本当は全角だけど全角数字好きじゃないので。
=全体の感想=
今作はねこねこの中でもかなり短めの作品。当時PS2で発売されたときの値段は知らないけれど、ねこねこのファンじゃなくてフルプライスだったら切れてるくらいには短い。しかしその短いお話こそがぽこつさんの真骨頂だと個人的には思っているので、大好きな作品となりました。
特に冬と春は大好き。春なんかは個人的に大好きなすみれの前身じゃないかなと思ったりもしました。
色としてはFDっぽいというか、ねこねこが好きな人におすすめなゲームって感じでした。
テーマは人と人との出会いでしょうか。あとがきを見ると余計にいろいろなことを考えてしまいました。
=120円の冬=
何にだってなれる、なんだってできる。そう思っていた幼いころ。いつのまにかもうそんなことは思わない大人になった。
切符を失くした家出少女との出会いは、そんな子供から大人へと変わったあの日のことを思い出させた。自分が何者にもなれないのだと気づいてしまって、電車に乗ってただただ遠くへ向かったあの日のことを。
誰しもが感じたことのある自分の漠然とした限界、そしてそのことへの焦り。過去の主人公と少女はそれを初乗り120円の切符でどこまで行けるかという、はっきり言ってしまえば意味のない行為によって否定しようとしていた。
始めは諦めに溢れていた主人公も、かつての自分とそっくりな少女を見るうちに、過去の自分よりも遠くへと無賃乗車しようとする。しかしどこまでも遠くへ、なんてことは不可能なのだ。それでもなんにでもなれる、なんだってできる、そう思っていた気持ちを取り戻すことが尊くて大切なことなんだと感じました。
涙で歪んだ、あるいは近視で歪んだパチンコの看板を、信号機を見て、色とりどりの星と勘違いし、その美しさにひどく感動する。これもまた誰しもが経験したことのあることで(少なくとも近視の人は!)、誰しもがいつの間にかそんな感動を失くしているもの。きっとその美しさはもう大人になって心が汚れてしまった私たちには本当の意味で感じることができないものでしょう。けれど、それに気づいてしまえばそこに近づくことはできます。眼鏡をはずし、色とりどりの星々をもう一度見てまたここから遠くを目指せばいいのでしょう。
ここまで子供と大人と書き続けてきましたが、きっと主人公はまだ本当の意味で大人ではありません(でした)。無力感に打ちひしがれて、それでも自分にできることはと立ち上がれた人こそが本当の意味で大人なんでしょう。お金を稼ぐから大人になるんでしょうか?成人式を迎えたからから、20歳になったから大人になったと言えるんでしょうか?そんなわけありません。
それに大人だからいいのだとか、子供だからまだまだなのだとかそういうものでもないですしね。子供が大人に憧れるように、大人も子供に憧れてもいいんですよね。
私自身は大人なのだろうか。挫折をしたことがあるかと聞かれれば、当時はきっとこの上ない挫折だと思っていたけれど、今となってはいい思い出だというものがある。それはまだ挫折をしていない子供のままなのか、それともそれを乗り越えられた上述の意味での本当の大人になれたのか。他者からすればいい歳して何を言ってるんだって感じなのかもしれませんが、おそらくは一生大人になれたかわからないまま、私は死んでいくんだと思います。ずっと自分が正しいのか、間違ってるのか、そんな答えのない問いに悩みながら。
失って当然の失っていた子供のころの大切な気持ちのありかを描いた心温まるお話でした。短いけど!短いけど、ぽこつともさんのこういう短い話が好き。
=120円の夏=
日々の中で人は多くの人と出会う。しかしその出会いのほとんどは会話すら発展することはない。人と人の繋がりはそういった困難をいくつもいくつも乗り越えた先にある奇跡。特別で、必然で、神聖なもの。そしてなによりも一緒に居たいという気持ちが必要なもの。
そんな気持ちがあったからこそ二人は不思議な力で出会ったけれど、その力が無くなったにもかかわらず、一度はもう会えなくなるはずだったにもかかわらず、もう一度会えました。ダメだと思っていてもあきらめず、ただ直向きに会いたい、そう思ってちょびっと行動するだけで偉い。
振らなきゃ飲めない飲料で、ふと古のふるふるシェイカーとかいう飲み物を思い出した。
この話は普通だったかなあ。結構個人的に意識してるからっていうのも大きいけれど、それ以上に現代では、じゃあLINE、インスタ交換しようよ!で事足りてしまうのが…ドキドキしながら電話番号を聞いて、そしてかけるのにも、親御さんが出たらどうしようと思ったり不安でかけにくくって。そんなドギマギがないわけですから…
しかし!番外編で日和と健ちゃんが見れただけ、よし!。
まさか冬と夏の二人が姉妹とは~~。お姉ちゃんもいるみたいだし、4姉妹説ありそう。
=120円の秋=
身の回りの運不運なんていうものはその人の考え方次第なのかもしれない。
お金が手に入ったから幸運とか、逆にお金を落としたから不運だとか、少なくともそういう即物的なものではない。
てっきりカンナお姉さんが主役かと思ったらそうではないらしい。
口に出して「うひょー」とか「チャーンス」とか言う人好き。
運がよくなるとわかっていたけれど、その使い道が、夢だとか目的だとかがない。そんな「冬」でも若者特有の焦りと、大切で尊いのは人と人との出会いと関係だという「夏」のシナリオの中間のようなシナリオ。
きっと足りない代金替わりに宝くじをもらった店員さんも、この宝くじをきっかけに新しい縁が繋がっていくんでしょうね。
他の二つよりもさらに短くて、さらにぱっと読めてしまいました。
=120円の春=
秋で出てきたバイトくんはてっきりおまけ主人公あたりかと思ったけど、こっちだったか。そして本当に宝くじあたってたかー。2500万。
FIREしようと土地と建物を買ったサクラと、その建物を秘密基地にしていた不登校気味の少女葉月。居場所を求める二人の不思議な1年。
自分だけが違う環境の中に飛び込まなくてはならない。それも否応なしに。それはとても勇気が必要なこと。時に現実に居場所がないからと、空想の世界に入り込むこともあるかもしれない。誰もいない世界で一人きりの時間で誤魔化すときもあるだろう。けれどそのまま生きていくには人生はあまりにも長すぎる。いつまでもたった一人だけでも時間を共有できる誰かがいれば、世界は変わって見える筈。
サクラと葉月の違いは年齢。輝かしい未来のある葉月と違って自分にはもうそんなものはないと思うサクラだったが、本当にそうなのだろうか。何かを始めるのに遅いなんてことはあるのだろうか?
みずいろ、ラムネ出てきて最高。ねこねこFD感強い。
今まではジュースとか切符が120円だったけど、食費240円。けれどそれは二人でだから一人当たり120円。
終わり方も綺麗。2500万を使って建てた葉月城を、それに興味を持った秋の二人に渡しておしまい。
=カンナ姉さんの春=
いやまあ内容はなんでもよくて、私の人生初ゲームがパンツァードラグーンだということが判明してすごい興奮。年代はあってないけど絶対これだ。