えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手の感想

ー総評ー

惜しい.何が惜しいかといわれればテーマは好きだけれど,ボリュームのわりに登場人物が多く,各キャラの掘り下げが不十分に感じたところ.特に立ち絵が用意されていな主要キャラの掘り下げがあまりにも曖昧で...

前半は彩香町の話,後半はシロの話.正直分割なのもありますが,メインは後半でしょう.しかし後半は二人の話ですから彩香町の話はほとんど関係ありませんし,出てきません.やりたいこととやってることがややちぐはぐなような.そこまで彩香町の仲間たちの話を描いたのは分割作品のためなんですかね?分岐ありでTRUEとしてシロルートとかならアリだったのかなあ.そう言った意味でも惜しい.会社の規模なんですかね.続きはやらなさそう.

 

それにしても蒼が魂人にならなかったのはなんででしょうね.なりそうなもんですけど.

 

テーマとしては輪廻転生と生と死.ハイデガー的な死生観が根底というかにあるんでしょうね.まあ何回存在と時間に挑んでも読破できない私が言うことなんですが.

 

いやーほんとに惜しい作品でしたね.

 

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー0ー

タンポポは嫌い,綿毛を飛ばして無駄に増えようとするから.命が多ければ,それだけ別れも多くなる,無駄な苦労が増えてしまう.でもシャボン玉は違う.宙を舞っても,すぐに自分から消えてくれる.だから,シャボン玉は好き.

少女の名前はシロバナ,タンポポと同じ名前を持つ女の子.

 

ー1ー

風見蒼空は迷子だった.そんな時,偶然出会った月森鈴の案内により漸くたどり着く.といっても目的の宿ではなく,先ほどまでいたシロを待たせていた場所.シロと話していた女性は何も覚えていない.ただシロが知っていることは彼女がもう亡くなっているということ.魂人.死んだままこの世をさまよう魂,想い残しのある場所に行くことで成仏することができる.そしてまたシロもまた魂人である.

魂人は自らの想い残しにより奇跡を操る.錯乱する彼女から発せられる突風.普通ならば自然災害となるであろうその風を,同じく風を操るシロが抑え込む.シロの想い残しのほうが上回ったわけである.

ここからは蒼空の仕事である.言霊により,魂人を落ち着かせ,成仏へと誘う.

 

女性を連れてきた場所は鈴におすすめされていた観光地.一面に広がるタンポポタンポポ花言葉はお告げ,信託,思わせぶりな言葉.真心の愛.そして別離.愛する彼と出会い,別れることとなったこの地を彼女は最期に見ることができた.もう彼女より早くに亡くなった彼を追うこともない.まるでシャボン玉のように彼女は還っていく.

え?もう泣きそう.泣きゲーしたいと思って始めたからそれでいいですが.しかし期待しすぎるとだめなので期待はしたくない...

 

ーOPー

普通.1本道なのにセーブ180個もいる?笑

 

ー2ー

亡くなった姉は魂人となって行方知らずになっている.その姉を成仏させたい,そう思い修行し,ついに旅に出た.一つ,送り人は研究者であれ.二つ,送り人は芸術家であれ.三つ,送り人は勝負師であれ.師匠から送られた言葉を胸に,今日も蒼空は旅をする.

 

ようやくたどり着いた宿で出迎えてくれたのは二人の姉妹であった.姉の名は淡雪瑞海,妹の名は咲羽.そして女将の麻衣子.これから四か月の付き合いになる.驚いたのは彼女たちではなく客人の方.どうして魂人が人間のように宿を利用しているのか.人の目に映るほどの魂人はそれに比例して強い霊力を持つ.果たして彼女は誰なのか.

 

魂人のルール,それは奇跡の代償があること.シロの場合は歩かないことを代償に奇跡を使う.シャボン玉を上手に飛ばすのもこの奇跡によるものだ.シャボン玉が飛ばなくなるのは,シロが完全に歩けなくなったことを示す.今日,土手で待たせていたのもそういうわけがあった.

一本道なのは知ってたけど,他のルート,分割式なのかよ...

 

ー3ー

今日から旅の資金稼ぎ先の勤め先へ行く.彩香女子学園の保険医,それが蒼空の仕事である.今日は入学式と始業式.女子校というのは嫌だったが,やけに魂人が多いこの町で行動するためにはぜいたくは言えなかった.

斡旋してくれた学園長は昨日の宿,四季彩にシロは泊まってほしくないようだった.

 

学園の生徒には生徒会長の鈴はもちろん,宿で出会った淡雪姉妹,そして今朝蒼空と同じく自宅が燃え,さらに迷子になっていた響七菜とさっそくできたその友人此花ゆか.

結局,宿のない七菜は鈴の手引きで,女子寮に住むこととなった.幣を常時携帯する彼女は,魂人と送り人である二人にとって,彼女の家系が送り人の家系かは気になるところであった.しかし裏稼業である送り人を早々には聞けるはずもない.

鈴,そしてゆかは七菜を含めた因縁に気づいているようであった.

 

夜,急に訪れたのはオトヒメと名乗る魂人.シロが饒舌に話すということはやはり魂人で間違いないようだった.彼女ははるかにシロよりも強い.酒を散布し,奇跡を無効にする奇跡.代償は…下着を履かないことらしい.

このたびたび鳴る鈴の音はなんなんだろうね.オトヒメがいろいろ言ってたけど.

 

ー4ー

奇跡の代償は生前の嫌悪するものであることが多い.そのことを教わったときの夢を見た.今はまだシロの生前について知れない,知りたくない.知れば送り人としてシロも送らねばならないから.姉を送るその日までは...

 

この学校の生徒にも魂人は多くいる.学園長は自分のことにだけ気を払えというので気にするつもりはないが,元送り人である彼女が知らないはずもないが.

 

今年の保健委員も咲羽になった.鈴は生徒会長,七菜は役員.新しい一年が始まったようだ.

 

オトヒメが校医であることを知る.彼女が語るように蒼空は少数流派,無採流.道具を使わず,言葉の身で魂人を送る.もちろん時間もかかり危険も多い.それでも姉を言葉で送れるなら,この流派でよかったと今は思う.

日常編なんだろうけど,きついかも.

 

ー5ー

学園七不思議が近頃学園ではやっている様子.思い込みと思われるによる実害も起こっている.しかしそれを思い込みと思わないものもいた.生徒会には鈴,そして七菜.父母から,そして鈴から認められるため,七菜は行動を開始する.そしてそれを知った二人も同じであった.

 

オトヒメは,そして学園の多くの生徒は魂人.その事実について学園長はまったく話そうとしなかった.

副学園長もまた魂人である.彼がわざわざ姉妹校からやってきたのは,ラベンダーが今,満開になったと言う事実から.異例の早さの満開.それはこの町のタンポポも同じである.そしてもう一つは姉妹校の生徒の失踪.前述の件と同じく,学園長は口を開かない.

 

ゆかと七菜,そして蒼空たちはそれぞれ夜の学園に調査に赴く.

学校ではオトヒメが見回りをしていた.それほどまでに物騒ということ.

オトヒメに驚き逃げ出した七菜と蒼空が合流し,別れて探索していたシロが魂人であるゆかをばればれながら尾行する.

 

そんな時聞こえた七不思議の秘湯,遠吠え.これは間違いなく魂人の奇跡によるもの.獣は言霊が聞きにくい,だからこそとシロは張り切って送ろうとした.送ろうとしたが,シロの奇跡の大きさに恐れをなしたのか,その狼はえらくシロに懐いた様子を見せる.その隙に逃げ出す魂獣.

 

話をする限り,やはり七菜の家は送り人の家系.危険ゆえにその道に娘を進ませたくない,その両親の気持ちが痛いほど伝わってくる.

 

追い詰めた3人に対し,その魂獣は人に危害は加えるつもりはなく,ただこの現世で眠りを貪りたいだけだと言う.人と会話ができるほどには長く存在しているこの魂獣がいうこともまた一理あった.頭の上で寝ているから首が凝る人が増えるという事実を知ると,魂獣はそのことを辞める様子であった.その言葉から嘘は感じられない.名をタマと名付けたその狼ともしばらく付き合いが続くであろう.

 

最後に出会ったオトヒメはヒントを与えてくれた.隣町の失踪事件,それは魂人が学園長の意に反し,成仏させられていること.それを止めるためオトヒメが雇われていること.その理由のヒントまではなかったが一つ真実へと近づいた.

思ってたけどゆかも魂人かー.

咲羽,なんでこんな干渉してくるんだ...いや気持ちというかそのキャラ付けはわかる.わかるけどうざったくない?

 

ー6ー

幽霊の問題を解決したと公表したわけではないが,事情を薄々知っていた魂人の生徒はそう解釈したようだった.少しずつ,蒼空に交流を持ち始める魂人の生徒たち.

 

魂人を送り返そうとする人間がこの町にも一人やってきた.その男,山代は鉾の過激派で,彼もしばらくは四季彩に宿泊する.シロのことはひとまず関与しないようだったが...

 

オトヒメと健康診断の相談.どうやらオトヒメは正式に医師免許を持っており,それは国魂人,国に協力する魂人であるというからくりであった.そしてオトヒメは山代の件は杞憂だと言う.

咲羽いるぅ…?

 

ー7ー

健康診断も無事終了.気がかりはただ一つ,瑞海の健康状態が経過観察であったことである.あれほどまでに体調を崩すことが多いのに,何故経過観察のままなのか.おそらくオトヒメの腕は悪くないだろう.けれど例えその大きなお世話でクビになったとしても,オトヒメを問いただすつもりであった.

 

蒼空が帰宅したのち,保健室にはオトヒメと瑞海がいた.普通の病院にはできない精密診断.オトヒメの渡した鈴があれば症状は進行しない.しかし根源を断ち切れるほどの力はオトヒメにはない.

 

夜,オトヒメに瑞海のことを問いただすと,態度が急変する.しかしその脅威にも屈せず態度を変えなかった二人に,オトヒメは真実を話す.国ぐるみの症状と治療,詳細については明かしてもらえなかったが,オトヒメの態度を見るに瑞海の命の心配はないだろう.

 

ー8ー

山代はこの件から手を引けと命令が下されたらしくイラついていた.そのイラつきは蒼空が送り人になった理由を話すと解消された.蒼空は嘘をつかないそれだけで十分だったようだ.家族を殺されたのか,魂人に恨みを持つ山代は期間命令を無視する.

めんどくせーーー休日くらい寝かせろよ咲羽.

 

ー9ー

此花ゆかはタンポポ畑にいた.奇跡の力で開花を促す.過去のことはわからない.それでも本能的に,自己の存在の証明のために花を捧げ続ける.その捧げものは蒼い空との思い出...

 

ふと鈴がタンポポの香水を使っている理由を聞く.それはこの町が好きだからというものであった.私が生まれ育った町,父と母が出会った町.人と人のつながりを大切にする彼女らしい理由だった.

 

鈴に影響されたからか,タンポポを見に行く二人.夜なのに満開なタンポポの花,そして花がそれぞれ光を放っていた.そしてそこには一人の少女の姿があった.忘れもしない思い出のままの姿で,何も変わらずその姿で夢歌姉さんは立っていた.亡くなった親の代わりに育て,過労の末亡くなった姉がいた.

姉さんは蒼空のことを憶えていなかった.それでもやるべきことは決まっていた.弟と認識されたいわけではない.ただ姉さんを幸せに送り出したいのだ.

 

帰宅したゆかは七菜とともに,再び学校へと七不思議の調査に向かった.そこに現れたのは一人の女性.ゆかを魂人と知る女性.彼女はゆかを強制的に送ろうとする.不意に祈ったその名前は蒼空だった.

なぜかこのタイミングでセーブが消えており,スキップの伴って盛大なネタバレを食らう.くそお…

 

ー10ー

翌朝,学園長に姉のことを問いただそうとする蒼空に,学園長は隣町で起こっていた無差別的な送りの被害にゆかがあったことを告げる.捜査を依頼されたオトヒメとともに,捜査をすることを決めた蒼空だった.

ゆかもまた霊感ある家系に生まれたのに,魂人であることに気づけず,守れなかったことを涙を流して悔やんでいた.生徒会は生徒のために行動する.七菜と鈴は捜査を始める.

 

夏秋冬という女性がまた一人,四季彩に泊まりに来た.彼女もまた魂人である.無一文だが写真を撮ってお金を作るという胡散臭い彼女に,送り人としての同情からお金が課すことにした蒼空.その蒼空へのお礼として,まだ還りたくないという彼女は奇跡のヒントを与える.カメラ,それが彼女の依代だった.

彼女は今日,また一人魂人を還そうとする.副学長は逃げおおせ,その場をタマも目撃していた.当然,タマは蒼空とシロのもとへ駆け込む.三人の再開は予想より早いものとなった.

魂人への復讐,それが夏秋冬の心残り.目の悪い彼女を大切に育ててくれた両親とともに魂人に殺されたことへの.

このような状況でも蒼空は同意の上送り返そうとする.そのための時間がオトヒメの到着を間に合わせた.現象を無に帰す力.葛藤の中にあった彼女はようやく蒼空の申し出を受け入れる.

目が悪く景色をみることができなかった.写真さえ.だからこそ捧げものは写真を撮ること.そして電気,雷を扱う奇跡.犯人が見つからないことへのイラつきを罪なき魂人にぶつけながら,その罪を感じ,忘れまいと心でシャッターを切っていた.

そして,姉のことを夏秋冬に聞く.彼女はやはり姉さんを還していた.蒼空は怒っていた.しかし人には信念があり,送り人には矜持があり,そして魂人には心残りがある.だから夏秋冬を責められない.この怒りをぶつけることはできない.だったらその怒りは自分にぶつけるしかなかった.自分だけのこの気持ちを自分と,そして愛するシロと慰めあう.

 

七菜と鈴はタンポポ畑にいた.そしてそこにはもう一人此花ゆかも.すべてを思い出したゆかは,だからこそ,蒼空との思い出があるうちは還ることはできない,したくないと言う.

えらい急展開だなあ.うーん,雑になりそうな気もするけれどどうだろう.まあこの後にはシロとの話もあるしね.

 

ー11ー

保健室に現れたゆかに,姉に涙を流しそうになりながらも必死に平静を装いながら蒼空は挨拶をした.いつも笑顔だった姉さん,それでも死の間際に悲痛な表情を溢していた.そしてその表情を見て,蒼空は笑顔で姉を見惚れなかった.今度こそは,そう決意を新たにする.

 

シロと散歩をする.姉は見つけたけれど,それはシロが好きだから.死してなお生きる魂人の生きる意義は何なのか.これからの旅はそれを探すことを約束した.

わざわざ夏秋冬を噛ませたのがどう効いてくるかなあ.

 

ー12ー

後悔があるのは魂人だけではない.残されたものもまた多くの場合後悔は残る.

一人の少女の夢を見た.

 

六月になった.カウンセリングにも来る生徒が増え,平和な日常が続いていた.それが続いていたのは蒼空が姉を送れていなかったからである.

幾度も幾度もタンポポ畑を訪れるが,しかし此花ゆかを,姉さんを送り出す決心がつかなかった.タンポポの命は短い,けれど綿毛を飛ばし,その命を紡いでいく.この世に永遠はなくとも,その永遠をきっとつなぐことができると教えてくれているようで,だから私はタンポポが好きなんです.そういう彼女.記憶を取り戻しているはずの姉.今日もまた彼女になにも言えなかった.

姉に嫌われているかもしれない.心残りはタンポポにかかわることではなくて,自分への恨みかもしれない.そう不安に思う空をシロだけが包み込む.なにがあろうと蒼空のことを愛していると.

 

オトヒメによる瑞海の定期健診.その診断は口にし難いものであった.病の進行.高すぎる霊感が魂人の干渉を受ける瑞海.きっとオトヒメを学園長が雇ったのは自らがこの町に魂人を集めた責任に近いものがあったのだろう.では何故そこまでしてこの町に魂人を集めようとするのか...誰かを,瑞海の場合家族を愛するということ,その気持ちが唯一の薬である.

めっちゃ時間進んでびっくり.

 

ー13ー

今日もまた少女の夢を見た.彼女はいったい誰なのだろうか.

 

オトヒメから瑞海の病状の報告を受ける.この町を一刻も早く離れるべきだ.その案は二人の同意するところであった.しかしオトヒメができるのはあくまで治療.彼女の望む生活を左右できる権限はないのだ.

 

瑞海は咲羽に感謝していた.感謝すればするほど,その恩に報いることができない自分が嫌いになっていく.ただ負担をかけるだけならばいっそ消えてしまいたい.何かに招かれるまま瑞海は歩こうとする.目の当たりにする奇跡.しかしそこに驚きはなく,当然のように魂人の存在を受け入れられた.気づけば多くの人が生者でないことにも気づく.人を人に思えない自分をさらに嫌悪する.

 

瑞海のことを知った副学園長は,独断で学園長の知る秘密をぎりぎりまで伝えに来た.責任者でない自分なら,学園長が話すよりも後の処理は簡単に済むから.そしてなにより生徒たちが好きだから.魂人を集める国策,そしてそれをさらに利用しようとした学園長.

 

近頃見る夢のために体調が悪くなっているのは事実だった.だからオトヒメの問診を受ける.診断は霊障.オトヒメはそれだけ魂人に寄り添った勲章だというが,蒼空からするとそうなのかはわからなかった.けれど,その言葉はただただ嬉しかった.そしてその記憶に近づく方法は,夏秋冬であるという助言も貰った.

 

今日はゆかに姉の話をした.ずっと探し続けていた姉のことを.

 

宿に帰ると,まさに目の前で瑞海が倒れようとしていた.間一髪支えることができた.鳴り響く鈴の音.鈴はオトヒメが渡した霊障から守る道具.そして鈴は同時に神を下ろすためのもの.オトヒメの想像以上に瑞海の霊感は強かった.

 

ゆかは夜もタンポポに水をあげる.蒼空が旅立つ夏の日まで.蒼空への想いを胸にしまいながら.悔いなく弟の前で旅立てる日まで,捧げたくない,蒼空との思い出を捧げながら.

副学園長の言ったことってそんな多大なことか?ある程度普通にしていれば予想がつくような.

 

ー14ー

夢の中の少女は蒼空に空を飛びまわりたいと告げる.

 

瑞海の病状はますます悪化する.それが姉と重なって見えた.咲羽の話を聞くに,きっと彼女はもう魂人と人間の区別がついていた.学園長とそして瑞海たちは近々決断を下さねばならない.

 

盗み聞きした山代からさらに話を聞いた夏秋冬は蒼空に記憶の話をする.申し入れを受けたものの,記憶は戻らなかった.

山代いいやつじゃん.

 

ー15ー

咲羽は瑞海の笑顔が嫌だと言う.自分一人で戦おうとし,拒絶する姉の笑顔が.それは蒼空も同じだった.此花ゆかとして笑顔を蒼空に振りまく姉さんは,好きの反対は無関心としてその気持ちを貫いているのかもしれない.なぜか同時に夢の少女がフラッシュバックする.何故彼女と瑞海を重ねるのだろうか.彼女も霊障を負っていたのだろうか.

 

泣いて姉を助けてくれと願う咲羽の後押しを受け,学園長に瑞海を町から離すことを直談判する蒼空.しかし学園長はそれを認めない.魂人により生者が霊障を受けるケースは国策からして認められない.

学園長は蒼空に送り人の意義を問った.以前までならば姉を救うため,そう答えていただろう.しかしこの学園での生活を経て,その答えは変わっていた.人間と魂人の橋渡し.それがこの旅から学んだことだった.その受け答えから学園長の思惑はわかった気がした.もう一つ学園長は質問をする.蒼空にとって魂人とは何か.その答えはまだ蒼空にはない.きっと姉を送って初めて答えを得られるのだろう.

学園長は瑞海を必ず助けると言った

 

夕刻,学園長は四季彩に訪れ,深く謝罪をし,事情を家族に話した.この町から離れてほしい.宿のことがあるなら瑞海だけを預かる.瑞海の母に恨みはなかった.瑞海が助かるのだから,恨む必要はないと.彼女は宿を閉じ,この町を離れると言う.娘ほど大事なものがないから.

しかしその話を聞いていた瑞海はそれを認めない.母として娘を守りたいように,姉として妹の咲羽を守りたいから.

そんな姿をみて,学園長はすべてを諦める決意を固めた.

それを知ったオトヒメは蒼空に忠告をする.今度は君がシロを守る番なのだと.

 

もうちょい学園長の葛藤とかがあってもいいかなあと思ったり.

 

ー16ー

偶然,今回の犯人を知った夏秋冬から連絡を受けた蒼空.

山代.彼と相まみえるに際し,シロの奇跡の準備は万端である.しかし送り人と魂人,相性は最悪.蒼空が間に合わなければ,シロも危なかっただろう.

瑞海が魂人のせいで命の危機にさらされた.悩んでいた山代を今回の強硬策へと踏み込ませたのはそれが理由であった.いずれ別れるからと人と魂人を異と考える山代と,それでもともに歩むと,それでも魂人も人間と同じだと思う蒼空.

 

学園長は悩んでいた.自らの患者に恋をしていた学園長.だからこそ夫が笑って旅立った時,何もかもがわからなくなった.

その出自を鈴は知っていた.それでもそれを幸福だと思っていた.人間と魂人,どちらとも友達になれる自分で生んでくれたことを.

家庭を作ることが心残りだった夫に取り残され,裏切られた気持ちになった.ずっと一緒に居て欲しかった.だから魂人が還るのは愛するものが死ぬ時だけ,そんな町を作ろうと思った.もしうまくいかなければ自らがすべて責任を持ち,魂人を強制的に還す,そう決めて.

 

鈴は蒼空に助けを求める,母を,人間を,魂人を救うために.

この物語があまりしっくりこない理由がわかったぞ.

 

ー17ー

瑞海の回復を祈ってほしい,そう全校集会で鈴は話す.想いは力に変わる.蒼空との交流を通し培ったその力を.蒼空も伝える,姉に,生徒に.生きてくれてありがとう.

 

魂人たちは還っていく.この町で暮らすうちになくなった心残り.笑顔で病に伏せる少女の幸せを祈りながら.シャボン玉が飛ぶかのような美しい光景を町の人々は見守る.

 

此花ゆかはタンポポ畑にいた.彼女は七菜に別れを告げる.改めて自己紹介をする.風見夢歌,過去に命を落とした蒼空の姉.七菜もまた自己紹介をする.響七菜,送り人の卵として友人を見送ると.

タンポポ花言葉は別離,だけどそれだけじゃない.もう一つの花言葉は真心の愛.だからお別れは笑顔で.

そして次は蒼空の番だった.夢歌の心残りは,それに心残りを,笑顔で姉を見送れなかった後悔を残してしまったこと.姉の死を受け入れるための旅の終止符が打たれる.そして姉の死を乗り越えることで蒼空の人生という旅の続きを迎えることができる.

 

残る魂人はシロだけであった.シロとずっと一緒に居たい,それが蒼空の本心である.蒼空の姉をみて決心がついたシロは,ずっと隠していた蒼空とのツーショットを見せる.そこに映っていたのは過去のシロ一人.その写真は蒼空の記憶を写し取ったもの.

記憶がよみがえる.

 

ー0ー1ー

1981年春.此花蒼は今日もまた寝坊していた.クラス委員の彼は一つ届け物を頼まれた.身体の弱い白花という女生徒.彼女は見るからに病弱そうで,美少女だった.幽霊じゃないなら消えて.二人の出会いはそんな電波なものであった.

 

ー18ー

まだ完全には記憶は戻っていなかった.取り戻すことに前向きなシロと,対照的にまるで何かを怯えているかのように尻込みする蒼空.それでもシロに背中を押されながら,記憶を求める.もうタンポポは咲いていなかった.シロは綿毛に息を吹きかける.少しずつ記憶を取り戻す.きっとこれがシロの心残りで,二人の旅の行く道なのだろう.

 

ー0-2ー

いつものように白花のもとに向かうと,白花はうずくまっていた.

近々完成する風車を気にする白花.そんな横顔を見ると自然と見に行く誘いが口から出ていた.そして彼女は初めて身の上を話す.

数年前,不慮の事故で亡くなった両親,引き取られた先での悲惨な生活.だから白花は苗字が嫌いで,そして精神的に不安定になり,病弱になった.原因は不明.仮病と決めつける親戚に,ついに白花は一人暮らしをすることを決意したのだった.

レトルトばかりの食事,かろうじて体調のいい日に行う家事.そして娯楽といえば蒼との会話だけ.そんな彼女のことがいつしか蒼は友人として好きになっていた.毎日来る,そう約束をする.半分無理やりに家事を請け負う.その報酬といい,白花は蒼にキスをした.二人に恋心が芽生える.

 

ー19ー

少しずつ,タンポポの綿毛は減り始めている.今日もまたシロは綿毛に息をかける.

 

ー0-3ー

白花が楽しめればとシャボン玉をプレゼントした.初めてのシャボン玉に,初めてのプレゼント.シャボン玉を甚く気に入った彼女は,きっと自分をシャボン玉に乗せ遠くへと旅しているのだろう.幽霊になったら自由に旅をしてみたい,蒼と一緒に歩きたい.そう白花は語った.そんなもしもを蒼も聞かれる.もしも生まれ変わったら姉が欲しい.そんなことを語る.そんな蒼に,白花は今日からお姉さんだと宣言した.

女性同士,決して結ばれることのない二人.それでもそんな常識を認めたくはなかった.常識だからと白花の病気を諦めたくなかった.それでもそれは難しい.そんな困難を容易く乗り越え,蒼を愛する白花はかっこよかった.

~~

僕は,白花の,シロの足になりたかった.

生まれ変わりモノは本当に弱いんだよお...だってシロは蒼が生まれ変わるまでずっと待っててくれたんでしょ?うるうるやね.

 

ー20ー

予定通り,1学期で保健の先生はやめることにした.

 

たった一輪だけ,タンポポが咲いていた.まるで白花のように.性を,時代を,命を乗り越えた,初恋の,愛していた人に.

 

ー0-4ー

ついに風車が完成した.はじめてのデートだった.

白花を背負いながらの道中は辛く険しいものであった.それでも今日しかないのだ.次の機会があるとは限らない.白花自身,もう自分の命は幾ばくも無いと言う.最期まで二人は離れない.

 

海の匂いがする.感じたこともない海風.白花は命を燃やしながら,風を全身に受ける.もう死ぬことは怖くない.私はあなたを愛している.死してなお愛している.いつか白花を守る未来を蒼は約束する.きっと来ることのない未来を.

不意に吹いた突風.白花にプレゼントした麦わら帽子が飛ばされる.追いかける白花.目の前は崖である.走る.走る.崖の下へと落ちる.目の前が赤く染まった.こんな最期は望んでいなかった.白花は自らを攻めながら,相手の生を祈る.祈りながら死んでいく.満開のタンポポを背に息を引き取った.

~~

私はタンポポが嫌い.それは何より蒼との別れを思い出すから.

シロは自分を恨んでいるかと蒼空に聞く.その怒りを,恨みを自らが持っていくと死ぬ前に誓ったのだからと.

そんなはずはなかった.死の間際,感じたのはただ愛だけなのだから.蒼として,蒼空として白花を,シロバナを愛している.ありがとう,探してくれtえ.

 

白花の心残りはただひとつ,此花蒼が幸せに生きてくれること.還りたくない.それでも還らねばならない.生きるために.

 

ー21ー

夢に姉さんが出てきた.いわゆる夢枕.きっと姉さんは母の生まれ変わりだったのだろう.姉さんの咲かせたラベンダー畑は新たな花へと命を紡いだ.姉さんの奇跡は独りよがりではなかった.姉さんは彼女を大切に,そう言い残し,タンポポの綿毛とともに帰っていった.

 

今日で先生としての仕事も終わる.それは別れの時.再会を願うとき.

果てしなく続く旅を約束する.いつまでも一緒だと約束する.笑顔を約束する.生きるために死ぬのだから.再び出会うことを約束し,シロを送り出す.

 

ー22ー

旅に出て10年になる.しかし旅は終わらない.教え子たちはシロのことを忘れない.そんな教え子たちから聞いた旅の終着点.かつて見た海と風車.そこに一人の少女が立っていた.そんな彼女に麦わら帽子を手渡す.何度離れようと,何度でも会う.少女の名は白.二人の関係を気にする少女に,長い長い話をする.蒼空の名を呼ぶ少女と旅をする.