えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

生命のスペアの感想

=全体の感想=

微妙。

泣きゲーを目指した作品なんだと思います、私は泣きませんでしたが。泣きゲーは好きだけど泣かせてやるぜーは好きじゃないんだと思います。

こういった臓器提供、デザイナーベイビーの話で言えば、真っ先に出てくるのは「わたしを離さないで」でしょう。私も昔に読んだきり読みなおしてはいないためはっきりとは憶えていませんが、これとははっきりと異なった作品となっていました。前者は生命倫理と生と性を主題に時間をかけて世界の歪さと登場人物たちの心情を描いているのに対し、本作は残された短い時間を一直線に描いています。だからこそ展開がかなり急で、主人公やヒロインが悩んで悩んで悩んでそして答えを出す前に、周りからの影響を受けてヌルっと答えを出すことが多く、また短いがゆえに心理描写が不足しているように感じられ、これらがあまり好みではなかったです。

 

この作品のテーマはなんだったんでしょうか。生命倫理というには妹との件があっさりしすぎてましたし、個人的には生きる目的、アンチテーゼとしての死への恐怖ですかねえ。二人は愛というあやふやなものを確固たるものと信じることで苦痛を耐え生きる。必要とされる場所でいること、死ねることは幸福なことである。でもそれなら実際死に逝く人のドキュメンタリーの方がリアルでしょうし、タイトルのことも考えるとやっぱり生命倫理的なのがメイン。。。?

 

誰しもがまず引っかかるのが、レシピエントの恵璃とドナーの璃亜が共同生活していること、しかも実の生みの親とですね(わたしを離さないででは完全に隔離されたはず、へーるシャムを出てからも)。

イシグロの小説では)結構淡々と、ゆっくりとした表現で描かれていた記憶がありますが、それとは対照的に当事者であった竜次の視点ということもあり、結構はっきりとした感情を伴っているように思われました。一方で主人公に主体性がないため結構その差にイライラする部分も。

 

結局葉桜であるべき理由も読み取れなかったし(最後の演出のため?二人きりの世界でっていう) 、私には難しい作品でした。

タイトルからするに裏主人公は璃亜なわけですが、その真意も納得からは程遠いまま終わってしまいましたし。

 

以下はつらつらと疑問点とか不満点を。。。全部個人的な感想です!

1.璃亜の死にたくないという感情のなさ

璃亜は物語冒頭で私は別に死んでも、それで姉が助かるならハッピーという感じで生への執着というものが感じられません。小説では十数年にも及ぶ教育の末、ドナーになることへの抵抗がなくなりますが、今回の場合、当初の目的はともかく、璃亜も娘として愛されて育ってきたわけですから、拒否感くらいあって当然と思いますが。。。一方でそれほどまでの「教育」があったようには感じられない。もちろん璃亜自体は「パーツとして大事にされてきた」っていう心情があるんですが、両親の心情と矛盾するように感じるんですよねえ。2でも書きますが物心つくくらいには両親は璃亜を大切だと気づいているので。

強力な洗脳があるならまだしも、こんな状況では人の生きる意志の強さを馬鹿にしてますよ。生きるということを描く作品でこれは正直致命的なのかなあと思いました。いくら璃亜が本心から「私はスペアのために愛されている」と思い込んでいようが、そこに全く死の恐怖がないというのは別じゃないでしょうか?望まれてな宿った子供じゃないからそれ以降も望まれていないっていうのは、できちゃった婚で宿った生命を軽視しているように感じました。

 

2.両親の心情

姉を助けるため妹を造りだしたのに、一緒に暮らして、普通に接しているその心情がまったくわからない。「大事な娘」。。。?「選べるわけがない」。。。?「あのときは恵璃を助ける一身で狂っていた、成長した姿を見てようやく思い直した」。。。?えぇ・・・だったらなんで璃亜にその事実を伝えていたんだ。。。成長した姿というのが最近なわけはないし、たぶん物心つくかどうかあたりなはずなのにここまではっきり憶えているのは、そのあともスペアであることを伝え続けたからでは…少なくても本心に気づいたあとの対応は糞ほど間違っているように感じる。描かれていないので知りませんが。

良さそうな親に見えて、反吐が出るほど嫌いな人間です。ほんとに吐き気がする。「親より早く死ぬなんてそんな理不尽…」って泣くのは、恵璃が家からでていくって決めた時じゃねえだろうが!もっと前からだろ!?今そこで言うのは自分のわがままを通すための泣き落としに過ぎない。

 

3.隠すほど偏見のある疾患

隠すほど偏見のある疾患で、それ以外の理由からも竜次、恵璃は病を隠しています。が、しかし、それを隠しきれるような疾患ではないのでは。。。

それに病原が桜だという誤解が蔓延ったようですが、数千年続く桜が急に病原になるなんて発想、蔓延るんですかね。

同時に現代社会において、それほど孤立する状況に陥るのでしょうか?(結構広まっている病気という記述があったので)

忌避されるほど偏見のある疾患とは思えなかったです。

(それと激しい運動とか、クラッカーで驚かせたりとかはいいのだろうか、心疾患なのに)

 

ちなみにこういうとき、痛み止めとかもっと言えばモルヒネとかを処方するのはダメなんですかね?裏流通などを考えると現法律的に自由に処方するのはだめでしょうが…

 

4.竜次の父の存在

もちろん竜次のと両親の関係は大事かもしれませんが、それをおざなりのままほったらかしにするくらいなら、登場させなくてよかったのでは、と思いました。家族愛が作品の根幹にあるのに、主人公の家族との関係が投げっぱなしだったのが消化不良。