちに邂逅することであろう.

大和物語の苔の衣,同衾ねえ.教養ってこうみると大事だよなあ.

接待二人の仲切り裂かれるわ.

ー8ー

遊佐童心はやはり狡猾なようで,景明たちも参加せざるおえなくなってしまった.

題目は岡部の敗北を連想するようなものであった.さらにその主演は遊佐童心本人であった.桜子の裏の心情までを読み取る機微,その情をあまりに巧みに演じる腕前.癪に障るが,桜子も邦氏も遊佐童心に手玉に取られていた.取られたいたのは一瞬間.実の父の顔からはぎ取った骨で作った面を実の娘に渡す,兄の頭蓋で作った椀で酒を飲ます.そんなことをやってのける遊佐童心が心清らかな僧侶であろうか.

いかん予想以上に残酷な所業すぎて眩暈がしてきた.

 

あの時,遊佐童心の腹心に見られていた気もしたが作戦の延期は考えられなかった.

嫌な予感は当たるもの,待ち伏せするかの腹心と遊佐童心.

一瞬の隙を突き,一条を逃がす.ここからやるべきことはただ一つ.

 

景明の行く手を阻むは瑞陽のかつての師.生身で劒冑とやりあうほどの腕前.気づけば左手が落ちていた.柳生常闇斎,大和一の剣客.それでも景明は陰義を使わなかった.一条ともう誰も殺さないと約束したから.村正からははっきりと諦観を感じる.劒冑の利点もなく,技では歴然とした差.負ける未来しかない.

 

一方一条が黙って逃げているわけがなかった.一人遊佐童心を追う.

遊佐童心も劒冑の使い手.右手と右足を犠牲にくれてやった一撃.それではどうにも倒しきれないほどの,いやむしろ無傷である.

腕で足りぬなら,脚で足りぬなら,肋骨であろうが差し出してやる.

 

勝てぬなら,ただ逃げればよい.失った左腕の残りを盾に逃げおおす.

 

肋骨でも足りぬ.陰義には陰義.正宗は相手からの攻撃を,ただ死なず耐えれば勝ちという.何よりも難しい要求をただ耐える一条.

城全体を焼き尽くすほどの炎.それに耐え,追い詰めた遊佐童心は笑っていた.一条が勝ち取った結末に,自らの死に,貫徹された正義に,初めての殺人に.

正宗の陰義はなんだったんだよ...

 

ー9ー

やりすぎだった.親王の制御できる力関係を大いに通り越してしまった.切られてしまった提携に,どう動くかわからないGHQ.一条の力を見誤り,忠告していなかった景明の不覚他ならない.

そして心配はもう一つ,一条の精神力である.正義のため,自らの死をあそこまで覚悟できる彼女はまさしく「英雄」でそれが何より不安であった.

 

一条は六波羅四天王の一人をッ破ったことを心から喜んでいた.しかしそれも新聞を読むまで.「殺害」その2文字をみると全身が震えた.遊佐童心を倒したのではない,殺したのだ.

 

夜半,家に帰ると一条はかつて贈った簪を握りしめ祈っていた.彼女は紙面の2文字からすら逃避できないほど愚直だったのだ.それでも泣かないのは彼女が綾弥一条なのだからだろう.銀星号を討つまで悪鬼の道を逸れることのできない景明は何も言えることがなかった.ただ彼女の要望を聞き入れる.それがたとえ体の関係であっても.

 

彼女から最も尊敬する父を自らの手で奪ったと聞く.二人は同じであった.

世界で一番NG(ダメ)な枕話(ピロートーク)

父殺しと母殺し,左手を失った景明と右手を失った一条.

 

ー10ー

雷蝶はやはり親王を攻め立てるようだ.

その話を聞いた一条は雷蝶を殺そうと声高に言う.次は篠川,その次は堀越.GHQが出てくるならそいつらも.なぜなら奴らは悪なのだから.最初は意思があった.その次は力.そして今は自信がある.

加えて桜子と秘密裏に生き残った腹違いの弟と残党.

親王も署長も誰も彼もが迷いはなかった.ただ迷いがあるのは景明のみ.名を挙げた者たちが死すべきだと言うのは理解できる.景明自身ももう何も殺さなくてよい.しかし納得がいかない.

母の言葉が思い出される.相手を殺してそれで終わりになると思う?もうここには「真なる正義」に抗えるものはいなかった.

一条のような正義は嫌いなんだよ.自らを正しいと勘違いしている正義.自らを悪だと自任した正義が好き.景明,頼む一条とやりあってくれ...

 

ー11ー

景明たちが雷蝶のもとへ向かっている頃,親王,署長たちは茶々丸の軍に攻め入られ,その戦いは長くは続かなかった.琴の結末は署長と茶々丸の相打ち.

死んだはずの操の声の店員.

やばい,景明が煩悩にやられた!と思ったらめちゃくちゃすごい観察眼だった.かっこいい.

呪いのため悪人ですら殺すのを戸惑う景明のほうがいつの間にか人間らしくなっちゃったな.

 

ー12ー

思いのほか楽に雷蝶のもとへとたどり着けた.それもそのはず,たどり着いたころにはすでに落城していたのだから.

敵の死体はない.なぜならば敵はただ一人銀星号なのだから.

この2年で大和が滅び切っていないという一縷の望み.光にもまだ正気な部分が残っているという希望.しかしそのような望みが叶うことはない.ただ武の道を進んできたのだと光は言う.ゆっくりやっているのはその武を景明に受け入れてもらうために過ぎない.

しかし善悪相殺,妹を切る覚悟はできても一条を切る覚悟はできない.そこへ割って入ったのは当の一条である.二人が協力し,一条が殺す.それが二人の間の理である.しかしそれを認めるのに何故だかかなりの時間がかかった.

 

怒髪天を突かれた銀星号に二人は赤子の手をひねられたようだった.善悪相殺.避けたかった呪い.しかし今は道理だとどこかで認めている.罪ある人間ならば殺させても構わない.そのような自らの罪を認めない態度こそが銀星号の怒りの原因,景明の迷いの発現であった.銀星号のいうことは真理である.ただ自らの代わりに一条に人を切らせ,その罪を正義の名のもとに押し付けていただけなのである.

銀星号の言うことに,あらゆる人を殺すはさておき,特段反論することはないってのがいいよね.それを認めたうえで,銀星号を切らねばならないのだけれど.

ここから四大将一人ずつやって,進駐軍やって,銀星号やって,一条かーとか思ってたけど,もうぼちぼち終わりそうね.

光のことも嫌いじゃないから,一人で済みそうだけどね.今回に限っては.というか自害って道も...

 

ー13ー

痺れを切らした銀星号.そこにもう日常はなかった.

~~

夢をみる.昔の夢.こちらは夢のはず.こちらとはなんだ.

平穏な日々,与えられた劒冑,正宗.憂いもなく義母を殺そうとするものを切れる.一瞬間義母の言葉がよぎる.それでも切るのだ,母を助けるために.きっと目の前の悪は誰かにとっての正義なのだろう.善悪相殺.だからこそ自身は悪なのである.どのような大義名分があろうと人殺しは悪だ.景明はずっと正義を殺してきたのだ.

そうしてまた夢の中でも母を殺す,罪のない少年を,姉妹を,親子を殺す.

きっと美しき一条の正義をすべての正義と勘違いしてしまったのだ.正義もまた罪と罰を背負う.

~~

道は分かたれた.景明が一条の正義を受け入れられないよう,一条もまた景明の行く道を受け入れられない.たとえそれが一条を殺す道となろうとも.これは呪いなのではない.ただ真実から逃避させないため,真実を拡張しているに過ぎない.善悪相殺.一つの命は善と悪はともに宿す.

 

母の呼吸を読めという教え,呼吸を見続けていた看病の日々.二人のすべてをもってしても敵わなかった.幸福な日々が妹を手にかけることを躊躇させた.

しかし,妹の口から母を殺すようけしかけたのは自分だと告げられ,すべてが二つに分かれた.意味を持つのはただ天上の敵のみ.

妹を送ったのは刃ではなく拳.自らの手で妹の心臓を潰した.

 

あと一つ,一つだけ為すことが残っていた.彼女の問いに身をもって応えねばならない.お前の悪しきものへの怒りは正しい.しかしお前の戦いは正しくはない.悪を討つものは悪でなくてはならない.それを受け入れられない一条ならば,争いの醜さを伝えるものとして切らねばならない.

銀星号との闘いで疲弊した村正の敗北であった.止めを刺す前に一条は六波羅による略奪を止めに向かう.

しかしそれが為されることはなかった.銃を放ったのは遊佐童心の可愛がっていた少年.自らの甥を姉を殺された.大恩ある遊佐童心が死に,気が狂い,そのまま階段から転げ落ち死んだ.遊佐童心に天罰が下ったとして,いったい姉が,生まれてもいない甥は何をしたというのか.一条に捌く権利があったのか.口の中にいれられた幼子の味はかつて味わったことのある正義を犯した罪の味がした.

~~

自らの民衆を思うが故の正義に狂った父は感謝されることなくむしろ憎悪された.父は切腹した.介錯人は一条である.死の間際嗅がされた臭い,腐敗臭.父はそれを邪悪な臭いという.悪を討つことも悪,そう悟った父であったが,それはどうやら遅かったようだ.あらゆる悪を否定せよ,それが父からの最後の教えであり,遺言であった.切った首が喋ったように思えたのはきっと幻想であろう.善悪相殺,それでも,それでも.そう言っていた.

~~

それでも.それでも戦わねばならない.罪を認めながら,襲われる村へと向かう.正しいものはいない.それでも正義はある.

 

景明の身体はとうに限界のはずであった.しかし一条を殺すまでは死なない呪い,だからそれまでの間,村人を助ける.

 

桜子から戦争が始まったことを聞く.すべて一条自身が為したこと.それは認める,それでも行く道は帰るつもりはなかった.戦い続ける,自らの正義を全うするために.いつの日かみなが悪なき正義があると信じるその日まで.

簪は嚙み砕いて食した.捨てられはしない思い出.それでも手放さなくてはならないから.

 

景明のいうことは認める.しかし正義を掲げることはやめない.ともに平和を求める劒冑がぶつかり合う.邪悪と正義,戦う相手が違うだけの差.赤と青はぶつかり続ける.魂のひとかけらまで,心身が朽ち果てようとも.

 

ーエピローグー

生き残ったのは紅い劒冑と少女であった.悩んだ末彼女と劒冑は一つの呪戒を定めた.なるべく人は殺さない,そして殺す場合はあらかじめ了承を得たうえ武者のみ殺す.中途半端な生き方である.それでも進み続ける.何が争いを生み,何が平和を生むか.何が悪で何が正義か.その答えを得る日まで一人歩き続ける.彼と戦い続ける.今大和には正宗という正義の集団のリーダーの名と,紅い悪魔の悪評が流布している.

殺されたくなければ人を殺すなという義母の武も,善悪相殺という妹の武も通ずるところは同じだったのか…妹だから善のほうは殺さなくていいのではなんて言っていた自分を恥じたい.

きっと景明人気から一条不人気になるんだろうなあ.景明のいう通り,一条を否定できるところもないんだけどなあ...理想は崇高な心身に宿るというけれど,なによりも純粋だった一条はその点で崇高だったのかもしれない.自らが悪とわかった上で迷いがないなら私も一条を認めよう.

好きだけど大絶賛って感じではないかなあ.まあエピローグからいっても,常闇からいっても望むべきEDではなさそうだし仕方ない.このエピローグめちゃくちゃ好きなんだけどなあ.