えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

月に寄りそう乙女の作法2の感想

 

=全体の感想=

エストルート以外は1のルナ様ルートと比べると劣る。ただエストはそれに匹敵するくらい神だから、エストだけでもやってくれ~~他はただ頭空っぽにして読む分には最高かなあ。量も少ないし。

おすすめ順はルミネ→春心→朔莉→エストでいいと思います。まあ前作同様エスト最後ならなんでもOK。

春心:人として尊敬、恋愛の流れとしてはちょっと盛り上がりに欠ける。他ルートでの出番が少ないから先にやっとくといいかなー。

朔莉:ギャップ萌え、多分一番ボリュームが少ないため性急感は否めない。春心と対照的に恋愛物として良い。ぱっと読みたいならこれ。

ルミネ:嫌い

エスト:神

 

主人公が冒頭から癖凄すぎて、読んでいけるかなあと思いましたが、結構いける。ナルシストといっても嫌味なナルシストじゃないんですよね。適切な評価って言うのもあるでしょうし、なにより、自身が強くなるためにっていう感じがして。ドS設定はね、受け入れられませんでした。

 

 

 

 

=だらだらと=

ー共通(OPまで)ー

ルナと遊星の努力が報われてて、なにより幸せそうで涙出てきちゃった。アフターとかよりもこういう形で知れた方が胸に来る。

ルミネ、もう遊星じゃん。なんかちょっと複雑だー。

才華はただのナルシストじゃないのかな?愛情をもらうためには愛情を与えなくては、だったり、髪の色を受け入れられるようになった話だったり。なんとなく辛かった過去を跳ねのけた強さみたいなものを感じる。

それにしてもイオンがもっとおかしくなっちゃったよお;;

エストお嬢様、もっと傍若無人なタイプかと思ってたけど(ルナ様と重ねて)、めっちゃ対極にある人だった。ミドルネームが月って意味なので、もう2が大好きになってしまった。エストはラストで。

いやでもルミねえとの過去を見てると泣けてきて、るみねえ最後もいいなあと…

服はただ美しければいいものではなく、人に着てもらうもの、っていう遊星の言葉、大好きだな。別に服飾の世界は知らないけど、なにごともそうだろうし。

OPまでのところ九千代が一番好きなんですけど、ルートありますかね。ないですよね。ヒロインの中では春心かなあ。るみねえとエストは当然興味があるとして、朔莉はねえ…なんなんだろうこの変態。

 

ー共通(残り)ー

朔莉の部屋が真っ白で非常に好感度が上がった。生粋の白髪フェチ、いいねえ。

 

パルコはなんというかすげえいい人。こんな人になりたい。人と比べることはなく、自分が他人の幸せに貢献したいという欲望だけがある。ああすばらしい。悔しさは大切だけど、それを他人に向けて嫉妬にならないようにしたいですね。ほんとに。そしてそれを何とかしようとする朔莉もかっこええ。

この一件もあるパルコ→朔莉でいこうかな

 

 

ー春心ー

この話を聞いて「じゃあ特別クラスやめたるわ!」ってできるエスト、かっこいい。自身の利益よりパッととれる尊い友情ってイイですよねえ。

 

パルコのトラウマとそれを支える家族と109の話でなんか大泣きしちゃった。画面の中の人物だけど、なんか初めて人を抱きしめたいと思った。ドラマとか映画でよく感極まったときに相手を抱きしめるシーンがあるけれど、そんな感じ。君はすごい、すごすぎる。君の助けになりたい、けれど君は私なんかより数段すごくって、もうすでにこれ以上ない程頑張ってて。だからもう私にできることはない。ただ傍にいることだけ。困ったときにいつか何かできることがあったときに備えて。だから今はただ抱きしめたい。そんな感じ。もうスバラ。

 

二人が同じ理由じゃなくても、同じ朝が怖いっていうのは天才か何かかな?パルコに話して見逃してもらったのを、救われたっていうのもいいなあ。もう好きジャン。

なんか好きになる流れはゲームチックじゃないというか、こんな環境、状況だったら普通に好きになるとは思うけど、ゲームとしてはパンチが弱いなあという感じ。まあでも……kawaii

 

わからんでもないけどあっさり、今年はもうええわ!ってなるの好きじゃねえ。

 

パルコの「服はわくわくするもの」ってアツい想い最高だ…お前が主人公であれ。というか全体見てもパルコが主人公か。才華がサブだから不完全燃焼感はんぱなかった。キャラは好きだけど流れは好きじゃないという感じのルート。ショーの描写すらほとんどないとは…衣装も白い才華に黒をあわせ、アクセントは目と同じ赤のリングといった普通な感じだし…まあ朔莉もこんな感じだろうな。分量は短めだけど、つり乙2に分量を求めていなかったのでちょうどよい。

 

ー朔莉ー

4ヒロインの中ではサブの二人のうちの1。さらに別学科。これは難しいだろうなあ。

・・・

卑怯だなあ。。。なんかテンポ速いし、これ捨てルートとして作られてるんじゃない?と思ってからの、朔莉はずっと才華の正体に気づいていて、陰ながら、エストが溺れた件も含めて支えてくれていた事実。思わず涙がこぼれた。女性として生活できるように朝早くから部屋の前で待っていた。あの化粧が乱れていた時の指摘も伏線だったのか…ずるい、ずるいなあ。岡山弁の朔莉、好き。私も大好き…え、ほんとに好き。

つり乙1と合わせて思うのは、ストーリー以上に愛せるキャラクターを作るのがうますぎる。現実離れしすぎていない、それでいて尊い

 

ールミネー

分岐前からオチが見えるぞお……願うのは山県のテクニック?がルミネよりは実は上だったということだけ。音楽について、全く違うベクトルをごちゃまぜに描くのだけは避けてほしい。エストみたいに違う手法でって感じかな?

 

このルート嫌いだなあ。押しつけなんだよな。山県という受け入れやすいものを迎合する。それを押し付ける。その軋轢を描きたいからルミネを意固地に描く。一方で才華は主人公だからまるでルミネのことだけを考えているように描く。嫌い。ピアノに限らずプロの世界ってそんなに甘いの?少なくともピアノ科の生徒がルミネの演奏を退屈だと切り捨てるのはどうなの。飽き飽きする。完璧な演奏はよくないっていう展開。守破離じゃないの?私が間違っているのだろうか、音楽には疎いし。でもパフォーマンスと芸術としての演奏と、ベクトル違うくない?ピアニストとして上手さ以上のものが必要というのは当然だろうけど、それは上手さが拮抗した上での話なのでは?なんで山県と家柄の話を混ぜてしまったんだ。いやわかるよ、妨害の矛先を作りたかったんだ。そして物語の展開を作るためには、どちらかを上げるか下げるかしないといけない。感動を作るためにルミネを、キャラを急に下げるなよと思った。いやどうなんだろう。もしかすると分量が少ないし、学科が違うかったからルミネを理解するのに時間が足りなかったのかもしれない。ライターさんの中ではルミネの人物像は私の理解より深く、違ったものだったのかもしれない。

(ていうか生まれ持ったものは金でもコネでも何でも使ったらいいのに)

(これほどまでストイックに努力できる人がこうも簡単に心折れるかね。もっと藻掻いてから折れそうな気もするけど。それこそ名を隠し、完璧な演奏をし、そのうえで山県に敗れる、とか。ルミネのこれまでの15年を、ピアノだけだともうちょっと短いかもしれないけど、その長い年月をちょっと蔑ろにしているように感じた)

(あとルミネが山県の前で取り乱すほど落ち込んでるのに、イップスに対しては気持ち軽くない?こんなもんなの?私がイップスライクになったときは、冷や汗出るし、ひきつった笑いで誤魔化すしかなかったけど……)

規則に反するが不正ではないってオチは流石。

 

エストー

梅宮いい人過ぎて笑う。

 

さすがに面白いな。双子は後出しと言われればそれまでだけど、隠す必要があったという理由ははっきりしているし、プレイヤーですら気づけない(双子、ゴーストライターとしっていたから気づけたとしても)ことに、服飾に命を賭す才華とジャス子だけが気づけたの、すげーイイ。しかも愛については才華と対照的に捧げられたい側っていうのもいい。本来なら才華と結ばれるのがぴったり。しかしって。エストの姉がまた純粋っていうのが憎い設定。エスト自身も好きだからこそ心から憎めない。さらにエストがこういう行為を取った根底が才華と同じ家族愛というのもまた美しい。だからこそ才華は、小倉朝陽はエストの夢を後押しする。そんな朝陽と共にデザインすることが、その夢を追い抜いた。そして同時に才華も家族以上に大切な存在ができた。完璧じゃん…

 

女のまま結ばれるのもいいよお……前回は男性恐怖症に対してだったからひいたけど、今回はイケル!いやよくないけど!なにがすごいって、前回の反省を生かし、男としても才華に惚れてる状態にしたことだよ、神ぃ……

緩急も凄い…ニコニコ→あなた誰なの?神だよ。。。梅宮の好感度をちゃんとこのルートであげて、それでも大蔵へのしこりはみせつけつつ、気づかせる。「でもこの子は太陽が苦手なの」この一言でどれだけ泣いたか。自信満々だった才華、プレイヤーだけはそれが虚勢と気づいていた。ようやくそれが虚勢であると本人が気づいた時には、もう彼の周りには誰もいない。でも、ただ一人エストだけはその主人として。地味にジャス子が才華の肌は動物の毛がだめって覚えてたのが、それでも才華考案のショーの準備を進めるのが神。立派なデザイナーになったなあ…

お爺ちゃんとおばあちゃんになるまでちゃんと謝ってという赦し。もうねえ、言葉もでないねえ。

 

ラスト、糸足りないのにどうするんだろうと思ってたら、髪を切った才華が現れて。。。大泣きした。。。

EDの入り方も神だったあああああ!!才華の神で縫われた刺繍。綺麗すぎて涙出る。

龍が如く8の感想

・総合して

ゲームとして神ゲーでした。ちょっとしたアクション要素のあるRPGをしたい人におすすめ。だからこそ過去作を知っていないと完全には楽しめないというのはちょっと残念。

 

・ストーリー

ストーリーは人それぞれで好みがあるのでわざわざ書く必要があるかはわかりませんが、さすがに0,7よりは劣るといった感じ。個人的に問題なのは桐生も主人公なので、1~6やってないと完全に楽しめないところですかね(私自身、あー誰だっけとなることが多々あった)。せっかく7で世代交代したのにまた桐生を主人公にするのは悪手かと……桐生大好きなので個人的には嬉しいですけど。。。でもやっぱり桐生なんだよなあ……

 

・バトル面

最高。はじめはほんの少しとっつきにくさを感じましたが、1,2時間もすればすぐ慣れます(ぶっ飛ばす方向がある程度固定されたりなどに気づいて)。アクションRPGとしてめちゃくちゃ楽しい。仲間と連携をするためのぶっ飛ばし、バックアタックといった空間的アクション性。倒れた後の追撃という速さを求めるアクション性。QTEのタイミング的アクション性。それらがあっても、あくまでRPGというバランスが最高でした。昔のアクションが好きな人のためにも、桐生の絆技がそれに準じますし。またテンポも非常にちょうどよく、速すぎてついていけなくなることも、遅すぎてイライラすることもありません(ぶっ飛ばしはなれるまで、調整するのにちょっとイライラしますが)。ちょっと気になるとすれば、バフや回復などで範囲を調整した後、キャラクターが動いてしまって、範囲がずれるとちょっとうざい。決定時のキャラに付与でもよかった。

また成長面を非常に調整されているように感じました。特別レベル上げをしなければならないといったところはほとんど存在せず、ランダムダンジョンをクリアすればストーリーを攻略する上で困ることはほとんどありません。昔のゲームと違って、現代は苦となるレベル上げは求められていないでしょうし、ありがたい。

もっとお金を落とすようにして(それこそ0のように極端に)、敵をもっと強くすれば武器の強化などの成長要素を遊びやすくて、楽しかったんじゃないかとも思います。

気になるのはまずダメージが見にくいところ。成長が感じられにくい。アクション要素があるので、フィールドを見なければならず、もっと総ダメージは見やすくて良かった。そしてなにより!花粉ばらまいてくる奴がうざすぎる。あいつだけは許せねえ。というかバフデバフが強すぎる。

 

・キャラ

7のキャラが全部出てきますが、ここまでする必要はあったのか。私は漢・山井を操作したかったよ……

あとKingu Gnuの井口さんはともかく、アサクラって人の演技が下手すぎる。辛いほどに。

 

・街中探索

サブストーリーを歩きながら読めるのは当然良い。そしてそれらがない時でも、□ボタンで街中の人にあいさつをして、人間力を習得していけるのは楽しい。ダレない探索。タクシーはもちろんセグウェイも便利ですし、言うことがない。

売店が限られていたり、装備がどこに売ってるか(特に防具)がわからなかったりはやっぱり残念というか、使いづらい。探索してるって感じはあるんですけど。

 

ミニゲーム

どれもおもしろかったです。合う合わないはもちろん個人にとってあるでしょうが、全部あわないなんてことはないでしょう。そのための豊富さ。惜しむのはドンドコ島の試遊で結構長い時間拘束されてしまったところ。正直これがあわなかったので、苦痛だった。

パルワールドの感想

終わりのないゲームなので、10時間前後くらい遊んだ感想になります…

 

確かに面白かった。ここが完全に真新しくて、革新的で、尖ってるんだ!っていうわけではなく、いろいろなゲームの良い点を組み合わせていった感じ。なので面白くない訳はない。そのため真新しさを重視する方には微妙かも?

ストーリー性は全くないに等しいのは長所だと思います。他ゲーのいいところを組み合わせてるだけあって、やることはたくさんあるので、ストーリーがうざったくならないのは良いかなと。

個人的に気になるのはどこまでこの熱が続くかですね。プロモーションはもちろんですが、発売時期もめちゃくちゃ考えられてるんじゃないでしょうか?OWの期待作だったtotkの熱が少し落ち着き出した今は最高のタイミングだったと思います。

ONE. の感想・考察 (ONE ~輝く季節へ~)

 

=全体の感想=

えいえんはあるよ。リメイク版ONE ~輝く季節へ~。オリジナルは絵柄的に敬遠してたのでラッキー。

もとの開発は一緒だから当然なんですが、keyやってみるみたいでいい。樋上絵もオリジナルと比べるとかなり見やすい。全然詳しくなくて、たまに聞く程度のにわかなんですけど、OPのfhanaさんの声めっちゃ好きで、そこから超テンション上がってしまった。

Live2Dはいるかなあ…

 

全体としては十分嚙み砕いたら、ゲームとして出来がいいとは思います。というかすごい考えられてるので、考察を自分でしてみないとダメ。それが現代の需要にどれくらいあっているかと言われれば…

 

システム面:Autoしながらページ捲りができない点、マウス下スクロールが対応していない点の2点はクソ。最近のゲームとは思えない。configからゲーム内時刻が確認できるのは好き。nextchoiceで日付変更挟まると止まるってクソか?テストプレイしてるんか?あと選択肢スキップが反応しないときがあって、微妙にイライラする。選択肢補助があったのはよかった。これがないと面倒すぎる分岐。どうでもいいけどSAVE/LOADとQSAVE/QLOADの矢印の方向が違うのはなぜ?

ストーリー面:せっかく非R18にしたのに、スクリプトが全く変わっておらず、その割に〇〇〇で隠したり何がしたいかよくわからなかった。改変を加えないという契約だったのか?内容としては伝説の泣きゲーと銘打ってリメイクされた割にはという感じかな。悪くないけどよくもない。まあ比較対象がサマポケになるから仕方がない。金も人もかかっている量が違うし。当時だから凄い、先駆けだから凄い、のであって今の娯楽に、ADVに溢れた時代のものと比べると流石に手放しに誉めることはできないので、そこはわかったうえでやる必要があるかと思います(ただ後でも書いてますが茜ルートだけは傑出)。なんでわざわざリメイクしたんでしょうね。

 

好きな順は

瑞佳<<<<<シュン<<留美<<繭≦澪<みさき<<<<<<……<<<<<<茜

プレイおすすめ順はなんでもいいと思いますが、パッケージだからと瑞佳最後にしないほうがいいかも。というか瑞佳しなくていいんじゃない?…茜は驚きたいなら最初、伏線噛みしめたいなら最後。

茜ルートは傑出していると思います。ノベルゲームというよりは丁寧な小説。描写の一つ一つが間接的に、丁寧に、それでいて美しく描かれていて、これだけはやってほしい。正直茜ルートだけでお気に入りに入ってしまう。できる限り各ルートだらだら感想で茜ルートの良さは列挙したつもり……

 

繭、澪、みさきと半数が障害を抱えたヒロインたち。一風変わっていますが、おそらくその必然性はなく、シナリオはキャラ設定の後から作られたものでしょう(話題性のため?)。これをよしと取るか(障害にドラマ性は伴わないから)、悪しと取るか(食い物にしてるから)はプレイヤー次第でしょう。私は後者より、完全ではないけど。時代ですね。現代だと許されなさそう。

 

=だらだらと=

ー共通ー

ひとまず長森は最後にするとして、どういう攻略順がいいかな?keyであることを考えると、分岐はめんどくさそうなんだよな、そこが好きなんだけど。と思いきや、選択肢ごとに好感度あがる人を書いてくれてるのか?漢字テストのところなんかはありがたい。

なんだかんだ分岐は茜に行きそう。1周目の選択肢は自分ならどうするかで決めてるんだ…でも急に出てきた川名気になる。オリジナル版で目が死んでる人がいるな、ヤンデレか?と思ってたけど、目が見えないのか。非常に申し訳ないことを考えていた。それにしてもどうやって一人で立ち入り禁止の屋上まで来てるんだ?

人気投票に一喜一憂する七瀬かわいい。やっぱギャップこそ萌えの本質だな。

喋れない少女澪。一人一つずつ何かしらあるってこと?気づいてないだけで。

 

ー七瀬留美

茜のつもりだったんだけどな。長森との関係がありそうだから最後らへんにしようと思ったんだけど。

しかもなんかいきなり胸糞悪いんだけど!むっきーーー。それにしても、めちゃくちゃ乙女な七瀬、かわいいなあ。浩平の好きな音楽を知りたいっていう普通の女の子っぽいかわいさが最高ですね。

さすがにクリスマスににんにくラーメンに行先黙って誘うのは…それほどまでに男友達として思ってたってことだけど、あまりにもデリカシーが欠如してて笑ってしまった。なにがって浩平の切り替え早すぎて笑う。何がこいつの王子様、じゃい笑

七瀬が乙女チックな理由付け、ちゃんとされててよかった。一方いじめの話が霧散してしまったのはちょっと理解できなかった。

病にかかったみさおと、宗教にはまった母の話は共通なのかな、それとも七瀬ルート特有の回想?

妹を亡くした悲しみから永遠を一人の少女と約束する。当時は悲しみを忘れるための唯一の手段だったけれど、もっと大切なものを見つけた今となっては、自分をこの世界から消す避けたい盟約。それを回避するためには人との、ヒロインとのつながりが必要で…という感じか?なにがあったのか全く分からない…え?一年待ってたんだよね。何があったの…

ところで急に長森から瑞佳呼びになったのはなんでだろう。

 

ー氷上シュンー

えー、新キャラ出たー。男だし、メインじゃないから先にやってしまおう。なぜか七瀬と同じ選択肢で分岐するっぽいし。これヒント機能なかったら全然わからなかったし、たぶん投げてた。ここまできたら茜は最後らへんに回そうかな。じゃあ残りは澪→みさき→茜→瑞佳かな。

七瀬からの分岐だという事実と合わせて、絆を作らなかった世界線ってことかな。ということは七瀬クリアが解放条件か。浩平と同じように氷上も大切な人を失って、永遠を求めていた?わけわかんねー。全部濁すやん。永遠が死を意味するのかとも思ったけど…永遠を誓った人は、死後違う世界へと旅立つからこそ永遠?

 

椎名繭

氷上と七瀬が不完全燃焼過ぎてほんとに選択肢あってるか調べたけどあってるらしい。さらに繭というヒロインがいるらしく、茜は最後にしたほうがいいぽいので、繭→澪→みさき→瑞佳→茜にする。椎名繭…まゆしぃ?

でもなんか長森とペアになってそうだなあ…

3人が別々に大量のハンバーガーを買ってくるシーンめっちゃいい、しかも二回も。

忘れられる描写いいね、七瀬ルートではあんまりなかったし、長森が覚えてるっていうのが際立つ。

終わりだ…って言ってEDに向かうのはkey作品らしさもあって、というか麻枝氏らしさがあって、さすが見せ方がうまいという感じ。成長した成長したって言うけれど、一番の成長は悲しいことがあったときに母に向かって涙を流せたって言う表現が大好き。最後に流した涙は、お母さんの膝の上で最初に流した涙だった。

 

え、お前何歳なの?小1くらいと思ってたんだけど…卒業ってあるし、キス(一方的に)してるし…中3?制服が小さい描写があるから高3ってことはないしなあ…でも成長期の時期の性差を考えれば小6か?逆に小さすぎて気づかれないってのがないことを考えると中3か。

 

ー上月澪ー

実は昔に会って系ヒロイン。属性いっぱいあるね^^

残りの時間を22日の段階で使っているのは、結構前から自覚があったってことでいいのかな。不思議。

繭ルートでもそうだったけど、最期の日、最初の舞台っていう対称性はいいなあ。ライター違うらしいけど。

言葉なんて必要ない。なんで澪が離せない設定かって、ただこれをやりたかったんだなあ。ちょっと泣いた。大切なのは非言語的なものだと思うし。ちなみに離せない原因はありません。

 

ー川名みさきー

クリスマスに見えないだろうということに笑う、目の見えないみさき。イイネ。

お前年賀状出してないんか!と思ってたけどそういうことじゃなかった…ごめん…

面と向かって長森に忘れられるのつらす。

好きだからこそ一緒にいられないというみさきに対し、それをねじ伏せるほどの愛を伝える。最後には絶対側にいるから。このルートは他ルート以上に絆、というよりも戻ってくるのが明確だ。一度は死のうと考えたみさきだからこそ、この世に留まる絆だと感じられた。

一方でこのルート、安易にずっと一緒にいるって約束したのが好きじゃないかも。いや安易じゃないんだろうけど、もちょっと葛藤欲しかった。まあでも、みさきだけは覚えていてくれた卒業式のシーン、泣くよね。

 

ー長森瑞佳ー

尊い幼馴染。この人の声好きだな。高い声が苦手だからかな。というか〇〇だよ!と○○だもん!のぶりっこ口調が好きなのかも。

冗談で告白なんてするもんじゃねえよ、浩平。ほんとのとこ。そういう自分の気持ちも相手の気持ちも大事にしないのは好きじゃねえよ。ぶっ飛びキャラ多いのは理解してるつもりだったけど、これは駄目だよ。ぶっ飛びじゃなくてただの屑。まあ浩平からすると「まさか」って感じなんだろうなあ。恋愛のれの字も出したことがないのにって感じ。

まあ百歩譲って嘘告白を許したとして、もう付き合っちゃえばいいじゃん。なんで繋いだ手を振りほどいたりするん・・・まあ浩平からすると今の関係が壊れるのが怖いという潜在意識があるんだろうな。高校生だしな。

まあ千歩譲ってそういう酷い態度を許したとしても、クリスマス、お前が約束しといてそれはねえよ…しかも相手を傷つけるために嘘を重ねて。こんなんでプレイヤーが感情移入できるとでも思ってんのか?まじで理解できねえ。それでも瑞佳なら浩平の良さをわかってるよ~~~ってこと!?倫理的な一線を軽々しく飛び越えておいて!?

何がひどいって、この酷い前半部分と後半部分がまったく相関性がないところ。いやー何も言えない。たぶん帰ってきたときに告白して再開って風にしたかったんだろうけど、無理くり過ぎない?私がそう思うだけ?いやーちょっと…まじで最後にしなくてよかった。一応擁護は考察の3で記述。

 

ー里村茜ー

目がエメラルドで綺麗。

どう考えてもかわいいくまさんのぬいぐるみを、懐柔、異様な物体、凶悪な眼光と表現するのはどうなんだ。。。いやリメイク版だから絵の方がおかしいんだけど、ひどいなあ。

時代が違うのでわからないんですけど、98年時の高校って、こんな不審者入ってても許されてたの?附属池田の事件前だからありえなくもないけど、時代だなあ、ほんと。。。

茜ルートを最後にしてるからか、なんとなく真実がわかる。驚きの面ではよくないかもしれないけど、細かな伏線に気づけた点ではよし。茜の幼馴染と浩平を重ねるし、茜も好きとかいうからジェラシー感じちゃった。うまい。ライターが違ってるから違ってて当然だけど、好きって気づき方も自然な感じでいいよね。

実は茜が登校してこなかったとき、雨の中迷わず探しに行くシーン好き。普通なら行かない。けど一つには好きだから。もう一つには好きな茜が好きという想いを信じられるから確信があるっていう、当たってしまえば即失恋になるような確信が好き。これは酷く好み。惨めと自分のことを言っていることからも、浩平自身自覚している風にして、なお好き。事情を知らない浩平は茜に、振られたんだ、お前は、という。同時に浩平もまた振られているのだ。まるで自分に言い聞かすかのようなセリフ。ニーチェかな!?そのあとちゃんとデートに誘って想いを伝えるのもかっこいいよ、瑞佳ルートとは大違いだよ、浩平(もしかしたら浩平が長森と俺と同じだって言ってるし、完全な恋心ではなかったのかもしれぬ)。

雨だからこそ来ない人が来てくれる。なんておしゃれな結ばれた表現なんだ。どうなんでしょう。私は茜が浩平を好きになる前に、大好きな人がいた事実が狂おしいほど愛おしい。それほどまでに愛していた彼以上に、自分のことを愛してくれるなんてと。この日、傘を忘れてまで立っていた茜になにがあったんだろうか。

そしてやはり気になるのはこのあと、茜は浩平のことを覚えていてくれるのだろうかということ。前の彼のことはあんなにも覚えていたのに!みたいな。またもやジェラシー。ここであえて「あなたのことを全部忘れる」って言わせるのが憎い。忘れるって言っても、きっと忘れることはできない。それでも、浩平に責任を負わせないために。それは忘れなかった彼よりも好きな人のことなんだから当然。あーいい。最高。忘れようとしても忘れられないほどの愛をここまで美しく伝えられるのか。この「忘れる」という宣言で、前の彼よりも好きでいてくれたということがようやくわかるのか。

二人で最後のデートにでかけて、ワッフルを交換するシーン。最初の自販機でまずい飲み物をなんとか飲ませるシーンのリフレインになっててめちゃすこ。

言わずもがな、最後の誕プレが目覚めを表す目覚まし時計ってのも粋。

帰って来方もおしゃれかよ。なんだよ詩子の一言で判明するって。

あー一番泣いた。美しい物語はそれだけで涙が出るんだよ。

 

=考察=

1.表面的に読み取れること

氷上の話から察するに、死は永遠である。永遠の盟約を交わしたものは、次の世界へと旅立てるがゆえに死は永遠である。死という約束された現象を回避するには、その世界の人物と絆を深める必要がある。氷上ルートの場合、絆を深めた相手も永遠の盟約を交わした人物で、先に死んでしまったから、おそらく浩平ももうすぐ死に、次の世界へと旅立つ(そこに氷上がいる可能性もある)。そしてそれのみならず、一方的に思われてるだけでなく、こちらからも想っていなければならない(茜ルート、茜幼馴染が帰ってきていないことからわかる、「絆」なんだから当然ですね)。とここまではよさそう。クラナドあたりまでに顕著にみられていた概念的世界が色濃く表れているように感じる(リトバスくらいからはそれがだんだんと物理的に意味がある世界に対等しているように感じる、実際に麻枝氏が脚本を書かなくなったっていうのもあるんだろうけど)。たぶん麻枝氏的にはONEでももっと理解されると思ってたけど、思って退場に理解されなくて、TRUEでより詳しく描写するスタイルをとったものの、それでもはっきりと理解されず、物理的意味を孕む世界へと変貌し、世代交代に差し掛かったって感じかな。でもさすがに、いなかった期間の話、まったくしないのは…今時だと帰ってきたときの言葉を全ヒロイン共通にしてTRUEで永遠の世界での話と妹の話をして、主人公目線の台詞でENDとかになるのかな。

 

2.永遠性について

ではなぜ大切なものの死がきっかけとなるのか。そんなもんしらんし、特に理由はないと思う。本気で永遠が欲しいと願った酔狂なものへの、神様からのプレゼントでも思っておきましょう。神様との契約「永遠を手に入れること」。契約を交わしたものは、何らかの形で永遠を生きる必要があります。ここで一つ言えるのは永遠性というものは物理的には存在しないため、永遠を達成するためにはどこか概念的な場所で達成するしかなく、その一つが永遠の世界であるということだけが重要なのでしょう(エネルギーなどは永遠に保存するかもしれませんが汗)。その一つということは、おそらく、他にも永遠はある。私の中での一つは誰か一人の心中で残っていることです。茜の台詞「私の中から、溶けるように消えていくあの人との思い出を繰り返し思い出して…」「誰よりも同じ時間を生きて…」それは永遠を生きていると言えないでしょうか。皆が忘れる中、薄れゆく中、それでもあの人のことを思い続けている。もう決して、何が起ころうと忘れることなんてない。それはきっと永遠でしょう。実際、本作は永遠の世界を据えていると思いますが、アンチテーゼ的に元の世界の、ヒロインの中で永遠を生きる。そして浩平や茜の幼馴染は2つの永遠、永遠世界とヒロインの想いを得たわけで、そこからは浩選択するだけ。茜の幼馴染は永遠の世界というぬるま湯のような場所を選び、浩平は辛いことだらけだけど彼女(たち)がいる現実を選んだにすぎません。企画者たちがそこまで考えていたとは思いませんが、ある意味で神に対する挑戦だと思います。

 

3.きっかけ

きっかけは瑞佳との関係が発端でしょう。明らかに。思春期になり、淡い恋心が瑞佳に芽生え、妹の代替となっていた、永遠と思しき二人の関係が変わり始めようとする。永遠がなければ、神との契約は果たされない。では神は永遠の世界へと連れて行こうとするのは道理です。それを本能的に(?)知っていたからこそ、浩平は瑞佳ルートであれほど露骨に瑞佳を拒否するわけです。まあ拒否しようと、拒否しなかろうと、瑞佳ルートだろうが、そうでなかろうが、瑞佳の気持ち自体はどうしようもないので、一度永遠の世界へ行ってしまうわけですが。

 

4.メタ的な視点

メタ的に言えば、このゲームの世界というのは永遠です。繰り返しNewGameを選べば永遠に世界は繰り返されます。そういったゲームの世界を傍観できる場所、すなわち現実(に近い)世界が永遠世界です(もちろん我々の現実も永遠ではないので、完全に現実ではありませんが)。ただし物語はエンディングを迎え、電源を切ってしまえば、綺麗に終わりを告げるもの。その終わりを告げた先こそが永遠の世界から抜け出した先なのだと思います。その点でいえば、どこかのルートをクリアするごとに、プツンと電源をきってしまうべきなのでしょうが。個人的にメタゲームとされているもの以外のメタ的視点はゲームを汚すだけなので好きじゃないです。なのでこれはあくまで可能性として。

 

5.永遠の世界の少女について

これが最後。とはいえこれはわからないです。自分の中の存在とするには、強大な力を持ちすぎていて、自己とは言えない。自己の中に閉じこもり、世界との関係を断ち切って寝たきりになるとかだったらまだしも、物理的に存在消えてますしね。ですので上述では神と表現しました。あくまで浩平が生み出したとは言えませんね。他の事例もたくさんあるわけですし。強いて言うなら信仰心が生み出したお化け?

 

えいえんはあるよという少女の言葉から始まり、確かに最後意趣を返した永遠を獲得して物語を終える。個別各ルートは茜以外は手放しには喜べないですが、全体としてはめっちゃ深かったと思います。まあファンがかってに考察してるだけと言われたら厄介オタクでおしまいなんですが。

 

6.タイトルについて

リメイク前のタイトルはこれ以上ないほどわかりやすい意図。ただリメイク版のタイトルの意味が何を表しているのかが問題でしょう。わざわざ輝く季節というものを抜いて、.を加えたのか。個人的には文章の終わりを意味するピリオドですから、ゲームという永遠の終わりを意味しているのかなあと…それだとメタ的要素が入ってくるので嫌なんだよなあ……とにかく終わりを意味しているんだとは思います……それも永遠に関するなにかの。真剣に考えて改題したのなら、輝く季節という永遠を乗り越えた未来と対応しているわけなので、永遠そのものの終わりでしょうか。

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

7.蛇足

果たして最後に浩平が永遠を獲得したかと聞かれれば、胸を張って言い切れないのがちょっと……明らかに永遠世界の描写が足りてませんしね、正直答えはないと思うんですが……永遠から脱したとも言えてしまうのが何とも残念。個人的には意趣返しの終わり方が綺麗と思うので、永遠の(愛の)獲得と上では言い切っています。とはいえ6で見たように、永遠が終わっているというのも十分言えますね。これは神のみぞ(作者のみぞ)知るといったところでしょうか。

妹と彼女〜それぞれの選択〜の感想・考察

 

=全体の感想=

どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!     を彷彿させるお兄ちゃん。

なんかよくわからんけど休みテンションで買ってしまった。WA2、離脱症状用。

まったく同じ顔という設定がいい。顔が好きなのか、妹の性格が好きなのか。

 

値段だけあって結構長め、しかも途中結構ダレるし、文はクドイ。

家族という代替不可能性を押し付ける役職、特に血のつながりがある場合で、それがもし代替可能だったら…そんな問いを考えるうえでやって良かった。そういったことに興味がないならそんなにですかね。
自分という存在が乗っ取られる恐怖というものもあるんですが、それを見るには同じシーンばかりでやっぱりクドい。

陽香編が慧編に追いついてからは好み。死生観というか、命より誇りというものは大切になりうるかという好きなテーマ。ここについては後で詳しく。個人的にはこの描写だけで一読の価値があったと思う。

というか物語の核心に触れるので書いていないけど、面白い部分は考察部分に書いてあるので気になる人は見てほしい。

小説はともかく、ノベルゲームとして同じ状況を繰り返すっていうのはあっているんだろうか?要所要所は面白いのに、商業用、値段にふさわしいボリュームというのに引っ張られたのかなあ。残念。

 

=だらだら=

ー慧編ー

まず良かった点ですが、入れ替わることで愛の向かう方向がややこしい点。入れ替わった妹を愛すれば、その愛は満月に行くが、妹という存在を愛されている幸福は存在する。逆も然り。非常にドギマギして良かった。そしてどれだけ似ていようが、妹という人間性に惹かれていく様もよかった。見た目だけじゃないんだっていうのが。けれど!妹が好きだから世間に認められなくてはという葛藤のため、妹を愛しているという固定観念があってという苦しみ。

次に満月がどんどん”妹”に近づいてる、奪っていく恐怖。

最後、最愛の妹と結ばれる答えなんてものはこの世には存在しないという悲しい事実。陽香のキスシーンなんて最高やで~。にやにやが止まらなかった。正直、人ではなく役割で人を見ていた慧が悪いとしか思えなかったから、そんな辛くなかった。慧だけが完全に悪いわけじゃないんだけどね。

 

不満点は、慧が目の色の違いを気づいていながら、なぜか入れ替わりに一向に気づかないところ。ゲームとしてできるっていうので目の色の違いを導入したんだろうけど、気づかないほど似てるっていう設定にするなら、目の色まで一緒にしてほしかった。そのトリックは定位置が左右入れ替わっている、コーヒーに砂糖をいれないっていうのでよかった。親すらも気づかないっていうのはもう奇跡的な相似なはずなので、目の色まで一緒でも構わなかった。くどい位にそんな描写をいれるてるので余計に。
一方で素晴らしいのはちょっとした「いつもと違うんじゃない?」っていう指摘を察知して、雰囲気に合わせる満月の敏感さの表現。

あとはお風呂を覗いてしまうっていうシーンもあったが、身体の傷に気が付かなかったり。それでさすがに気づかないような描写も増え、結果的には気づいてたんですが、主観的にそれを気づかせないっていうのもどうなんでしょうか。

あとはBGMループが不自然なのも残念。

あと単純に必要でない部分が多い。

 

ー陽香編ー

妹側の入れ替わるという決心がよかった。普通なら考えられない決心だからこそ、それを結構すんなりとしてしまうのは違和感がありながらも、余計説得感も出る。

ちゃんとお金周りについて言及してたのもありがたい。

不満点は、どうして兄に相談しなかったのかという点。冷戦中であり、かつて告白を黙殺されたという過去があったとしても、想いが通じ合っているという確信やがあるのなら、もしくはなくても、そもそも通じ合っていなければ意味がない入れ替わりなのだから、先に相談して、鼻から結婚までできる状態で入れ替われば何の問題もなかったのに。社会的妹という役割でなく、遺伝的妹という役割がネックになっていると考えたのだろうか?

あとは当然、他視点で同じ話を見ているので、少々、いやかなり飽きる。結構飛ばしながら見た。

 

私はここでリタイアだった。満月同棲編が真新しい内容含んでるとわかってても、読む気にならなかった。

 

ー考察ー

慧編に時系列が追いつき、視点が慧に戻ってからは面白かった、というか当初期待していた死へと物語が向かい始めて、ようやく本筋に入ったかという感じ。結局兄としての、妹としての矜持に拘っていながら、それを自ら汚してしまい、生よりも大切なそれを失った二人は死ぬしかないという、プライドの物語。最近では珍しい?誇り>命というのは。

最近のよく巷で言われる誇りっていうのは、一度捨てても生きていれば取り戻せるんだ、だから生きなくてはならないっていうのが多いと思う。世論的に。しかし妹という誇りについては生来的なものであるから、取り戻すことは不可能、一度捨ててしまえば不可逆的である。そうせねば陽香が死んでしまうのなら、慧は妹を生かすために、”妹”を殺さねばならない。

結局のところ、陽香のアイデンティティというものは「兄をこの世で最も愛する妹」というのが核だった。一方で慧は「妹をこの世で最も愛する兄」。しかしながらその愛を叶えるために、慧はこの世の倫理やしがらみというものが問題だと思い(こみ)、つまり愛するという部分が問題になっていると思い、一方で陽香は兄妹であることが問題だと思ってしまった。全く同じ悩みを思っていながら、全く別の正反対の部分を取り除こうとしてしまった。相反となっている、集合をそれぞれ取り除いてしまえば、そこには何も残らない。この世で最も欲した、唯一欲したものは決してもう叶うことはない。これ以上の愛を見つけることもできないという業。だとするなら、もう二人は死ぬ他ないのである。しかしながら、死という恐怖に人はあらがえない。特に現代なら兄妹心中のように、物理的に死ななくともよい。だから二人は満月という人物も殺すことにした。しかし他人を犠牲にした幸せなど報われるわけもなく、結局は二人は死んでしまう。

作中、慧はもしかしたらもっといい未来がなんて言ってるけど、そんなものはない。あってたまるか。

【厳選】WHITE ALBUM2 好きなセリフ集【個人的保存版】

  • =introductry chapter=
    • 「でも、だからこそ…ムカついたって、いいよね? 意味もなく嫌になったって、いいよね?」「いいコだからこそ苦手。とことん苦手。きっと、死ぬまで同じ価値観を持てないと思う」「不倶戴天の敵になるか、………生涯の大親友になるかのどっちかだと思う」
    • 「今から…あたしの家に来い」
    • 「あたしが弾けるようにしてやる。…お前の言う、カッコいい男にしてやるから」
    • 「傷ついて、傷つけられて…」
    • 「お祭りの後も、ずっと騒いでいたい。三人でいたい。お祭り前の日常に戻るのは、もう嫌。だけど、仲間外れは、もっと嫌、なの」
    • 「雪菜でなきゃやだな」
    • 「なんで側にいないんだよ…」
    • 俺…初めて会った時から、ずっとお前のことが好きだったよ。
    • 「違う、雪菜。…”かずさ”だ」
    • 「絶対寝ないって。…間違えそうになるから」
    • 「そんなのはなぁ………っ、親友の彼氏に言われる台詞じゃないんだよ!」
    • 「あたしの前から先に消えたのはお前だろ!? 勝手に手の届かないとこに行ったのはお前だろ!」「手が届かないくせに、ずっと近くにいろなんて、そんな拷問を思いついたのもお前だろ!」「あんな…毎日、毎日、目の前で、心抉られて…それが全部あたしのせいなのかよ…酷いよ…っ」
    • 「そんな女のこと何も知らない奴が、あたしの想いを勝手に否定するな! あたしがつまらない男を好きになって何が悪い!」
    • 雪菜に対して誠実でいるために、俺に対して誠実でいられなかったじゃないか
    • 「なんでそんなに慣れてんだよっ!」
    • 「なぁ北原……あたし、お前のことが大好きだったよ?」
    • 「男を好きになる辛さを、教えてしまったのがいけないんだ」
    • 「ただ、予想できなかったことと言えば、二人が…悲しいくらいに真剣だったってことかな」
    • 「うん…わたしも絶対に嫌。よかった、そこだけは譲れなかったんだ。…ありがとうね、春希くん」
    • ほら見ろ…俺が振り向いた途端、あいつはやっぱり目をそらしたじゃないか。見つけるんだよ…あいつは、簡単に俺を見つけるんだ。けれどそのことを、俺に気取られるのが嫌だから、絶対に、すぐに目をそらして知らんぷり…
    • かずさは、自分にも他人にも、ずっと嘘をついていた。『ギター君』の正体なんて、実は初めから知っていた。その音色の拙さも真面目さも融通の利かなさも、間違いなく彼のものだとわかっていた。
    • それどころか、そんな相手は一人しかあり得ない。消去法だけでなく、選択式でも…~もう、認めるしかなかった。今の上総には、目の前の、決して自分を孤独にはしてくれない、このおせっかいな委員長がどうしても必要なんだということを。
    • 「しょうがないだろ? …あたしはお前と違って我慢強くないんだよ」
  • =closing chapter=
    • ー共通ー
      • 「相手のことを心の底から同情してもいいのは、相手の事情を本気で解決しようと頑張っちゃう人だけだよ」
      • だってわたし、あなたたちが仲違いしたのが、嬉しい。わたしのために春希くんが道を踏み外したのが、嬉しい。~春希くんが、暴力を振るった。あのひとだったら絶対にするはずのないことをしてでかした。…わたしのせいで。
      • ほんと、なんて自己中なんだろう、わたし…これじゃ、あなたと変わらないね、かずさ…全ての人の幸せを願うのは。周りの人の幸せを願うのは。…三人の幸せを願うのは。
      • 「なんであんな悲しそうで、あんな嬉しそうな顔してたんだろ、あいつ…」
      • 「そんな風に、逃避で仕事や勉強頑張ったって、結局その結果は質の差として現れるんだからな?」「仕事に本気にならないと、仕事は本気で応えてくれないんだからな?」
      • 「あなたの言ってることはとても酷いのに、差し伸べられてる手は、なんでこんなに優しいの?」
    • ー千晶ー
      • 「変わるよ。春希が何もしなくても、時間が何かを変えることもある」
      • 「人を傷つけたことは、すぐに忘れてしまうけど、人に傷つけられたことは、簡単には忘れられない。そんな当たり前のことを…忘れてたんだ」
      • 「あんまり、お前の近くにいる奴に騙されてるんじゃない。そいつは…最低の女だ」
      • 「でも、今は一進一退だけど…もしかしたら、今度こそは前に進めるかも」
      • 「だって、その意味を考えたこともないし、じっと想い続けようって、努力したこともないんだから。…ただの結果論だよ」
      • 「あいつが雪菜ちゃんの味方でい続けてくれるなら、俺は心おきなくお前をかばえるな」
      • 「わたしの好きなひとは、嘘が嫌いなの」「だからわたしも嘘は嫌いになった。たとえそれが、大好きな彼がついたものでも、ね」
      • 「…私を振り回して、お前楽しいか?」
      • 「ごめんね…突然押しかけちゃって」
      • 「…それこそが相手にとって一番の罰だって、まだ、気づいてないから、かな?」
      • 「あいつのこと、これからもずっと女として扱えるのって、世界一ころっと騙された、俺くらいかなぁって」「天才で、冷酷で、無慈悲で、倫理感なくて、女どころか人としてかなりヤバい奴なのは間違いないけど、それでも馬鹿で、俺にとってはいい奴で、大切な恩人だ」
      • こいつ、きっと全然気づいてないよな。…今日が2月14日だなんてこと。
      • 「…逃げてばかりじゃ、おびえてばかりじゃ、何も得られないと思うんだけどなぁ」「それは、一度も失ったことのない奴の台詞だ。…いや、一度も失ったことに気づいたことのない、かな」
      • 本当に、馬鹿で天才だ…この馬鹿は。「わたし、和希くんのこと、本当に、本当に愛してる!これだけは真実だって、約束する…」
      • だから俺は…そんな雪菜の信頼を裏切っちゃいけない。「二人きりで会うの…これで最後にしよう」雪菜を…裏切らなくちゃならない。「騙されたけど、傷つけられたけど、酷い女だったけど…それでもあいつと過ごした瞬間は辛くなかったんだ。ずっと続いて欲しい時間だって思ったんだ」
      • 「いつかわたしは、新しく出会う人にこの気持ちをぶつけるのかもしれない。それとも、ずっと引きずるのかもしれない」「けれど今は…わたしとかずさから、やっと卒業しようとしてるあなたを、幸せにしてあげなくちゃいけないって、思ったんだ」「それがわたしの、最後の意地だから。プライドだから」「わたしは…彼女を恨んでるよ?あなたを憎んでるよ?」「だから…これは返さない」
    • ー小春ー
      • 「もしもそんな馬鹿げた迷惑行為を、信念とかいう免罪符のもとに人の迷惑顧みず強硬してる馬鹿なコがいたとしたら…」「それはですね…きっと、もう一度あんな顔して欲しくて、そして、もうあんな顔してもらいたくないからです」
      • 「一人くらい味方がいてあげないと…国選弁護人より頼りないかもしれないけど」
      • 「わたしの願い事は…『北原春希って人が元気を取り戻すように』だったから」「自分のことですよ? わたしが今、一番求めてるものです」
      • 「このまま自然消滅してしまうつもりはないよ。それだと、あまりにも雪菜に対して不誠実だ」
      • 「なら先輩はわたしが悪いって言うんですか!」「…なに言ってんだ。君には関係ないだろ」「じゃどうすれば関係あることになりますか!?」
      • 「だから嫌わないで…っ、………くれるとありがたいなって、その」
      • 「悲しいよ…悔しいよ…なんで、そんなこと言うの」
      • 「だから、いいこいいこって…してください」
      • 「それってなぁ…今まで積み上げてきた思い出が、たった一月で全部なかったことになっちまうってことだぞ?」
      • 「やっぱり、小木曽先輩のこと…」「それはずっと抱えてる。今までも、そして今からも」「っ…」
      • 「人には、いくつもの…別々の人に対しての、それぞれの誠実があるって」
      • 「これで14日一番乗りですよね? わたし」
      • 「そうやって否定しようとする人間も、真面目に聞こうとする人間もいないなら、伝わった噂だけが真実だよ」
      • 「時々腹が立ったけど、たまに放っておこうと思うこともあったけど、それでも好きだった! 嫌いになんかなれなかった!」
      • 「だからわたしは、ほんの少しでも後悔の少ない方を…悲しませる人が『比較的』少ない選択肢を選んだだけです」
      • 『でもね…あなたが大嫌いなわたしは、今でもあなたのことが大好きです』
      • 「忘れるなよ? いい思い出なんかにするなよ? …全部人に押し付けるなよ?」
      • 「そこまで頑張って…何もかも敵に回してあなたが手に入れたものは、それだけの価値があるんだって信じていいと思うよ」
      • 「ねぇ春希くん」「うん」「今…あなたが一番守ってあげたいのは、誰?」「それは…それは…俺のせいで、一度潰れてしまったのに、またまっすぐ、一生懸命に伸びてきた………」「うん…」「杉浦小春って、後輩の女の子、だよ」「もうつぶさせない。もう、辛い目になんか遭わせない。…俺が、なんとかしてみせる」「やっと、言えたね」
      • 「あなたは、治せる人を直してあげてね。わたしの傷はもう…あなたには専門外だから」「そう…あなただけには、もう癒すことができないんだから」
      • 「ほら、送信しちゃった。これであなたが春希くんのところに行かないと、全部わたしのせいってことになるね?」
      • 「雪菜でも、小春でも…どっちを選んでも、後悔する」「だったら俺は、ほんの少しでも後悔の少ない方を…今の俺が、一番好きな女の子を選ぶしかないだろ」
    • ー麻理ー
      • 1.コンサートに行く2.ここに残る
      • 「この国に、あたしの居場所はないんだよ、もう」
      • 「じゃあ、騙さないように、事実の方を合わせちゃえばいいんじゃない?」
      • 「っ! そういう投げやりな態度がおかしいって言ってるんだ! いい加減自分の今の状態に気づけ!」
      • 「私にとってはとてつもなく難解なミステリーだ。…年下の男(おまえ)の気持ちなんて」
      • 「駄目だって…今のお前は、一人になっちゃいけないんだって」
      • 「それに、私たちはセックスしなかった。北原が、私の頼みを聞いて我慢してくれたからだ。…だから、レイプなんかされてないよ、私は」
      • 「私は、仕事に逃げる奴が許せない。楽しめるくせに楽しまない奴が我慢できない」
      • 「雪菜と二人だと、前に進めない。相手が後ろを振り返っているんじゃないかって気になって、気が付いたら自分が後ろを振り返ってる」
      • 「知るかよそんなこと。それを考えて苦しむのも償いの一つだろ」「苦しんで、のたうち回って…それで出した結論なら、俺はもう文句言わない。依緒にも言わせない」
      • 「もう、そんな心境には戻れそうにない。怖くて怖くて、二度と男なんか好きになれないよ…」
      • だって雪菜は…大切な女性だから。どれだけすれ違っても。どれだけ互いが傷ついても。たとえ俺に、『誰よりも好きな人』が現れたとしても。
      • 「…何言ってるんだ。汚れてなんかいないぞ?」「ちゃんと掃除したんだ。一生懸命磨いたんだ。あいつが」「嫌だ、認めない!」「ここだけは、私は絶対に認めない! ちゃんと綺麗になってるじゃないか!」
      • エスバージニア航空302便。日本時間13時成田空港発予定。「お前は、いちいち細かく指示しないと動けないような奴じゃないよな? …そんなふうに育てた覚えはないからな?」「締め切りまで…あと半日」
      • 「厳しくて、容赦なくて、自信家なところが、冬馬に似てると思ってた」「でも…思い出だけで人を好きになったりしない。逃避だけで相手を想うことなんかないんだよ」「俺…その人が好きだった」「結局裏切っちゃったけど。すごく傷つけちゃったけど。…もうすぐ、海外に行ってしまうけど」「でも、好きだった。…本気だったと思う」「結局俺、彼女と一緒に、また雪菜を裏切った。何度めかわからないくらい、傷つけた」「俺のしたことは裏切りだけど、それを隠すことはもっと酷い裏切りだから」
      • 「ねぇ、春希くん」「…なに?」「わたしのこと、好きだったんだよね? 好きだったんだよねぇ…?」「好きだよ…ずっと、好きなままだよ…っ」「酷い言葉…ありがとう。わたしもう、それだけでいいよ…」
      • 『春希くんの話からだけでも伝わってくる。明るくて、正しくて、頼もしくて…可愛い人なんだって』『そんな素敵な人なら、春希くんを笑わせてくれる。幸せにしてくれるって、わかっちゃった…』『春希くんを、元の春希くんに戻してくれる。三年前の、明るくて、正しくて、頼もしい春希くんに。…わたしには絶対できないことを、してくれる』『だったらわたしは、わたしは…もう、春希くんから、卒業するしかないって、わかっちゃった…』『あれは、あなたがかずさを語るときの顔。本当に好きな女の子を語るときの顔だから』『まだ、できたんだね。ううん、できるようになったんだね。…そのひとに、出会ってから』『ねぇ、春希くん』『わたしは、やっぱりあなたを照らす光になれなかった。あなたに当たるべき光を遮る存在でしかなかった』『だから…離れていきます』『さよなら、春希くん。ずいぶん遅くなっちゃったけど、わたし、あなたを…ふってあげる』『だから、頑張って立ち直ってね。そして、素敵な恋をしてね…』
      • 「だってここ……ニューヨークだぞ! アメリカなんだぞ!?」「間に合いましたよね…俺」「馬鹿な…だって今は」「3月1日の…12時半、です」「詭弁だ、そんなの…」「麻理さんだってやるじゃないですか…『真の締め切り』ってやつです」「っ…」「俺…やっぱり遠距離は無理です。側にいないと、いつでも会えないと…駄目なんです」「だから…ここに来たんです」「…え」「俺は自分の道を行きます。…麻理さんについていくっていう、自分だけの道を」
    • ー雪菜ー
      • 「ううん、わかってるから。春希くん、わたしなんかの何倍も頑張ってるって 本当、わかってるから」「だから、連絡くれただけで十分だよ。こっちこそ、ごめんね。突然、電話しろだなんて厚かましいこと…」
      • なぁ、雪菜。そんなにいい子でいないでくれ。そんなに優しくしないでくれ。俺をこれ以上、追い詰めないでくれよ。
      • 1.コンサートに行く 2.二年参りに行く
      • 『北原なら、できるよな?』誰かが勇気を与えてくれるから。『それでも、好きだから? 諦められないから?』誰かが答えを教えてくれたから。『わたし、前向きな人ならOKです。必死に頑張ってる人なら、嫌いになんかなりません』誰かが…正しい道を、指示してくれたから。「それなのに俺…やっぱり雪菜が大好きだから」
      • 昔みたいに、ひねくれた理由じゃない。男の子がギターを始める、純粋な衝動に駆られて。だって、ギターってのは…好きな女の子を口説くための道具だろ?
      • 「馬鹿、馬鹿、馬鹿ぁ…春希くんの…春希くんの…ばかぁ…っ」
      • 「でも、あの時のことは忘れて? だってあれ、わたしの本当の気持ちじゃ…」「俺にとっては、あれが雪菜の本当の気持ちであって欲しい」「…どうして?」「どうして春希くんは、そう思うの?」「だって、そしたら俺は、頑張れる」「え…」「今の俺が最低だってことなら、最低じゃない俺に、これからなることができるから」「そしたら俺は、今度こそ、雪菜のに振られずに済む男になれるかも…」「だから、一昨日のことは忘れないし、ずっと気にし続ける。雪菜に二度とあんなこと言われないように」「そんな…わたしなんかのために、そんな…」「これは俺の勝手な思い込みだから。俺の勝手に雪菜に気に入られようって頑張ってるだけだから」「春希、くん…」「だから、雪菜の意見は聞かない。何も、従わない」
      • 「最近、彼女が歌ってるの聴いたことある?」「だから人の話を…って、なんだって?」「歌よ、歌。一緒にカラオケ行ったりとかした?」
      • 「だってさぁ…今の小木曽雪菜って、全然、小木曽雪菜じゃなくないですか?」
      • 「わたしはね…」「あなたを好きでい続けるために、歌の方を嫌いになったの」「もし歌えば、必ず、この学園祭のステージが…みんなで練習した毎日が、最後の24時間がよ蘇る」「けれどね…わたしの記憶は、その楽しかったところで止まってはくれないの」「お祭りのあとの、夜のこと。あなたにも隠してた、醜い自分の正体のこと」「期末試験のこと、旅行のこと、コンクールのこと。かずさと、春希くんと、わたしの三人で過ごした、楽しかった『ふりをしてた』日のこと」「そして、あの…三年前の、誕生パーティーのこと」「必死で耳を塞いでも、目を閉じても…それでもまだ記憶は止まってくれなくて…」「卒業式のことが…空港での、かずさとの別れのことが、すごく鮮やかに蘇ってくる」「そんなことばかり続けてたら、わたし、あなたを嫌いになってしまうかも…憎んでしまうかもしれなかったから…」「だから、歌うのをやめた」「一度やめたら、忘れるのは早かった。メロディが頭に浮かばなくなった。だから口からフレーズが零れることもなくなった」「ううん、寂しくなんかない。だって、歌ってた時のことなんて覚えてないもの」「ねぇ、春希くん…」「わたし、頑張ったんだよ? あなたのために、必死で歌を嫌いになったんだよ?」「なのにあなたは、私に歌を思い出せって…もう一度、好きになれって言うの?」「わたしがまた歌えるようになったその時…そこには、あなたのことを嫌いになってるわたしがいるかもしれないのに?」「ねぇ、春希くん」「わたしはやっぱり、あなたのことが好き。だから、あなたが好きなままのわたしでいたいんだよ」「だから…できないよ。もう一度歌うことなんか、できないんだってば…」
      • 「今日だけは、わたしのこと信じて…お願い、春希くん」「雪菜、俺…」「わたし、もう、大丈夫だから。春希くんを傷つけたりしないから」「そ…か」「うん、大丈夫…わたしは大丈夫だから」「………」「春希、くん…」「…それって、大丈夫だって言えるのか?」「え…?」「大丈夫って、相手を気づかうための言葉だろ? どうして自分に言い聞かせる必要があるんだ?」「………」「本当に相手を求めてるんならさ…自分が大丈夫かなんて、そんなこと考えもしないだろ?」「春希、くん?」「俺だったらさ…自分どころか、雪菜に対してすら大丈夫だって言えないかも」「………っ」「そんなの…男の子の理屈だよ。女の子(こっち)は男の子(そっち)より、たくさんの勇気がいるんだよ」「そんなに一生懸命覚悟する必要があるなら、今は、いいよ」「春希くん…っ」「どうして…どうしてよ? 春希くん、わたしと、したくないの? わたしのこと、好きじゃないの…?」
      • 「好きだよ…」だから俺は、雪菜を安心させるおまじないと…「世界で二番目に、大好きだ」「え…」雪菜を不安にさせる呪文を、同時に唱えた。「二番…目?」「それって、それって…わたし、やっぱり、かずさに…」「わたし、わたし…どれだけ頑張っても、いつまでもあなたのこと見続けてきても、それでも、わたし、かずさには…っ」「だって…俺が世界で一番好きな人は、俺の前で、楽しそうに歌う雪菜だから」「………ぁ、ぇ?」「俺の下手くそなギターに、勝手に乗っかって歌いだす雪菜が」「カラオケ行ったら周りを無視して、自分の歌いたい曲を5連続で入れて、マイク絶対離さずに自己陶酔してる雪菜が」「一週間毎日だろうが、24時間連続だろうが、どんなキツい練習でも平気で歌い続けてる雪菜が」「リハーサルの時はガチガチだったくせに、本番になったらノリノリで歌い上げて、観客の大歓声に完璧な笑顔で応える雪菜が」「好きなんだ…世界で一番」「言ったよね? わたしが歌を思い出したら、そうなってしまうかもって」「うん…」「本当に…なってもいいの? あなたを、忘れちゃってもいいの?」「そりゃ、悲しいけど。ショックでかいけど。もしかしたら、立ち直れないかもしれないけど」「なら…」「それでも俺は、やっぱり雪菜に歌って欲しいなって…」「どうして…? そんなことが、あなたにとってどれだけ大事だって言うの?」「俺にとって、じゃなくて…雪菜にとって、大事だと思うから」「だから、わたしは…」「なぁ、雪菜…今の自分、本当に好きか?」「………」「俺のせいで歌わなくなって…そのせいで笑わなくなった自分のこと、好きでいられてるか?」「………………」「歌わない雪菜は、本当に、本物の雪菜なのかな? 幸せな…雪菜なのかな?」
      • 「わたしね、わたし…今から、歌う。きっとあの時のこと、思い出す」「うん」「そして思い出したら…あなたを嫌いになってしまうかもしれない。憎んでしまうかもしれない」「っ………ぅん」「だから、だからね…」………『コンサートが終わったら…わたしを、無理やり奪ってください』『わたしがどれだけ泣いても、抵抗しても…あなたに恨みの言葉をぶつけても…』『もう…待たないって』『そんな昔の記憶に囚われた…洗脳されてしまったわたしなんかの言葉に、絶対に、耳を貸さないって』『約束して…ください』
      • 「そして三つ目の…一番の理由は…これは凄く個人的なことなんですが、あの時のことに、決着をつけなくちゃって…」「いろいろあって、三人で音楽やることになって、いろいろあって、三人で楽しい日々を過ごして、たった一度のステージで、最高の自己満足ができた」「それからもいろいろあって、三人が少しずつずれていって、いろいろあって、一人が遠くへ行ってしまい、色々あって、わたしは一度、歌をやめた」「でも、本当はやめることなんかなかった。それは、負けたことから逃げてただけだった。卑怯だったし、たくさんの人を傷つけた」「今日は、わたしたちの三年ぶりの再結成…そして、おそらく今日をもってまた解散ってことになると思います」「でもわたし…もう音楽はやめません。趣味でも生活でも…多分仕事ってことはないけれど、また、楽しく歌いながら生きていきます」「だから皆さんとも、いつか別の機会で、こうして会うことがあるかもしれません」「その時は…また、わたしの歌を、聴いてください」
      • 「誓う? 必ず一週間に一度は会うって! ちなみにわたしは誓います、今ここで」
      • 明日から三月。三月の月間予報によれば、今回の低気圧が過ぎた後は急激に気温も高く、春めいた陽気になっていくらしい。だとしたらこれは、多分、今シーズン最後の雪。冬が、終わる。三人の季節が、終わる。『WHITE ALBUM』の季節が、終わる。
  • =coda=
    • ー共通ー
      • 「約束は、絶対に破られたりしないよ。だからわたしは、ここまで来たの。…春希くんを、追いかけて」
      • 「春希………っ」「っ…あれ? なんだよ、もう着いたのか雪………っ!?」………それは、雪菜の声じゃなかった。気づいていない訳じゃなかった。ただ、この異国の地で、俺の名前を呼ぶ人が、他にいるはずなんかないって…そんな当たり前の思い込みがあっただけで。「………え」ここはフランス北東部の都市、ストラスブール。パリから特急で2時間半くらい。そして…ウィーンからは、直通のオリエント急行が…けど、けど…だからって、こんなことが起こり得る確率なんて…「春希…」「かず………さ?」「………偶然、だな」「………」自分が今、どんな顔をしているのかすら全然わからない。かずさが、じっと俺を見下ろしてる。けれど俺は、その視線を受け止めることもできず、ただじっと、足下に目を落としたまま。かずさの顔が見れない。だって、一度見ただけでわかってしまったから。五年見ないうちに、また進化しやがったことも。けど、紛れもない冬馬かずさ本人だってことも。一目でそれとわかってしまった俺の記憶の強さも…
      • 「けど、わたしはいつ食べても、熱いままなんだよ?」
      • 「…で、そうやってると、自然と社会人としてのスキルが磨かれてくんだって。研究に明け暮れてんなら大学に残った方がよっぽどいい」
      • 「お前…なんで裸足なんだよ? 靴はどうしたんだよ?」「あ………あぁ」
      • 「いつ、なんだ?お前たち、その…」「………」そんなかずさの口から漏れたその質問は、二通りの意味に取れた。未来を問いかけているのか、過去を確かめているのか。
      • 「日本に…帰っちゃうのか?」
      • 「ね、春希くん」「ん?」「かずさに…会いたい?」「………いや、別に」
      • 「ただ、春希くんのままでいてくれたらそれでいい。今の、あなたのままで」
      • 1.かずさとは二度と会わない2.かずさと会った
      • どうして、なんだろう。そんな、嬉しかった思い出の真ん中にいた奴が、今、こうして目の前にいやがるのは。二人とも、わざとらしいくらいあからさまに相手を避けて、結局、相手のいるところに辿り着いた。しかもそこは、三人の思い出の詰まった大切な場所で…けれどそこに、三人の思い出を残すものはもう跡形もなくなってて…本当に、運がないとしか言いようがない。日本では、五年ぶりの再会なのに。そこそこ特別な関係であったはずの二人なのに。
      • けど、今の俺は。雪菜を待ってるって約束した、今の俺は…なのに、どうしていつもギリギリで踏みとどまって…いや、踏み越えてしまうんだろう。そしてかずさも、永遠にさよならとつい今言ったはずのその口で。どうして、まるで待ち構えていたかのように、すぐ返事を返してくるんだよ。
      • 「ほんとになぁ…たった一つ、この番号だけ覚えてるなんて、あたしって、なんなんだろ」
      • 「ところでさ、何か食べるものないか? お前があまりにも長電話するもんだから、いつの間にか腹が減ってきた」
      • 「まずそこが問題だ。お前、もう少し人付き合いなんとかならないのか?」
      • 「ほうら見ろ。人には自分の意見を押し付けようとするくせに、自分では何もできてないのが北原春希って奴だ」
      • 俺はまだ、かずさを振ってない。そして振られてもいない。空港で、抱き合って、涙して、くちづけて…かずさは涙をぼろぼろ流してゲートをくぐっていった。俺たちは、あの時から今の今まで、もう、お互いを想い合うことはやめようって…一度も約束したことがない…
      • ………待て。なんでマンションの鍵だってわかるんだ? 俺。
      • 「ふふ…やっぱうざい。お前はいつも、いつまでもうざいなぁ…」
      • あの時の俺は、雪菜の魅力を語るのに何の躊躇もなかった。かずさの良さを認めるのに何のてらいもなかった。怖いもの知らずだった。雪菜とかずさを『平等にひいき』してた。ただ単純に二人のことが好きだった。”どっちも好き”でも問題ない”好き”だった。けど、今は…二人のことを好きでいることは許されない。”どっちも好き”と無邪気に口にするには、俺たちは、大人になりすぎた。
      • 「結局、親友にはなれなかったけど…そうしてしまったのはあたしだけど」「だから今は…敵にだけはなりたくない。絶対に、なっちゃいけないんだ」「雪菜は…今でもかずさのこと、親友だと思ってる」「やめろ、やめろ…それ以上言うと、雪菜だけじゃなく、あたしも苦しむことになるんだから」
      • 「だから、仲直りしたら、もう二度と離すなよ? あ、ただ…部屋に連れ込むときはワンコールだけしてくれ。そしたらあたし、一晩出ていくから」
      • 「だから、遠くからでもいい。かずさを見たかった。本物のかずさに、もう一度会いたかった」「わたしのこと、許してくれないかもしれないけど。今でも彼のこと、諦めてないのかもしれないけど。だからも、親友じゃないのかもしれないけど」
      • そんな、雇用関係にある人を抱きしめて、笑顔と涙を一緒に見せるなんてあり得なかった。俺だって、そんな前向きな涙は見たことがなかった。だから、心が温かくなると同時に、胸を搔きむしられるくらいの嫉妬心すら抱いた。だって俺は、かずさを泣かせたことはあるけれど、でもその時、同時に笑ってくれることなんかなかったから。
      • 「なにもかも、あたしが初めてなんてさ。ほんと、最低だよな。………ざまぁ見ろ」
      • 「でも、別にいいんだ。コンサートに来てくれれば、それでいい」
      • 雪菜を抱きしめながら、その視線はまた、さっきと同じ場所を向いてしまう。
      • 「ま、本当にわかってるかって言われると自信ないけど…でも、ミスもほとんどなかったし」「うん、それはあたしにもわかった、本当に、CD聴いてるみたいに正確でさ。なんか安心して聴いてられる感じ」
      • 「そんなの…あたし、耐えられないよ…お前に…お前に嫌われたらあたしは…っ、嫌だよそんな…そんなのやだよぅ…ぅ、ぅぅぅ…っ」「今だけでいいんだ…今だけ、あたしを愛してくれればいい」
    • ーノーマルー
      • 「雪菜を、愛してる」「雪菜を、世界で一番愛してる…」
      • 「もしさ…もし、あたしの来日が、日本公演なんかじゃなくて、ただ、逃げてきただけだったらさ…」「え…?」「もしあたしが、ピアノでも失敗してさ、落ちぶれて、失意のまま帰国してたとしたらさ…」「かずさ…」「そんなあたしを憐れんで、お前は、抱きしめてくれたのかな?」「っ…」「同情で、キスしてくれたのかな…?」「ならなかったんだよ…」「そういうこと、ならなかったんだよ…だから、考えるだけ、無駄だよ」
      • 追加公演は、彼女の体調不良を理由に一方的に中止され、しばらくは本人と冬馬曜子事務所を批判する声がうるさく湧き上がっていたけれど…それでも何事においても熱しやすく冷めやすい日本人は、一月もしないうちにその話題を口にしなくなり。今は冬馬かずさという名前は、日本においてもドイツ語、または英語表記だけで、漢字で書かれることはなくなった。
      • 「私の気持ちは、変わらないよ、幸せに飽きたりしない、絶対に」
      • なぁ、雪菜…多分俺は、ずっと忘れられない。十年も、二十年も…このされない気持ちを引きずっていく。ずっと、愛する人を裏切り続ける。ずっと、愛する人の傍らで。ずっと、愛する人と一緒に。それでも…生涯ずっと、君に対して最低な気持ちを抱えたままでもさ…いまわの際には、君のことだけを想い、君だけを見て生涯を閉じて見せるから…だからごめん、雪菜…俺、あいつへの未練をこれからも引きずるよ。けれどその代わり、ずっと、君のことを愛する。絶対に、幸せにする。
    • ー浮気ー
      • 「憐れみ、なんだからな? 今のお前、そうなんだからな?」「そう、思ってろよ。それでいいんだから」
      • 必死に、ひたむきに…けれど拙く、ただ必死なだけの、色気も何もない、下手くそなキス。俺が、いつもしているキスとは…何もかも、違う…
      • 「痛くない、よ、あたし。お前…ヘタクソじゃ、なくなっちゃったなぁ…っ」
      • 本当に、好きなんだ。ケチケチしてる雪菜が。所帯じみてる雪菜が。生活臭漂う雪菜が。家庭的で、こんな俺をもほっとさせてくれる雪菜が、心から、愛おしいんだ。
      • 「ごめん…ごめん、ごめん…春希。許して、許して許して………雪菜、ぁ」
      • 「春希、お前はもう悩むな。もうなにも考えるな。いちいち苦悩することが、お前の最大の欠点だよ」
      • 「顔が好みだったからだよ! 一目惚れだよ!」
      • 「今、留守電聞いた。…もしかして、あたしのせいか?」「………何言ってんだ。それどころじゃないだろ。何で、お前…」「ん…?」「どうしてここにいるんだよ…?俺、俺………言ったよな、今日」
      • 「雪菜はさ…自分を選んだ数百人の男の中からお前を選んだ」「けどあたしはさ…最初からお前一人にしか選ばれなかったんだよ」
      • 「別に慌てなくても大丈夫。三月いっぱいまでなら、雪が積もってるところなんか、日本にはいくらでもある」「三月…?」
      • 俺が、日本を捨てる? 何もかも…捨てる? たった一つ、大切なものを手に入れるために? それは本当に、選択可能な道なんだろうか? 世界でたった一人くらいは、自己満足を感じられる未来なんだろうか?
      • 「だからお前には…お前にだけは、聴かせられない。…悪い」だから弾けない。かずさが作った曲なのに…だってあの曲はもう…雪菜の、ものだから。
      • 「なんてな…お断りだ。あたしはお前と一緒に行けない」
      • 「あたしのために全部を捨てるって…?一緒に地獄に落ちるのも厭わないって…?」「そんなのがそんなぶっこ割れたお前が、本物の、あたしの春希であるもんか!」「そんないい加減な嘘に騙されるもんか! あたしの気持ちを馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
      • 「でも壊れてく! あたしといると春希がどんどん壊れていくんだよ!」「春希が普通の幸せをつかんで、笑顔のまま、長い人生を歩いていくことに比べたら、あたしのその場限りの幸せの、なんてちっぽけなことか」「人の幸せを望まない春希なんて…好きな人の心配をしない春希なんて…やっぱり、本物の、あたしの春希なんかじゃない…」
      • 「帰るんだ…雪菜のいる世界に」
      • 「…想いの差なんかじゃない。気持ちの強さだけなら、負けない。負け惜しみだけど、これだけは譲れない」
      • 「だってあたし、雪菜のこと嫌いだから。今日から不俱戴天の敵だから」
      • きっと、俺と二人だけの閉ざされた世界に入るため、かずさはこんな凄いものを、ずっと隠していた。
      • 「今頃お客さんたち大ブーイングだよ? …本当に、迷惑かけてくれちゃって」
      • 「だってわたし、かずさのこと嫌いだから。不俱戴天の敵だから」
      • 「一週間で、必死になって一年分泣いたの。だから一年間は頑張れるって自身があった」
      • 『わたしを忘れて克服するか、わたしと一緒に克服するか、今の春希くんには、そのどっちかしかないんだよ?』『わたしにとってどっちが幸せか、春希くんには、わかるかな?』
    • ー不俱戴天の君へー
      • 「私の、たった一つの希望を奪う権利なんて誰にもない」
      • 「そんなわけで、今までお前が俺に言ってくれたことは、いつも正しかった。…少なくとも、俺の判断よりはな」「それでも、自分で決めろ。俺に聞くな」「…念のため言っとくけど、今じゃないぞ? 決めるのは、もう少し先のことだ」「先っていつだよ…いつなんだよ…」「そうだな…自分がこうするって決めたことが、迷った末、悩んだ末の結果だと信じられるとき、かな?」「…『迷ったって信じられる』って、なんか変だな」「もし、その時が来たらさ…迷えるようになって、悩めるようになって、何かを決断する時が来たらさ…最初に俺に話せ」「お前が決めたことなら、俺に文句は言わない…なんてこと言うわけなからな。昔のお前みたいに、指図しまくってやる」
      • 「ずっと愛していたはずの雪菜を、裏切った…」そう、だからだよ…だからわたしは信じられるんだよ。変わらない気持ちが、色褪せない想いがあるってことを。五年もかずさを忘れなかったあなたが側にいるから、信じられてしまうんだよ…
      • 「コンチェルト、だって…?」ピアノコンチェルト。オーケストラとの、協演。つまりそれは、コンサートを開くか、それともオーケストラを借り切るか…
      • 「わからないわけないだろう…俺が、今の雪菜の状態に気づかないわけないだろう…」「だって今の雪菜は…半年前の、俺だよ」
      • 「頑張れ…がんばれ、がんばれ、がんばれかずさっ」「言われなくたって、なってやる。お前たちの、手の届かない存在になってやる」「そして…あたしと絶交したこと、一生後悔すればいい」
      • 「昔の彼も、今の彼も、そして、未来の彼も、全部。だから、一緒に歩いて行きたいの」「………それも、できれば一生」
      • 今までは、焦ってた。一刻も早く、元の春希くんに戻って欲しいって。真面目で頑張り屋なカッコいい社会人に。わたしを愛してくれる、素敵な男の人に。でもね、でも…完全に、戻らなくてもいいじゃない。一生掛けて、ゆっくり治してもいいじゃない。一生掛けて、ゆっくり振り向かせても、いいじゃない。完治するのが、二人のいまわの際だって、いいじゃない。ついでに、わたしも引きずり込まれても、いいじゃない。って、それはちょ~っとマズいかな?とにかく、二人でのんびり戦っていこうって。のんびり、愛し合っていこうって。そんなふうに、激しくなく生きていこうよって。彼に、そう言って、もう一度押しかけ女房するつもり。だから…今まで心配掛けてごめんね、お父さん。これからも心配掛けるけどごめんね、お母さん。雪菜は…不誠実なあの人を。…ううん、わたし以外の女のひとに、ものすごく誠実なあのひとを愛していきます。これからもずっと。
      • 「ざまぁみろ!」最後の最後に、今の彼女にとって、異国の言葉を残した。
      • 「わたし、かずさとは永遠に敵同士なんだなって。…あなたのせいで」それはきっと、決別のメッセージ。それも、とびっきりの愛を込めた、特別な。
    • ー雪菜ー
      • だったらどうして俺は、自分に『大丈夫』と言い聞かせてるんだ…? 『大丈夫』は、相手に言い聞かせるための言葉だろ? 彼女(せつな)を、安心させるための台詞だろ?
      • 「本当は、わたしにこんなことする資格なんかない。でも、どうしても許せなかったの」それほどまでに雪菜が、自信の恥も省みず俺を責めたのは…「だって、春希くん…逃げてきたよね? かずさのコンサートから、逃げてきたんだよね?」あろうことか、かずさのためだった。
      • 「終わらない、まだ終わってないよ。わたしたち三人、こんなことじゃ全然終わらないんだよ」
      • 「お前の口から、あたしの知らない女の話聞かされて、冷静でいられるわけなんかないだろ…」
      • 「お前は最低だ、春希。………だから、意地でも嫌ってなんかやるものか」
      • 「病気なんかにナメられてたまるかってのよ。冗談じゃない。戦うよ、わたし」
      • 「人にはね、ギリギリのところで手を引く弱さも必要なのかもしれない」「どうにもならないことをどうにもならないって嘆く弱さも必要なのかもしれない」
      • 「いつもお世話になっております。わたくし、ナイツレコードの…小木曽と申します」
      • 「もし自分のお母さんが重い病気だって知ったら…お父さんと、孝宏と…みんなで大泣きするだろうな」「泣きながら夜通し話し合って、けど何も決められなくて、なのにお母さんの病室に行くと、みんな笑うんだ。真っ赤な目をして、けれど、必死に笑うんだと思う」「病気のこと、とっくに本人にバレてるのに、誰もがそんなことわかってるのに、それでもかずさの言う『家族』を演じるんだと思う」「そしてもし、もしもその日がきてしまったら…きっと、かずさと同じように、世界の終わりが来たみたいな気持ちになると思う」「悲しくて、悲しくて、いつまで泣いても涙が溢れて、だからもう、何も考えたくなくて」「でもね、良くも悪くも、そこで終わりじゃないんだよ?」「看取ってくれたお医者さんにちゃんとお礼を言って、葬儀屋さんと打合せして、式場を押さえて、親戚みんなに、お通夜とお葬式の日取りを連絡して」「お葬式の日も、色々と忙しくって、親戚や知り合いが来たら一言二言思い出話をして、葬式終わっても、香典返しのリストを作らないと」「本当に辛いんだよ? 何もしたくないんだよ? それでもわたしたは、わたしたちは、人と触れ合わないわけにはいかない」「けれどそれは、嫌なことばかりじゃない」「そうやって人と話しているうちに、世界が壊れてしまいそうな悲しみが少しずつ癒えていくから」「人とつながっているうちに、ゆっくりと、世界が修復されていくから」
      • 「違うよ、かずさ…違うんだって」「何が違うんだよぅ…っ! 誰も、いなくなってしまったじゃないか! あたしの愛してた人が、みんな…!」「いなくなったなら呼び戻せばいい! 世界が壊れたなら、もう一度作ればいいんだよ!」「作り直せば、いいよ。あなたには、それができる。…神様から、そういう力を授かってる」「今までだってやってきたじゃない。あなたの周りの世界は、あなたが自分の力で作ったものだったじゃない」「あなたのピアノが春希くんに届いたから…その音につられて、春希君はギターを弾いた。そして、その音たちにつられて、わたしは歌った」「あなたが春希くんを世界に招き入れたから、彼が、一度離れていったお母さんを連れ帰ってきた」「そうやってあなたは、自分の周りの世界を作ってきたんだよ。全部、自分の力で成し遂げてきたんだよ」「あなたのピアノには、そういう力がある。人と人とをつなげる、強い力があるんだよ」「人を感動させることのできる、人に力を与えることのできるそのピアノで、あなたはこれからも、世界と触れ合っていくんだよ」「そうやって、大切な人、たくさん作るんだよ…」「お母さんだけじゃなく、春希くんだけじゃない…もっとたくさんの、あなたを好きな人たちを、あなたの世界の中で、遊ばせてあげようよ?」「そしたら、そしたらさ、いつか、わたしも…」「一度はあなたの世界から出て行ってしまったわたしだって…もう一度、あなたの世界の輪の中に…」
      • 「あたしたち三人が揃ったら、できないことなんかないんだぞ?」
      • 「………つまり、この国にいない理由もなくなった。これからも、よろしくな」
      • 「さようなら…あたしの愛した春希」「そして、これからもよろしくな…あたしの大好きな春希」
    • ー幸せへ続く道ー
      • 「あと少ししたら、もう『春希くん』って呼べないから。あなたのこと、『お父さん』って呼ぶようになるから」「だから、今のうちに一生懸命呼んでおくね? 春希くん、春希くん、春希くん……おめでとう。それと、ありがとう」
    • ーかずさー
      • 「それでも…行くよ。ピアノ、弾くよ」「あいつ…聴かせろって言った。あたしのピアノ、聴きたいって言ったんだ…」「ならさ…祝福の曲、弾いてやらないと、さ」
      • 「どうしてあたしが無防備かって…?」「それはだな、お前に恋人がいるって知ってるからだ。あたしなんかを求めたりしないって、知ってるからだよ」「逆に聞きたいよ、春希…お前はどうしていつも、あたしの目の前で無防備に眠るんだ…」「こういう状況で、あたしが何度惑わされたか知ってるのか? …一度なんか、間違ってしまったんだぞ?」
      • 「恋なんか、とっくにしてるに決まってるじゃないか」「最初から…あの学園祭でステージに上がったときから…ずっと、してる」
      • 『春希…聞こえてるか? ええと…冬馬、かずさです。ま、わかってるとは思うけどさ』そこから流れてきたのは、俺が知っているはずのあの言葉じゃなかった。『現在、1月25日、金曜の午後2時。お前と合流する少し前。…今から付属に向かうところだよ』それどころか、俺には録音した覚えのないメッセージ。『昨日お前、あたしの部屋にこれ忘れてったろ。なんて凡ミスだ。まったく呆れる。仕方ないから、こっそり返しといてやるよ』インタビュアーではなく、インタビューイが仕掛けた、ほんのちょっとしたイタズラ…『けどその前に、ちょっと時間差でメッセージ…お前の返事とか聞くつもりないから電話はしない。…そのくらいは、許してくれるよな』『ええと…これから先は推定の話になるんだけど…』『あたし、さ…今からお前に、告白する。そして、玉砕すると思う』イタズラ、じゃなかった。そんな生易しいものじゃ、なかった。『わかってるんだ、お前には雪菜がいるって。だから、あたしを受け入れられないって、そんなこと最初からわかってるんだ』『けどさ、けど…それでも、もう一度だけ、あたしは雪菜を裏切る』『春希に、今の本当の想いを伝えられたらって…あたしの五年間、わかってもらえたらって…そんな都合のいい夢が、まだ捨てられないんだ』『雪菜にとっては酷い話だけどな…後で謝っておいてくれよな? 春希』『それでさ…もう、聞いたんだよな? あたしの告白、全部聞いちゃったんだよな?』『笑っちゃうだろ? 全然似合わないだろ? 馬鹿かお前はって思うよなぁ?』『だって、だってさ…あたしみたいなのが…』『あたしみたいな、ピアノしか能がない、他にはなにもできない欠陥品が、お前みたいな普通の男、好きになるなんてさ…』『五年前の、あの時から…ずっとずっと、忘れられてないなんてさ…』『………なんてな。今さら言ってもしょうがないことだ。忘れてくれ』『…じゃなかった、今のは嘘だよ。その時のあたしもそう言っただろ? お前を、からかっただけだよ』『だから、だからさ、春希…』『その時のあたしもそう言ったと思うけどさ…コンサート、絶対に来てくれよな?』『雪菜と、一緒でもいい。いや、ぜひ雪菜と一緒に来てくれよ』『そしたらあたしは、お前の…お前たちのためだけに、一生懸命に弾いてみせるから。自分でも、最高の演奏ができるって自信があるから』『だってあたしは、お前たちの結婚式には行けない。…距離も、心も、行くには辛すぎるから』『だから明日のコンサートが、お前たちへの、最後のプレゼントになる』『来てくれる、だけでいい。そしたらあたしはもう、お前のこと諦めるから。その日限りで、お前への想いを昇華するから』『だから、その日だけは…コンサートの時だけは、あたしだけを見ててくれ』『お願い、します』『………追伸』『人の寝顔を勝手に撮るな。お前じゃなかったらぶん殴ってるところだ』『じゃあ、な』
      • そうやって、いつまでも堂々巡りを繰り返し、今日という日をやり過ごそうとしていた俺を…神様は、許してくれなかった。とうとう、降ってきた。ずっと三人でいることを誓い合った日にも。三人から二人が抜け出してしまった日にも。二人から一人が去り、一人と一人が残されてしまった日にも。一人と一人が、もう一度二人になろうとして、けれどどうしても許し合うことができなかった日にも。一人と一人が、何度もお互いを傷つけあった末に、今度こそ、心の底から二人になろうと誓った日にも。そして今日…ああ、そうなんだ。やっぱり、今日なんだ。今日が、俺の人生の…そして、三人の分岐点なんだ。今日、俺がする決断は、俺の周りの沢山の人を巻き込むことになるんだ。だって、あの時からずっと。俺の運命が転がり始めるのは、必ず冬だった。その日には、雪が降っていた。いつも、降っていたんだ…雪が、滲む。体も心も搔き毟らんばかりの痛みが、俺の眼頭までも襲ってきたから。どうして…どうして、かつて結論を出したはずのことで、こんなに迷わなければならないんだよ、俺は。何が正しいのか、わかってる。正しくて、尊くて、嬉しいってわかってる。それなのに俺は迷う。だって、これが最後の決断だから…かずさは決められないから、だから俺が決める。ただ一つだけの、俺の気持ちに従う。…世界で一番大切な人を、選ぶ。俺は、誰を幸せにしたいんだろう。誰となら、間違えても後悔しないんだろう。これが最後…もう二度と引き返せない、最後の決断。考えよう…この雪が、終わるまで。だから、できれば…せめて、朝まで降り続いてくれ、雪よ…
      • 「お前は昔からそうだ。わがままで、だらしなくて、人として間違ってて…見てて、イライラする」「しかも悪い女だ。性格も、態度も、そして諦めも。お前のいいところなんて見た目とピアノの腕だけじゃないか!」「お前、見た目キンキラキンだけど中身は腐ってる。いくら才能だけ認められても、社会人としては失格だ」「そんな最低なくせに、俺なんかを好きだなんて最低の上塗りだよ。そのせいでどれだけ俺が苦しめられたかわかってんのか」「だから、お前みたいな奴は世界に弾かれて当然なんだ。才能の上にあぐらをかいて、社会と馴染もうとしない、人としては、本当に未熟な奴だから…」「かずさ…お前は本当に駄目な奴だ」「誰かに支えられてなくちゃ生きていけないくせに、頼ろうとする相手を選り好みしすぎて自滅して…」「俺と曜子さんの両方ともいなくなったら、どうやって生きていくつもりだったんだよ!?」「お前がこんなにも駄目な奴だから、どうしようもない弱い奴だから…」「だから………俺がなんとかするしかないだろ?」「俺、さ…そんな最低なお前が好きだ。…世界で、一番好きだ」「お前が幸せに生きてくれないと嫌なんだ」「お前が幸せになるために…いや、お前が生きていくために、俺が必要だって言うのなら…」「俺は、お前の側にいる。…たとえ、全てを捨てることになっても」
      • 「もう…雪菜と会わないで」「春希…雪菜を、裏切ってくれ。そして、あたしを選んでくれ」
      • 雪菜は、最初から気づいてたんだ。俺が、今日話そうとしている内容を。そうだ…だって俺たちは、今までずっと繋がってたんだ。掛け値なしに、心を通じ合わせていたんだ。だから、雪菜にはわかってしまっていたんだ。俺の周囲に吹き荒れていた嵐も。俺が隠し持っていた残酷な刃も。俺が、かずさを嵐から護るために、二人にとって一番大事なものを、刃で断ち切ってしまおうとしていることが。
      • 「もしお前が壊れたら、今度はあたしが護るからな」「それがあたしの、次の生きる目的になる。だからお前は、壊れても壊れなくても、ずっと、あたしの側にいてくれ」
      • 「………もし三人で背負ったら、俺はもう、二人のうちからかずさを選べなくなる」
      • 違う、違うんだ、雪菜…かずさだって、まだ雪菜のことが好きだ。ずっと、好きなままでいたんだ。でも…違うんだ。雪菜の『三人』と、かずさの『三人』は違うんだ。雪菜の求める『三人』には、周りに広い世界がある。自分たちを取り囲む暖かさや、優しさや…時には厳しさにみんなで触れながら、大きく広く、正しく生きていく、そんな生き方だ。でもかずさは、違うんだ…5年間、どれだけ世界を広げようとしても駄目だった。曜子さんと、そして思い出の中にしか居場所を見つけられなかった。ピアノはかずさを広い世界に知らしめた。けれどピアノは、広い世界をかずさに与えられなかった。…かずさが、拒絶したから。雪菜が樹木なら、かずさは浮き草だ。地面に根を張って強く生きていくことはできないんだ。地面と、世界と隔絶したところで、水から少しずつ栄養をもらって生きていくしかないんだ。好きか嫌いかじゃない。今まで広い世界と触れあって生きてきたけれど、別に、世界(おや)と触れあわずにでも生きていられる俺だけが、浮き草(かずさ)の水(せかい)になれるって…ただそれだけ。
      • 「あたしは、お前がおあずけをやめてくれるまで…行儀よくお座りして、一生懸命しっぽ振って、今か今かと待ってるだけなんだからな?」
      • 「そうだよ、好きだったんだよ、雪菜のこと!」「春希が…お前さえいなければ、あたしたち、本当の親友になれたかもしれないのに」「…ううん、お前がいなければ、そもそもあたしたち、出会うこともなかったもんな」「お前があたしと雪菜を繋いだ。そして、お前のせいで断ち切られた」「………恨む、よ」
      • 「こんなの、誰にも知られたらいけないの! 明日…かずさのコンサートなのに!」
      • 駅まで、あと数歩というところで、それは降ってきた。いつも俺たちの分岐点に現れ、辛いこと、悲しいことを時期限定で埋め尽くす、白い幕。白くて、儚くて、優しくて…けれど厳しい寒さを、冷たさとともに運んでくる。雪菜は…。大丈夫立って強がっていたけれど、寒い海風に吹き付けられ、今度は雪にまで覆い尽くされようという、雪菜は…俺は、もう、雪菜の側に寄り添えない。自分で、そして雪菜に言ってもらったじゃないか。やっぱり、降ってきた。一番大切なものを手に入れるために、一番大切なものを切り落とした日にも。まるで俺の罪を消そうかとするかのように、記憶から覆い隠してくれようとするかのように。雪が、舞い落ちる。幸せになって、幸せになって…雪菜。俺の、一生掛けてのお願いだ。もう、俺がそれをかなえることはできなくなってしまったけれど。それでも俺、ずっとずっと、願っているから。もし、辛いことが会ったら、悲しいことがあったなら…俺を思い出してくれ。強く恨んで、激しく憎んでくれ。怒りを、力に変えてくれ。君を立ち直らせる、力に。俺を否定する心が…俺がいない、そのことが当然な世界への道しるべとなる。だから、だから…ずっと、俺のこと憎んで、憎んで。そして、暖かさや幸せに包まれて…いつか俺のこと…忘れて、くれ。
      • そして、俺の思い出した忘れ物も、本当に些細で、取りに戻る必要のないもので。荷物を運び出し、鍵を返したとき、それだけは捨てるつもりで手に持っていたのを、業者に渡し忘れていただけ。多分今ごろは管理会社が見つけて、ちょっと迷惑そうな態度で、適当に処分してるはず。「いいんだよ…」ちっぽけな、ギター一本…だってもう、二度と弾かないから。ギター君じゃ、ないから。それだけは、かずさに求められても、もう二度と手に取らないって決めたから。雪菜に…捧げたものだから。今までの雪菜の五年間と引き替えるには、あまりにもちっぽけで、笑ってしまうくらい不釣り合いな、下手くそな腕だったけど。でも、雪菜はいつも喜んでくれた。俺の拙いギターを、電話口で、目の前で、俺の方で、いつも噛みしめるように、堪能してくれた。だから、これだけは…本当に、これだけは…雪菜との別れとともに、俺の中で、永遠に眠らせて…
      • 「なぁ、春希、聞いてくれ…」「あたしはこの国で、三つの罪を犯した」「ひねくれ者のあたしと初めて親友になろうとしてくれた、一度は確かに親友だった、大好きなあのコを、世界で一番不幸な女の子にしてしまった罪」「ひねくれ者のあたしに初めて素直な気持ちをくれた、あたしを素直な女の子にしてくれた、ずっとずっと愛してたあなたを、世界で一番の罪人にしてしまった罪」「そして、そしてさ…」「こんなひねくれ者で、何もできなくて、人を恨んだり妬んだりしかできない、大嫌いな女の子を、世界で一番の幸せ者にしてしまった………重罪」「あたしの今の悲しみや、辛さや、後ろめたさは、どんな嬉しさや、楽しさや、前向きな気持ちでも絶対に和らげることはできない」「けど、けどね、それはね…」「今のこの幸福感は、どんな悲しみや、辛さや、後ろめたさでも絶対に消すことはできないってことなんだよ」「幸せだ、あたし幸せだよ、春希」「やっと、お前の胸の中に帰ってこれたことが。お前があたしのもとに帰ってきてくれたことが」「それが、こんなにも…この世に生を受けてから、一番幸せなんだよ」
      • 「元気ですか? わたしは、今でも歌ってます」
    • ー幸せへと戻る道ー
      • 「うわあぁぁぁぁん、春希ぃぃぃ~! やっぱり寂しいよ~!」「お前、お前さぁっ、なに呑気にシャワーなんか浴びてるんだよ! あたしのことほっといて平気なのかよ!」「やだよ、そんな悲しいこと言わないでくれよ……あたしが悪かったよ! 謝るから! なんでもするから! だから、そんなふうに見捨てるなよぅ!」「嫌だ……謝らせろ。ごめん、ごめんな春希ぃっ」
      • 「それからも、何度会ったか覚えてないけれど……でも、向こうの娘さんも一緒に説得してくれてね。それで、今は……」
      • 「…準備、できたってよ」「じゃ、そろそろ行こうか?」「うんっ」

 

続きを読む

WA2 coda 2周目

=共通=

ありえない。開始3分で泣かされて、開始4分で心がぐちゃぐちゃになって、開始5分でむせび泣いていた。この気持ちをなんて言い表したらいいんだろうか。物語が終わりへと向かう虚しさ、最愛のかずさにまた会えた嬉しさ、雪菜を裏切る苦しさ申し訳なさ。本当にありえない。基本的にはなにをしていても俯瞰的でいれるはずなのに、WA2だけは、codaだけはそうはいられない。

プレイヤーは思うことでしょう。なんでかずさのもとに残るんだ!これまでの5年はなんだったんだ!CCはなんだったんだ!と。でもそれほどまでにかずさが好きなんだもん、好きだったんだもん。前者はかずさ派、そして後者は雪菜派。雪菜派にとってもこの密会はやっぱり重要なんだよなあ。3人で始まった物語は、3人で閉じなければならない。まあ最後のピアノ聞かせてくれ!はお前なあってなっちゃうけど。そのあとにかずさを忘れようとして雪菜を抱こうとするのもクソだけど。

隣の部屋にかずさが引っ越してきて、雪菜が来た時には静かにってさせるけど、そりゃないよなあ。ほんと屑だよお前。

しばらく春希の態度にやきもきしてたんだけど、きっと1周目もそうだったんだけど、柴田さんの話でまた涙腺やられるんだよなあ。

そんでもって、お前かずさのコンサートに行かないんだろ?かずさの覚悟から逃げて世間体を取ったんだろ?悔しくて泣いたよ。かずさにも雪菜にも申し訳が立たなくて。かずさから雪菜の肉体へと逃げて。雪菜が仕事に失敗して落ち込んでるなんてこと気にもせずに、いつもの春希ならその程度の異変気づいていいはずなのに。おかしい春希のことを、雪菜なら気遣って受け入れてくれるはずだもんな。体裁としては雪菜を傷つけないためなんだろうけど、他でもない自分を傷つけないための行動なんだよ、それは。BGMが「誰かが傷ついても」。ぴったりだね。いや違うな。もしかしたら雪菜は自身が言うように、全部理解できたからこそ嬉しかったのかも。もうかずさとは交わらないと知りつつも、初めてかずさよりも自分を選んでくれたことに対して。でも誠実じゃないよな。

 

=ノーマル=

まあクソですよね。どのENDよりも。自分が一番傷つかないEND。いっち嫌い。生アフレコでこのafterがあるらしいですが、どうも雪菜の努力は報われなかったらしい。あーあ。(メタ的笑いとシリアスが両立してて面白かった)

 

=浮気=

選択後、誰かが傷ついてもが流れるのが悪い。涙の原因。このシーンの一言一言が、この行為は罪であることを強調してて胸が痛い。

時間を暗号にしたメッセージ。最低だよお前。でも今思うと、もう春希がこの時点で壊れかけてたんだろうな。二人を幸せにしようとして、それが叶わないとわかっても藻掻いて藻掻いて、その結果唯一、叶いそうに見えたのがこれだったんだろう。きっと春希は賢いから普通なら叶わないと理解できていたけど、もう無理だったんだろうね。頭が正解を導きだせなくなってしまった。現実を拒んでしまった。5年もの月日が春希を蝕んでたんだね。

普通はさ、許せないよ。浮気だし、婚約まで申し込んでるし。でもこんなに好きになっちゃったら仕方ないじゃんと思ってしまう自分が怖い。はたから見ればわからないけれど、世間の浮気もそうなのかもしれない。本気なのかもな。

冷静になってみると最低なだけなんだけど、でも一目ぼれだよ!のシーンは号泣しちゃう。このシーンはなんで泣けるかいまだに頭で整理できない。それほど素晴らしい。

たぶんだけど、わたしが春希のこと嫌いになれないのはこのルートのおかげだ。このルートで春希の苦しさがちょっと伝わって。だから嫌いになれない。

これ、決定的なのは、雪が降ってない東京からわざわざ雪の降っている場所に行くってとこなのか…考えてなかった。自ら破滅へと向かったのか、二人は。

この後は涙が枯れるまで泣き果てた。かずさとの別れは辛すぎる。ここで初めてかずさの本心に触れるんだもんね。

 

=不倶戴天の君へ=

もうね、これが大好きなの。だから不倶戴天っていう言葉をずっとピックアップしてたの。

ひどい言い方だとこれまでの雪菜は春希を手に入れるためって見方はできてしまう。そうじゃないのはわかってるけど!でもこの献身を見ると、雪菜のやさしさに自分が恥ずかしくなってしまう。

母も病気で、願った春希ともできなくて、もうこれ以上、かずさから何も奪わないでくれ…

 

=雪菜=

いっちばん、春希がまともなんだよね。まだわかる選択肢の未来。コンサートに行かず、雪菜に逃げてるのはどうしてこうも印象が違うんだろう。まず会話したからだろうな。あとはやっぱり選択肢。誠実であろうという努力が伝わってくる、伝わってくるだけ。選ぶまでもなく、正直に密会を報告したからかな。だから曜子さんの件はあるけど、結構落ち着いて見れる、2周目だし。

そしてなんでキレた理由がかずさを裏切ったからなんだ。。。もう尊敬しかできない。

すっかり展開忘れてて、というかこのルートを軽視してて、ホテルに閉じこもったかずさを訪ねる特効薬が雪菜って忘れてて、ナイツレコードとしてあいさつしたとき、もうわんわん泣いちゃった。浮気ルートはかずさが春希を支えられなかった未来で、今回は春希がかずさを支えきれなかった未来なんだ。ああなんて美しい対称性なんだ。

でも、雪菜は強すぎるんだよな。このルートを見て特に思う。強すぎて優しすぎて、隣にいると自分がえらくみすぼらしく見えて、余りに霞んでしまうからかずさと一緒にいたいと思ってしまう。

時の魔法最高!!このルートは春希と二人じゃなくて、かずさと雪菜、かずさと曜子さん、かずさとかずさの世界の愛を描いているから好きじゃない、けど好き。3人でいるという雪菜の夢、叶ってよかった。5年を費やして叶ってよかった。

本当に一つ不満があるのは、黒くなった雪菜が白すぎること。人として、白すぎて、黒さなんか欠片も感じられなくて、最後のプロポーズが共感できない。。。

 

=かずさ=

かずさ視点のストラスブールの再会、ほんと泣ける。普通追いかけるか?気づくか?5年ぶりだよ?確信できるか?あの時の彼だって。たぶん確信なんかなかったんだ。それでも裸足になって、もう歩けなくなる可能性があったとしても、春希に会える可能性がほんのわずかでもあるならって走ったんだ。どんな気持ちで、どんな想いなんだよ…一生味わうことがないよ、想像つかないよ…

1周目(浮気まで)では聞こえなかったのも聞こえるようになってる演出がやっぱり憎い。

雪菜に頼らず、すべてを捨てて、かずさを、愛する女を幸せにする。このすべてを捨ててっていうのが最高なんだよ。私は不貞を働くこと自体よりも、不貞を働いた末、誤魔化すことこそが大問題だと思ってて、もし文字通りに全てを捨てる覚悟があるのであれば、不貞は容認できる。何かを手に入れるために、何かを捨てなくてはならないなんていう考え方なんて大嫌い。だけど何かを捨てたとしても手に入れなくてはならないなにかを手に入れるために、すべてを打ち捨てるのは、この上なく尊い。何かを捨てなくては手に入らないものは尊い。理屈じゃないんだよ。

複数ヒロインから一人を選ぶ展開ってありふれてるけど、ここまで心からごめんって、ごめんなんかじゃ言い表せないくらいの罪悪感をもつのは他にはない。雪菜が好きなのも私や春希からしたら真実だし、すべて嘘にしちゃうのも真実だし。またやっぱり雪菜にはみんながいるんだよな。いくら春希のために全て捨てられるって言っても、雪菜は友人も、家族もいる。捨てられないものがたくさん守ってくれる。捨てようとしても捨てさせてくれない。裏切っていい理由にはならないけれど、裏切る理由にはなってしまう。かずさTrueを最後に回す理由は、かずさ派だからであると同時に、最もかずさTrueを味わうには雪菜を最も好きになった状態である必要があるからでしょう。ノーマルは雪菜ノーマルに、浮気はかずさノーマルに相当するはずだけど、かずさノーマルですらかずさとは結ばれず、雪菜と結ばれるのはかずさTrueでプレイヤーがもっとも傷つくためである。

最後のpowder snowもいいですよね。これコード自体はめっちゃ簡単だけど、2年かかってるっていうのは、2年の間に泣いて泣いて泣いて、あたって、それでも依緒たちや家族が支えてくれて。ようやく立ち直って考えたのがかずさと春希のことだった。急いで練習して、できる限り、それこそ以前の軽音楽同好会の合宿のように一夜漬けして、今また3人でいるためにメッセージビデオを撮っている。神。

 

ああ今回もいっぱい心が傷ついて、癒された。感情をここまで理性で抑え込めないゲームはこれだけだ。また1年後。