えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

【厳選】WHITE ALBUM2 好きなセリフ集【個人的保存版】

 

 

=introductry chapter=

「でも、だからこそ…ムカついたって、いいよね? 意味もなく嫌になったって、いいよね?」「いいコだからこそ苦手。とことん苦手。きっと、死ぬまで同じ価値観を持てないと思う」「不倶戴天の敵になるか、………生涯の大親友になるかのどっちかだと思う」

これから先、雪菜との関係を予期するかずさの言葉。不倶戴天の敵が大好きなので。

 

「今から…あたしの家に来い」

冬馬邸にて練習を初めて練習をする際の誘い文句。ドキリとしちゃう。

 

「あたしが弾けるようにしてやる。…お前の言う、カッコいい男にしてやるから」

同上。まずかずさはカッコいい、クールなキャラなんだと教え込まれることが重要なのである。

 

「傷ついて、傷つけられて…」

かずさの家に青い歯ブラシがあることに気づいた後の雪菜。セリフというよりも、この一枚絵に心抉られる。

 

「お祭りの後も、ずっと騒いでいたい。三人でいたい。お祭り前の日常に戻るのは、もう嫌。だけど、仲間外れは、もっと嫌、なの」

雪菜の本心。言ってしまえばこれだけ。けれどこれ以上にない本心。

 

「雪菜でなきゃやだな」

雪菜でいいよ、雪菜がいいよ、雪菜でなきゃやだな、の三段論法。

 

「なんで側にいないんだよ…」

風邪で弱気になるかずさ。かわE。

 

俺…初めて会った時から、ずっとお前のことが好きだったよ。

届かない恋を諦めてしまった春希。雪菜のことも好きだからと。屑と言いたいところだけど、気持ちはわからなくもないからなあ。。。

 

「違う、雪菜。…”かずさ”だ」

かずさから雪菜への赦し。三人でいようとなんとか試みて、自分の心を傷つけ始めたかずさ。

 

「絶対寝ないって。…間違えそうになるから」

学祭後、三人での温泉旅行の帰り際。雪菜が眠った後、助手席に座る春希への一言。春希からすれば、道を間違えないように。かずさからすれば、雪菜の目がない今、間違えを起こさないように。精一杯のかずさの藻掻きが感じられる。

 

「そんなのはなぁ………っ、親友の彼氏に言われる台詞じゃないんだよ!」

一時帰国したかずさをようやく見つけた時の問答。もう心が無茶苦茶になって、それでも雪菜のことを親友と言ってしまう本心。生涯の親友でいたいと思っている心。

 

「あたしの前から先に消えたのはお前だろ!? 勝手に手の届かないとこに行ったのはお前だろ!」「手が届かないくせに、ずっと近くにいろなんて、そんな拷問を思いついたのもお前だろ!」「あんな…毎日、毎日、目の前で、心抉られて…それが全部あたしのせいなのかよ…酷いよ…っ」

かずさ、魂の叫び。かずさからの愛の言葉は全部大好き。拷問っていう表現でどれほどかずさを傷つけたかを思い知って1周目は吐きそうになった。本当に春希は酷いよ。

 

「そんな女のこと何も知らない奴が、あたしの想いを勝手に否定するな! あたしがつまらない男を好きになって何が悪い!」

同シーン。それでも春希のことは好き。好きになったもの負けです。。。

 

雪菜に対して誠実でいるために、俺に対して誠実でいられなかったじゃないか

同シーン。言うほど誠実か?お前の態度。

 

「なんでそんなに慣れてんだよっ!」

”かずさとの”ファーストキス。ようやく結ばれたと雪菜に申し訳なく思いながらも、少しうれしく思っていたらこの仕打ち。辛かった。。。まあ春希が悪いんだけど!

 

「なぁ北原……あたし、お前のことが大好きだったよ?」

かずさがウィーンへと飛ぶ別れの前夜。電話ならいいよね、と言って告白をするのはもちろん、もう過去形になってしまった事実に打ちのめされる。

 

「男を好きになる辛さを、教えてしまったのがいけないんだ」

電話をしながら抱きしめあう二人。このシーンを見てかずさのことを好きにならない人がいるのだろうか。

 

「ただ、予想できなかったことと言えば、二人が…悲しいくらいに真剣だったってことかな」

かずさを追いかけ、二人で空港に向かうシーン。ちょっと雪菜が嫌いになったかな?でも雪菜を嫌いになりきれないところがうまい。たぶん私が想像だにしないほど心が綺麗なんだと思う。

 

「うん…わたしも絶対に嫌。よかった、そこだけは譲れなかったんだ。…ありがとうね、春希くん」

同シーン。かずさのことが大好きなことが伝わってくる。生涯の親友でいたいとこの時は、そしてどのルートでも本心から思う雪菜。

 

ほら見ろ…俺が振り向いた途端、あいつはやっぱり目をそらしたじゃないか。見つけるんだよ…あいつは、簡単に俺を見つけるんだ。けれどそのことを、俺に気取られるのが嫌だから、絶対に、すぐに目をそらして知らんぷり…

空港での、雪菜の眼前での逢瀬。二人きりじゃない逢瀬っていう矛盾した最高のシーン。これまでのかずさとの全て凝縮させたようなic集大成。

 

かずさは、自分にも他人にも、ずっと嘘をついていた。『ギター君』の正体なんて、実は初めから知っていた。その音色の拙さも真面目さも融通の利かなさも、間違いなく彼のものだとわかっていた。

かずさがあまりにも女の子していたのが伝わってきた補足。きゅん死。

 

それどころか、そんな相手は一人しかあり得ない。消去法だけでなく、選択式でも…~もう、認めるしかなかった。今の上総には、目の前の、決して自分を孤独にはしてくれない、このおせっかいな委員長がどうしても必要なんだということを。

同上。

 

「しょうがないだろ? …あたしはお前と違って我慢強くないんだよ」

ライブ後、第二音楽室での二人。かずさから春希へのキス。目撃した雪菜。終わりの始まり。

 

=closing chapter=

ー共通ー

「相手のことを心の底から同情してもいいのは、相手の事情を本気で解決しようと頑張っちゃう人だけだよ」

雪菜から友近くんへの一言。友近くんと話していながら、春希のことしか考えていない名シーン。春希はすごくいいやつ。そんないいやつなのに、こんな三角関係を作ってしまった好きという気持ちの狂気。

 

だってわたし、あなたたちが仲違いしたのが、嬉しい。わたしのために春希くんが道を踏み外したのが、嬉しい。~春希くんが、暴力を振るった。あのひとだったら絶対にするはずのないことをしてでかした。…わたしのせいで。

春希と友近が絶交したことを喜ぶ雪菜。純粋だった雪菜の心が黒くなったけれど、正確にはだいぶ前に黒くなっていたのだけれど、その黒さからありあまるほどの春希への愛が感じられて好き。三人でいるためだけに春希に告白したわけじゃないことが最も端的に伝わってくる。

 

ほんと、なんて自己中なんだろう、わたし…これじゃ、あなたと変わらないね、かずさ…全ての人の幸せを願うのは。周りの人の幸せを願うのは。…三人の幸せを願うのは。

親友でありたかった二人が、もう不俱戴天の敵になるしかなくなった。

 

「なんであんな悲しそうで、あんな嬉しそうな顔してたんだろ、あいつ…」

母校にかずさの取材に行った春希が思い出に触れていたのを見た小春。年月を経るほどこの表情をすることが多くなる。

 

「そんな風に、逃避で仕事や勉強頑張ったって、結局その結果は質の差として現れるんだからな?」「仕事に本気にならないと、仕事は本気で応えてくれないんだからな?」

麻理さんからのお言葉。胸に焼き付けます。

 

「あなたの言ってることはとても酷いのに、差し伸べられてる手は、なんでこんなに優しいの?」

クリスマスイブ、ホテルに行く直前の雪菜の言葉。残酷さと優しさが常に両立する、すれ違いだらけのWA2を表しているかのよう。

 

ー千晶ー

「変わるよ。春希が何もしなくても、時間が何かを変えることもある」

時の魔法。

 

「人を傷つけたことは、すぐに忘れてしまうけど、人に傷つけられたことは、簡単には忘れられない。そんな当たり前のことを…忘れてたんだ」

春希がずっと忘れていなかったということは、春希も当然傷ついていたんだけど、その事実にあまり春希が気づいていないところで、春希のことも好きになっていく。

 

「あんまり、お前の近くにいる奴に騙されてるんじゃない。そいつは…最低の女だ」

まだ役の吸収が終わっていないのにも関わらず、千晶がこう話す必要はない。にもかかわらず、こう話すってことはこれが本心で、そういう利益がなくとも春希のことがいつの間にか好きになってたことの現れなんじゃないかな。

 

「でも、今は一進一退だけど…もしかしたら、今度こそは前に進めるかも」

雪菜の強さ。見習いたい。

 

「だって、その意味を考えたこともないし、じっと想い続けようって、努力したこともないんだから。…ただの結果論だよ」

同上

 

「あいつが雪菜ちゃんの味方でい続けてくれるなら、俺は心おきなくお前をかばえるな」

ここだけじゃないけど、武也も依緒も本当にいい友達で、このシーンは何度見ても泣ける。

 

「わたしの好きなひとは、嘘が嫌いなの」「だからわたしも嘘は嫌いになった。たとえそれが、大好きな彼がついたものでも、ね」

なんて言えばいいかわからないけど、理由のない好きが感じられて、雪菜のことが好きになるシーン。

 

「…私を振り回して、お前楽しいか?」

春希が落ち込んでいた時に出張に行っていたことを後悔している麻理さん。ぐうかわ。

 

「ごめんね…突然押しかけちゃって」

風邪を引いたと聞いて、壊れかけの春希の看病にやってくる雪菜。一体どんな気持ちだったんだろう。かずさに作ったことのある料理を見て、何を思ったんだろう。泣きながら来てよかったと繰り返す雪菜はどれほど心が綺麗な人物なんだろう。この後の、千晶との問答のシーンも含めて、雪菜のことがどんどん好きになっていくシーン。

 

「…それこそが相手にとって一番の罰だって、まだ、気づいてないから、かな?」

上記から続くシーンの中で最も印象的な言葉。残酷な言葉と優しく差し伸ばされた手に通じる、春希のやさしさと残酷さを端的に表していてとても印象的。三年前にしてしまったことと同じことをされてるだけ、そう考える雪菜ってすごいなあ…

 

「あいつのこと、これからもずっと女として扱えるのって、世界一ころっと騙された、俺くらいかなぁって」「天才で、冷酷で、無慈悲で、倫理感なくて、女どころか人としてかなりヤバい奴なのは間違いないけど、それでも馬鹿で、俺にとってはいい奴で、大切な恩人だ」

事実、春希は千晶に救われた。千晶ルートで千晶が救っていなかったら、春希がどうなっていたか想像もつかない。その事実が大切で、その事実を作ってくれたのは天才で、冷酷で、無慈悲で、倫理感がないヤバい奴。自分が千晶を勘違いしていただけで、千晶が好きという事実だけを残せばいい。他人に勝手な理想を押し付けて、それが嘘だとわかっただけと考えるとそんなに千晶は悪い奴じゃない?そんなこともないか。

 

こいつ、きっと全然気づいてないよな。…今日が2月14日だなんてこと。

2月14日。あえて書かなくてはならない大切な日。お前はいつも、雪菜の誕生日に雪菜を裏切るなあ。

 

「…逃げてばかりじゃ、おびえてばかりじゃ、何も得られないと思うんだけどなぁ」「それは、一度も失ったことのない奴の台詞だ。…いや、一度も失ったことに気づいたことのない、かな」

千晶と春希、両方言っていることは正しい。大切なのは、この後春希の言うことを千晶が実感していくこと。子供が実はできてなくて、本当に春希との糸が切れてしまったと思って、泣きわめくシーン。

 

本当に、馬鹿で天才だ…この馬鹿は。「わたし、和希くんのこと、本当に、本当に愛してる!これだけは真実だって、約束する…」

演技をしなければ生きていけない千晶。だから劇の中でようやく本心が伝えられたシーン。この辺りから大泣きした。

 

だから俺は…そんな雪菜の信頼を裏切っちゃいけない。「二人きりで会うの…これで最後にしよう」雪菜を…裏切らなくちゃならない。「騙されたけど、傷つけられたけど、酷い女だったけど…それでもあいつと過ごした瞬間は辛くなかったんだ。ずっと続いて欲しい時間だって思ったんだ」

雪菜と、そしてかずさとを捨てるシーン。各ルートで最も大切な、あえて二人を、特にかずさを忘れるために必要なシーン。サブヒロインをする意義。

 

「いつかわたしは、新しく出会う人にこの気持ちをぶつけるのかもしれない。それとも、ずっと引きずるのかもしれない」「けれど今は…わたしとかずさから、やっと卒業しようとしてるあなたを、幸せにしてあげなくちゃいけないって、思ったんだ」「それがわたしの、最後の意地だから。プライドだから」「わたしは…彼女を恨んでるよ?あなたを憎んでるよ?」「だから…これは返さない」

どこまで春希のことを愛してるんだと説教までしたくなる。正直この辺になると、一瞬かずさのことを忘れませんか?神がかってる。かずさを忘れるためのCCなんだから。

 

ー小春ー

「もしもそんな馬鹿げた迷惑行為を、信念とかいう免罪符のもとに人の迷惑顧みず強硬してる馬鹿なコがいたとしたら…」「それはですね…きっと、もう一度あんな顔して欲しくて、そして、もうあんな顔してもらいたくないからです」

もう完全に春希にメロメロじゃーん、となった。小春ルートは春希のことを好きってなるの早いような…いや麻理さんも相当か。

 

「人としての尊敬だって愛だけどね? 憐れみだって恋だけどね?」

恋愛マスター中川の至言。愛ってなんなんでしょう。

 

「一人くらい味方がいてあげないと…国選弁護人より頼りないかもしれないけど」

この国選弁護人って言い回しが大好き。春希感

 

「わたしの願い事は…『北原春希って人が元気を取り戻すように』だったから」「自分のことですよ? わたしが今、一番求めてるものです」

べたぼれ小春ちゃんpart2

 

「このまま自然消滅してしまうつもりはないよ。それだと、あまりにも雪菜に対して不誠実だ」

もうすでに不誠実だってのはさておき、この愚直といえるまでの真面目さを持つ春希のことは好き。

 

「なら先輩はわたしが悪いって言うんですか!」「…なに言ってんだ。君には関係ないだろ」「じゃどうすれば関係あることになりますか!?」

相手の人生に関わりたいっていうことがひしひしと伝わってきて大好きなシーン。相手の人生に入れてほしいって気持ちは中々持てない尊い気持ちですもんね。

 

「だから嫌わないで…っ、………くれるとありがたいなって、その」

WA2名物、惚れたもの負け、小春part。明らかに懇願してて、重荷にならないように、それを打ち消そうとする小春らしさが伝わってきてよき。

 

「悲しいよ…悔しいよ…なんで、そんなこと言うの」

春希が自身の味方が小春だけだと言った直後のシーン。これもまた委員長的な小春らしさが感じられて、同時にそんなこと言うってことはもう委員長という属性からは遠く離れた春希も感じられる。過去の自分と向き合ってるなあって気がする。

 

「だから、いいこいいこって…してください」

許されるなら、私が小春ちゃんにいいこいいこしたい。

 

「それってなぁ…今まで積み上げてきた思い出が、たった一月で全部なかったことになっちまうってことだぞ?」

孝宏、めっちゃイイこと言う。。。目の前の出来事に心惑わされ、過去までなくす必要はないってことですねえ。

 

「やっぱり、小木曽先輩のこと…」「それはずっと抱えてる。今までも、そして今からも」「っ…」

ここでお前だけを愛するなんて見え透いた嘘をつかないのが残酷であり、長所。そして春希はその雪菜への残酷さに気づいていない。

 

「人には、いくつもの…別々の人に対しての、それぞれの誠実があるって」

ちょっと大人になった小春の台詞。そしてこれだけは過去の春希でも持っていたこと。唯一の違い。

 

「これで14日一番乗りですよね? わたし」

まず一つはかわいい。もう一つはやっぱり14日なんだっていう印象深さ。

 

「そうやって否定しようとする人間も、真面目に聞こうとする人間もいないなら、伝わった噂だけが真実だよ」

武也から春希への小春についての言葉。あまり噂とかに惑わされないようにしたいねという自戒を込めて。

 

「時々腹が立ったけど、たまに放っておこうと思うこともあったけど、それでも好きだった! 嫌いになんかなれなかった!」

親友ってこういうことを言うんだよなとうなづいてしまう。そしてそれ以上に深く春希を愛してしまったという事実も伝わってくる。また小春は若いから何かを手に入れるためには何かを犠牲にしなくちゃとどこかで思っていたと思う(妄想)けど、大人になった春希がそんなことないんだよと支え始めるシーンなので好き。ようやく春希がかっこよくなってくるシーン。

 

「だからわたしは、ほんの少しでも後悔の少ない方を…悲しませる人が『比較的』少ない選択肢を選んだだけです」

このセリフだけだと意固地になってると思うんだけど、この後の春希が雪菜と別れたことを伝えるシーンで生きる。

 

『でもね…あなたが大嫌いなわたしは、今でもあなたのことが大好きです』

雪菜が好きって気持ちはICだとあんまりわからなかったと思うんですが、こういうところで深堀されて、codaで雪菜を選べるようになるんですよね、きっと。

 

「忘れるなよ? いい思い出なんかにするなよ? …全部人に押し付けるなよ?」

孝宏part2。正直早百合嫌いですが、孝宏のこの言葉を守っただけで恨んだりする気持ちはさっぱり無くなった。

 

「そこまで頑張って…何もかも敵に回してあなたが手に入れたものは、それだけの価値があるんだって信じていいと思うよ」

雪菜の最後のプライドに感じる一言。負け惜しみで春希の悪口なんて言わない。雪菜の強さ。

 

「ねぇ春希くん」「うん」「今…あなたが一番守ってあげたいのは、誰?」「それは…それは…俺のせいで、一度潰れてしまったのに、またまっすぐ、一生懸命に伸びてきた………」「うん…」「杉浦小春って、後輩の女の子、だよ」「もうつぶさせない。もう、辛い目になんか遭わせない。…俺が、なんとかしてみせる」「やっと、言えたね」

春希の決意はもちろんですが、このあと春希を笑顔で見送った一枚絵と、ようやく涙を零せて小春を見送れない一枚絵の対比があまりにも残酷で、辛くて、小春ルートで一番印象に残ってるシーン。やっと言えたねってどんだけ雪菜、強いんだよ。どれだけ春希のことが好きなんだよ。

 

「あなたは、治せる人を直してあげてね。わたしの傷はもう…あなたには専門外だから」「そう…あなただけには、もう癒すことができないんだから」

この一言とメアドを消すシーンで本当に、ああ雪菜との縁が切れたんだ、そうしてまでも小春と一緒にいたいんだと心から思えたシーン。

 

「ほら、送信しちゃった。これであなたが春希くんのところに行かないと、全部わたしのせいってことになるね?」

何気ないシーンに見えて鳥肌が一番立つと個人的に思うシーン。初対面なのにこれほど扱いになれてるのは小春が春希にそっくりだからで、そして何よりずっと春希のことを考え続けていたから。なにが春希を苦しめるかを理解していたから。

 

「雪菜でも、小春でも…どっちを選んでも、後悔する」「だったら俺は、ほんの少しでも後悔の少ない方を…今の俺が、一番好きな女の子を選ぶしかないだろ」

前述した小春へのアンサー。やっぱり二人はそっくりだ。

 

ー麻理ー

1.コンサートに行く2.ここに残る

選べはしない選択肢。けれどもしここでコンサートに行っていれば…そう思わずにはいられない。かずさのことを忘れられなければそのほどに。名選択肢。

 

「この国に、あたしの居場所はないんだよ、もう」

これがあるからこそ、麻理さんルートは最後にすべきなんだ。

 

「じゃあ、騙さないように、事実の方を合わせちゃえばいいんじゃない?」

春希と付き合っていると勘違いされた麻理さんの一言なんだけど、一般に通じる麻理さんらしい言葉だと思う。

 

「っ! そういう投げやりな態度がおかしいって言ってるんだ! いい加減自分の今の状態に気づけ!」

この前の「二度と北原に直接仕事を回すな! 絶対に私を通せ! 何時でも、私がどこにいても必ずだ!」も含め、麻理さんがめちゃくちゃ大きな存在だと認識させてくれる。

 

「私にとってはとてつもなく難解なミステリーだ。…年下の男(おまえ)の気持ちなんて」

そしてその直後に来る急なデレ。やっぱり萌えの本質はギャップなんでしょうねえ。

 

「駄目だって…今のお前は、一人になっちゃいけないんだって」

春希のことが好きっていうのはもちろん前提だろうけど、いま犯してこようとした人の精神状態を最優先で考えられるって人ができることじゃないよ。。。

 

「それに、私たちはセックスしなかった。北原が、私の頼みを聞いて我慢してくれたからだ。…だから、レイプなんかされてないよ、私は」

背中が液で汚れたまま外まで探しに来てくれた麻理さん。そしてそのことに焦って気づいていないわけではない。聡明だから自分の状況を鑑みて、それでも春希を優先して、しかしそれを見られたら春希が落ち込むということも理解してるから、ずっと背中を隠したまま応対して。すごすぎる…

 

「私は、仕事に逃げる奴が許せない。楽しめるくせに楽しまない奴が我慢できない」

以前の、共通のときとほぼ同じ言葉だけれど、声色で内容がここまで違って聞こえる。

 

「雪菜と二人だと、前に進めない。相手が後ろを振り返っているんじゃないかって気になって、気が付いたら自分が後ろを振り返ってる」

WA2で雪菜ルートの尊さがぎゅっとつまってる。相手がこの世で最も愛してる人たちの一人である雪菜だからこそ、もう一人を同じように大好きな雪菜だからこそ、幸せへの道が遠すぎる。

 

「知るかよそんなこと。それを考えて苦しむのも償いの一つだろ」「苦しんで、のたうち回って…それで出した結論なら、俺はもう文句言わない。依緒にも言わせない」

依緒が雪菜に寄り添うように、武也は春希に寄り添ってくれている。4人は親友だけど、武也と春希の友情はそれ以上ってことがわかる。それに春希達の3年を肯定してくれている言葉で好き。

 

「もう、そんな心境には戻れそうにない。怖くて怖くて、二度と男なんか好きになれないよ…」

かわよい麻理さん。だけどこれを見てる状況ではかわいいなんて思ってられないシーン。

 

だって雪菜は…大切な女性だから。どれだけすれ違っても。どれだけ互いが傷ついても。たとえ俺に、『誰よりも好きな人』が現れたとしても。

ようやく雪菜に対してケジメをつけることを決心したシーン。そのことがわかっていながら、そのあとの二人の会話は大泣きしてしまう。

 

「…何言ってるんだ。汚れてなんかいないぞ?」「ちゃんと掃除したんだ。一生懸命磨いたんだ。あいつが」「嫌だ、認めない!」「ここだけは、私は絶対に認めない! ちゃんと綺麗になってるじゃないか!」

なんでこうも急な女の子らしさを魅せるのがうまいのか…

 

エスバージニア航空302便。日本時間13時成田空港発予定。「お前は、いちいち細かく指示しないと動けないような奴じゃないよな? …そんなふうに育てた覚えはないからな?」「締め切りまで…あと半日」

前述の女の子らしさと上司らしさがあいまった、今までの二人の時間をぎゅっと押し込めた最高のメール。そしてこの13時が直後にも生きてくる。。。

 

「厳しくて、容赦なくて、自信家なところが、冬馬に似てると思ってた」「でも…思い出だけで人を好きになったりしない。逃避だけで相手を想うことなんかないんだよ」「俺…その人が好きだった」「結局裏切っちゃったけど。すごく傷つけちゃったけど。…もうすぐ、海外に行ってしまうけど」「でも、好きだった。…本気だったと思う」「結局俺、彼女と一緒に、また雪菜を裏切った。何度めかわからないくらい、傷つけた」「俺のしたことは裏切りだけど、それを隠すことはもっと酷い裏切りだから」

春希の独白。メールが届く前から話していたっていうのがもうね。言いたいことは麻理さんが好き、なのに冬馬も雪菜も好きっていうことが同じくらい伝わってくる。同じくらいですよ。麻理さんを世界で一番、女性として愛そうとも、冬馬も、雪菜も、同じくらい友人として愛している。直後、雪菜は抱いてくれというけど、それに対して「俺はまだ彼女のことを諦めてない!」は魂の叫びって感じがしてすこだ…

 

「ねぇ、春希くん」「…なに?」「わたしのこと、好きだったんだよね? 好きだったんだよねぇ…?」「好きだよ…ずっと、好きなままだよ…っ」「酷い言葉…ありがとう。わたしもう、それだけでいいよ…」

3年以上、ずっと求めていた言葉が何よりも酷い言葉に変貌する。このずっと好きなままってのはどっちの意味なんだろうね。ずっと友達としてのまま好きだったのかな。このギャップがWA2の最高の場所なんだ…

 

『春希くんの話からだけでも伝わってくる。明るくて、正しくて、頼もしくて…可愛い人なんだって』『そんな素敵な人なら、春希くんを笑わせてくれる。幸せにしてくれるって、わかっちゃった…』『春希くんを、元の春希くんに戻してくれる。三年前の、明るくて、正しくて、頼もしい春希くんに。…わたしには絶対できないことを、してくれる』『だったらわたしは、わたしは…もう、春希くんから、卒業するしかないって、わかっちゃった…』『あれは、あなたがかずさを語るときの顔。本当に好きな女の子を語るときの顔だから』『まだ、できたんだね。ううん、できるようになったんだね。…そのひとに、出会ってから』『ねぇ、春希くん』『わたしは、やっぱりあなたを照らす光になれなかった。あなたに当たるべき光を遮る存在でしかなかった』『だから…離れていきます』『さよなら、春希くん。ずいぶん遅くなっちゃったけど、わたし、あなたを…ふってあげる』『だから、頑張って立ち直ってね。そして、素敵な恋をしてね…』

雪菜の、いろんな感情が伝わってくる。失恋の悲しさ、春希が立ち直ったことに対する喜び、もう人生が交わらないことへの虚しさ、もう3人には戻ることへの諦め、ちょっとしたプライド。そして何より、これを口には一切出さない雪菜のやさしさ。

 

「だってここ……ニューヨークだぞ! アメリカなんだぞ!?」「間に合いましたよね…俺」「馬鹿な…だって今は」「3月1日の…12時半、です」「詭弁だ、そんなの…」「麻理さんだってやるじゃないですか…『真の締め切り』ってやつです」「っ…」「俺…やっぱり遠距離は無理です。側にいないと、いつでも会えないと…駄目なんです」「だから…ここに来たんです」「…え」「俺は自分の道を行きます。…麻理さんについていくっていう、自分だけの道を」

締め切りの13時に間に合った…雪降ってるせいで間に合うんだろうなあ。雪が辛い岐路を意味するものから、麻理さんを繋ぎくれたものに昇華するんだろうなあ、と思いながら、え!間に合わないの!ってなって、からのこのシーンはもう耐え切れない。

 

ー雪菜ー

「ううん、わかってるから。春希くん、わたしなんかの何倍も頑張ってるって 本当、わかってるから」「だから、連絡くれただけで十分だよ。こっちこそ、ごめんね。突然、電話しろだなんて厚かましいこと…」

実はまだ分岐してない共通だけど。この頑張ってるが明らかに電話してくれたことのことを言ってて好き。

 

なぁ、雪菜。そんなにいい子でいないでくれ。そんなに優しくしないでくれ。俺をこれ以上、追い詰めないでくれよ。

雪菜が春希のやさしさに傷つけられているとき、雪菜もまた春希をそのやさしさで傷つけているのだった。

 

1.コンサートに行く 2.二年参りに行く

言わずもがな。

 

『北原なら、できるよな?』誰かが勇気を与えてくれるから。『それでも、好きだから? 諦められないから?』誰かが答えを教えてくれたから。『わたし、前向きな人ならOKです。必死に頑張ってる人なら、嫌いになんかなりません』誰かが…正しい道を、指示してくれたから。「それなのに俺…やっぱり雪菜が大好きだから」

今までの3ルートやっててよかったなっていう集大成的なシーン。3人とのつながりがあったからこそ、雪菜にまた向かい合えた春希かっこいい。

 

昔みたいに、ひねくれた理由じゃない。男の子がギターを始める、純粋な衝動に駆られて。だって、ギターってのは…好きな女の子を口説くための道具だろ?

一見、3年前は違う理由って言ってるみたいだけど、3年前も好きな女の子を口説くための道具だっただろ?その相手が違うだけで。

 

「馬鹿、馬鹿、馬鹿ぁ…春希くんの…春希くんの…ばかぁ…っ」

三年ぶりの雪菜から春希への罵倒。3ルートぶりのプレイヤーへの、私への罵倒。

 

「でも、あの時のことは忘れて? だってあれ、わたしの本当の気持ちじゃ…」「俺にとっては、あれが雪菜の本当の気持ちであって欲しい」「…どうして?」「どうして春希くんは、そう思うの?」「だって、そしたら俺は、頑張れる」「え…」「今の俺が最低だってことなら、最低じゃない俺に、これからなることができるから」「そしたら俺は、今度こそ、雪菜のに振られずに済む男になれるかも…」「だから、一昨日のことは忘れないし、ずっと気にし続ける。雪菜に二度とあんなこと言われないように」「そんな…わたしなんかのために、そんな…」「これは俺の勝手な思い込みだから。俺の勝手に雪菜に気に入られようって頑張ってるだけだから」「春希、くん…」「だから、雪菜の意見は聞かない。何も、従わない」

急にかっこよくなりすぎなんだよ、春希!だからむかつく、憧れる。誰の幸せでもない、相手の幸せを本心から願っているから。それは大きく空回りしてしまったけれど、酷い優しさだったことは、この頃には間違いないと言える。

 

「最近、彼女が歌ってるの聴いたことある?」「だから人の話を…って、なんだって?」「歌よ、歌。一緒にカラオケ行ったりとかした?」
「だってさぁ…今の小木曽雪菜って、全然、小木曽雪菜じゃなくないですか?」

隠れた名シーン。武也と依緒は二人のことが好きだから、二人とも幸せになってほしいと思って、二人をくっつけようとしていた。雪菜も春希も、かずさも、3人とも自分以外の幸せを願っていたはずだったのにね。だから必要だったのは、春希を、雪菜を、それぞれ幸せにしようと思ってくれる人で、今までのルートでは春希にそんな人が、そして今回のルートでは雪菜にそんな人が現れてくれた。朋はこのルートとこれ以降の話のキーパーソン。

 

「わたしはね…」「あなたを好きでい続けるために、歌の方を嫌いになったの」「もし歌えば、必ず、この学園祭のステージが…みんなで練習した毎日が、最後の24時間がよ蘇る」「けれどね…わたしの記憶は、その楽しかったところで止まってはくれないの」「お祭りのあとの、夜のこと。あなたにも隠してた、醜い自分の正体のこと」「期末試験のこと、旅行のこと、コンクールのこと。かずさと、春希くんと、わたしの三人で過ごした、楽しかった『ふりをしてた』日のこと」「そして、あの…三年前の、誕生パーティーのこと」「必死で耳を塞いでも、目を閉じても…それでもまだ記憶は止まってくれなくて…」「卒業式のことが…空港での、かずさとの別れのことが、すごく鮮やかに蘇ってくる」「そんなことばかり続けてたら、わたし、あなたを嫌いになってしまうかも…憎んでしまうかもしれなかったから…」「だから、歌うのをやめた」「一度やめたら、忘れるのは早かった。メロディが頭に浮かばなくなった。だから口からフレーズが零れることもなくなった」「ううん、寂しくなんかない。だって、歌ってた時のことなんて覚えてないもの」「ねぇ、春希くん…」「わたし、頑張ったんだよ? あなたのために、必死で歌を嫌いになったんだよ?」「なのにあなたは、私に歌を思い出せって…もう一度、好きになれって言うの?」「わたしがまた歌えるようになったその時…そこには、あなたのことを嫌いになってるわたしがいるかもしれないのに?」「ねぇ、春希くん」「わたしはやっぱり、あなたのことが好き。だから、あなたが好きなままのわたしでいたいんだよ」「だから…できないよ。もう一度歌うことなんか、できないんだってば…」

長い長い雪菜の告白。歌を忘れた偶像の真実。こう見ると「歌を忘れた偶像」は雪菜ルート直前でもいいかもな。友達からはぶられても一人で歌い続けていた雪菜が、大好きな歌を捨ててしまった覚悟。春希の存在の大きさと、かずさの存在の大きさが伝わってくる。

 

「今日だけは、わたしのこと信じて…お願い、春希くん」「雪菜、俺…」「わたし、もう、大丈夫だから。春希くんを傷つけたりしないから」「そ…か」「うん、大丈夫…わたしは大丈夫だから」「………」「春希、くん…」「…それって、大丈夫だって言えるのか?」「え…?」「大丈夫って、相手を気づかうための言葉だろ? どうして自分に言い聞かせる必要があるんだ?」「………」「本当に相手を求めてるんならさ…自分が大丈夫かなんて、そんなこと考えもしないだろ?」「春希、くん?」「俺だったらさ…自分どころか、雪菜に対してすら大丈夫だって言えないかも」「………っ」「そんなの…男の子の理屈だよ。女の子(こっち)は男の子(そっち)より、たくさんの勇気がいるんだよ」「そんなに一生懸命覚悟する必要があるなら、今は、いいよ」「春希くん…っ」「どうして…どうしてよ? 春希くん、わたしと、したくないの? わたしのこと、好きじゃないの…?」

単に雪菜との問答のシーンに留まらず、今まで言葉の誤用に厳しかった春希だからこその、春希らしい説得になっていて、本当に神がかっていると思う。

 

「好きだよ…」だから俺は、雪菜を安心させるおまじないと…「世界で二番目に、大好きだ」「え…」雪菜を不安にさせる呪文を、同時に唱えた「二番…目?」「それって、それって…わたし、やっぱり、かずさに…」「わたし、わたし…どれだけ頑張っても、いつまでもあなたのこと見続けてきても、それでも、わたし、かずさには…っ」「だって…俺が世界で一番好きな人は、俺の前で、楽しそうに歌う雪菜だから」「………ぁ、ぇ?」「俺の下手くそなギターに、勝手に乗っかって歌いだす雪菜が」「カラオケ行ったら周りを無視して、自分の歌いたい曲を5連続で入れて、マイク絶対離さずに自己陶酔してる雪菜が」「一週間毎日だろうが、24時間連続だろうが、どんなキツい練習でも平気で歌い続けてる雪菜が」「リハーサルの時はガチガチだったくせに、本番になったらノリノリで歌い上げて、観客の大歓声に完璧な笑顔で応える雪菜が」「好きなんだ…世界で一番」「言ったよね? わたしが歌を思い出したら、そうなってしまうかもって」「うん…」「本当に…なってもいいの? あなたを、忘れちゃってもいいの?」「そりゃ、悲しいけど。ショックでかいけど。もしかしたら、立ち直れないかもしれないけど」「なら…」「それでも俺は、やっぱり雪菜に歌って欲しいなって…」「どうして…? そんなことが、あなたにとってどれだけ大事だって言うの?」「俺にとって、じゃなくて…雪菜にとって、大事だと思うから」「だから、わたしは…」「なぁ、雪菜…今の自分、本当に好きか?」「………」「俺のせいで歌わなくなって…そのせいで笑わなくなった自分のこと、好きでいられてるか?」「………………」「歌わない雪菜は、本当に、本物の雪菜なのかな? 幸せな…雪菜なのかな?」

この3年で、目的と手段がぐちゃぐちゃになっちゃったんだろう。朋が自身の目的と手段を勘違いしてるって言い張るシーンがあるけど、4人と1人もいつのまにか手段と目的が入れ替わってしまったんでしょう。幸せになるという目的と、春希と雪菜が結ばれるという手段が。

 

「わたしね、わたし…今から、歌う。きっとあの時のこと、思い出す」「うん」「そして思い出したら…あなたを嫌いになってしまうかもしれない。憎んでしまうかもしれない」「っ………ぅん」「だから、だからね…」………『コンサートが終わったら…わたしを、無理やり奪ってください』『わたしがどれだけ泣いても、抵抗しても…あなたに恨みの言葉をぶつけても…』『もう…待たないって』『そんな昔の記憶に囚われた…洗脳されてしまったわたしなんかの言葉に、絶対に、耳を貸さないって』『約束して…ください』

一緒の場面だけど、一緒の場面じゃないシーン。本当に不器用な二人。雪菜がもう春希を拒むことなんてないのに、過去の過ちが怖くって。でもそうなっても春希に頼れたっていうのは大きな前進なんだと思う。二人にとって。

 

「そして三つ目の…一番の理由は…これは凄く個人的なことなんですが、あの時のことに、決着をつけなくちゃって…」「いろいろあって、三人で音楽やることになって、いろいろあって、三人で楽しい日々を過ごして、たった一度のステージで、最高の自己満足ができた」「それからもいろいろあって、三人が少しずつずれていって、いろいろあって、一人が遠くへ行ってしまい、色々あって、わたしは一度、歌をやめた」「でも、本当はやめることなんかなかった。それは、負けたことから逃げてただけだった。卑怯だったし、たくさんの人を傷つけた」「今日は、わたしたちの三年ぶりの再結成…そして、おそらく今日をもってまた解散ってことになると思います」「でもわたし…もう音楽はやめません。趣味でも生活でも…多分仕事ってことはないけれど、また、楽しく歌いながら生きていきます」「だから皆さんとも、いつか別の機会で、こうして会うことがあるかもしれません」「その時は…また、わたしの歌を、聴いてください」

三年前の決着。敬語による観客への呼びかけ、そしてため口による二人への呼びかけの遷移がいい。わたしたちはきっと三人。けれど三人での出来事を、二人で完結させることなんかはできないから、codaへと物語は続く。また、雪菜の歌は響く。

 

「誓う? 必ず一週間に一度は会うって! ちなみにわたしは誓います、今ここで」

一週間の約束。codaでも響いてくるから入れました。

 

明日から三月。三月の月間予報によれば、今回の低気圧が過ぎた後は急激に気温も高く、春めいた陽気になっていくらしい。だとしたらこれは、多分、今シーズン最後の雪。冬が、終わる。三人の季節が、終わる。『WHITE ALBUM』の季節が、終わる。

WA2完…とはならず。今冬は終わるが、また次の冬がやってくる。

 

=coda=

ー共通ー

「約束は、絶対に破られたりしないよ。だからわたしは、ここまで来たの。…春希くんを、追いかけて」

codaの始まり。いくら雪菜が約束を守ろうとしても、春希は約束を破ってしまう。そりゃそうだ、思い出の中の人物には勝てないんだから。

 

「春希………っ」「っ…あれ? なんだよ、もう着いたのか雪………っ!?」………それは、雪菜の声じゃなかった。気づいていない訳じゃなかった。ただ、この異国の地で、俺の名前を呼ぶ人が、他にいるはずなんかないって…そんな当たり前の思い込みがあっただけで。「………え」ここはフランス北東部の都市、ストラスブール。パリから特急で2時間半くらい。そして…ウィーンからは、直通のオリエント急行が…けど、けど…だからって、こんなことが起こり得る確率なんて…「春希…」「かず………さ?」「………偶然、だな」「………」自分が今、どんな顔をしているのかすら全然わからない。かずさが、じっと俺を見下ろしてる。けれど俺は、その視線を受け止めることもできず、ただじっと、足下に目を落としたまま。かずさの顔が見れない。だって、一度見ただけでわかってしまったから。五年見ないうちに、また進化しやがったことも。けど、紛れもない冬馬かずさ本人だってことも。一目でそれとわかってしまった俺の記憶の強さも…

???って表記だけど、ノベルゲームで音つけてないやつなんかいない。そしてかずさの声を忘れてるやつもいない。その当たり前のことを、春希も感じている。たぶんプレイヤーと春希はおんなじ心境。その人の声を聞いただけでドキドキしてしまって、ちょっとにやついたもしくは赤くなった顔を気取られたくないから、少しゆっくり目にわざとらしく振り向く。そこにいたんだってまったく気づいていないふりをしながら、それでも相手の顔をこの目に焼き付けたいから、視線は相手の声の方に合わせて。誰しもが経験したことのある淡くて、強い恋情。でも二人の場合、かずさへの場合はずっと見てることもできない。見てしまうと好きになってしまうからね。

 

「けど、わたしはいつ食べても、熱いままなんだよ?」

かーーー、何言ってんだ、このバカップル。

 

「…で、そうやってると、自然と社会人としてのスキルが磨かれてくんだって。研究に明け暮れてんなら大学に残った方がよっぽどいい」

うぎゃーーー。

 

「お前…なんで裸足なんだよ? 靴はどうしたんだよ?」「あ………あぁ」

早くかずさ視点が見たい。どんな気持ちで春希の姿を見て駆け出したか、聞きたい。あぁってなんだよ、返事になってないのが素晴らしい。

 

「いつ、なんだ?お前たち、その…」「………」そんなかずさの口から漏れたその質問は、二通りの意味に取れた。未来を問いかけているのか、過去を確かめているのか。

この選択肢が、かずさ派か雪菜派かを見分ける最適の質問だと思う。よく男の下心がわかっている選択肢だと思う。

 

「日本に…帰っちゃうのか?」

ただただカワイイ。

 

「ね、春希くん」「ん?」「かずさに…会いたい?」「………いや、別に」
「ただ、春希くんのままでいてくれたらそれでいい。今の、あなたのままで」
1.かずさとは二度と会わない2.かずさと会った

かずさと会いたくないなんて、そんなわけないんだよ!それが恋としてなのかどうかは問わず、友人として会いたいって気持ちがないわけないじゃん。雪菜にもあるんだから。だから”会わない”なの!?誤魔化すなよ。なんで春希は聡明なのに、そこらへんわきが甘いんだよ!!取材したものは外に出るだろ!お前が書いたかずさの文章は全部、全部恋文なんだよ!2年前と、5年前となんにも変わってない。屑だよお前は。かずさと会って、今のお前ではいられなくなってしまった気持ちはわかるけど…

 

どうして、なんだろう。そんな、嬉しかった思い出の真ん中にいた奴が、今、こうして目の前にいやがるのは。
二人とも、わざとらしいくらいあからさまに相手を避けて、結局、相手のいるところに辿り着いた。
しかもそこは、三人の思い出の詰まった大切な場所で…
けれどそこに、三人の思い出を残すものはもう跡形もなくなってて…
本当に、運がないとしか言いようがない。日本では、五年ぶりの再会なのに。そこそこ特別な関係であったはずの二人なのに。

ここの春希の何がクソって、雪菜のことがすっかり頭から抜けてしまってるところ。三人の思い出といいつつも、現実を冬馬かずさが中心だったという幻想に挿げ替えて、そして最後には三人の思い出を二人が特別だったという言葉にすり替えて。

 

けど、今の俺は。雪菜を待ってるって約束した、今の俺は…
なのに、どうしていつもギリギリで踏みとどまって…いや、踏み越えてしまうんだろう。
そしてかずさも、永遠にさよならとつい今言ったはずのその口で。どうして、まるで待ち構えていたかのように、すぐ返事を返してくるんだよ。

電話でなら本音を言えるからに決まってるじゃん。五年前だってそうだっただろ、春希。春希もわかってて、なんでわからないふりしてんだよ…

 

「ほんとになぁ…たった一つ、この番号だけ覚えてるなんて、あたしって、なんなんだろ」

5年だよ? 5年前にたった一度かけたっきりの番号をどうして覚えてるんだよ。何度も何度もあの日のことを思い返したんだろうな。電話をかける前の時から、電話をかけてからも。

 

「ところでさ、何か食べるものないか? お前があまりにも長電話するもんだから、いつの間にか腹が減ってきた」

日本に来てからほとんど食べられなかったのに、春希がいると食えるって…しかもあのボンゴレ雑炊。たぶんあの料理のこともずっと思い出してたから、不意に聞かれて答えたんだろうな。なんでこの短い会話で、かずさの5年間が伝わってくるんだよ…

 

「まずそこが問題だ。お前、もう少し人付き合いなんとかならないのか?」

雪菜には3年間できなかったお説教も、かずさには会って数分でするんだ。

 

「ほうら見ろ。人には自分の意見を押し付けようとするくせに、自分では何もできてないのが北原春希って奴だ」

そしてどうしてそんな嬉しそうなんだよ…

 

俺はまだ、かずさを振ってない。そして振られてもいない。空港で、抱き合って、涙して、くちづけて…かずさは涙をぼろぼろ流してゲートをくぐっていった。俺たちは、あの時から今の今まで、もう、お互いを想い合うことはやめようって…一度も約束したことがない…

やっぱりけじめはつけるべきだったんだよなあ。もしこの時に春希とかずさが会ってなかったとしても、日本公演すらしなかったとしても、いずれこうなってたよ。雪菜と婚姻していようとなんだろうと。子供ができていたら、雪菜以上に愛する存在がいたとしたら別かもしれないけど、子供がいなければ、きっとどんな状況でも、80歳になっていたとしても、3人の物語がしっかりと終わりを告げるまでは絶対に。

 

………待て。なんでマンションの鍵だってわかるんだ? 俺。

地味に好き。おいおいこの鍵は!みたいなわざとらしく書くんじゃなくて、さらっと書くのが好き。

 

「ふふ…やっぱうざい。お前はいつも、いつまでもうざいなぁ…」

最高の誉め言葉。春希専用の。この直後のカメラ向けてくるシーンといい、なんでこんなにかわいいんだろう。

 

あの時の俺は、雪菜の魅力を語るのに何の躊躇もなかった。かずさの良さを認めるのに何のてらいもなかった。怖いもの知らずだった。雪菜とかずさを『平等にひいき』してた。ただ単純に二人のことが好きだった。”どっちも好き”でも問題ない”好き”だった。
けど、今は…二人のことを好きでいることは許されない。”どっちも好き”と無邪気に口にするには、俺たちは、大人になりすぎた。

これを認めて、かずさへの一目ぼれも恋愛とかいうより、憧れに近いものなんだとすれば、本当に春希は悪くな”かった”のかもしれない、とも思ってしまう。もちろん春希がやったことは悪くないのだけれど、始まりは、始まりだけは悪くなかったという意味で。

 

「結局、親友にはなれなかったけど…そうしてしまったのはあたしだけど」「だから今は…敵にだけはなりたくない。絶対に、なっちゃいけないんだ」「雪菜は…今でもかずさのこと、親友だと思ってる」「やめろ、やめろ…それ以上言うと、雪菜だけじゃなく、あたしも苦しむことになるんだから」

不倶戴天の敵になる前の、まだならない未来があったころの話。まだ親友と未来もあったよ、春希次第だったけど…二人に対して平等でいようと今ですら思ってるじゃん、二人とも苦しめてるじゃんと思ったり。

 

「だから、仲直りしたら、もう二度と離すなよ? あ、ただ…部屋に連れ込むときはワンコールだけしてくれ。そしたらあたし、一晩出ていくから」

浮気ルートの伏線となる最低の言葉。だが最高に必要。

 

「だから、遠くからでもいい。かずさを見たかった。本物のかずさに、もう一度会いたかった」「わたしのこと、許してくれないかもしれないけど。今でも彼のこと、諦めてないのかもしれないけど。だからも、親友じゃないのかもしれないけど」

雪菜だけが本気で、諦めず親友でいることを願っているっていうのがわかる。雪菜Trueに向けて。

 

そんな、雇用関係にある人を抱きしめて、笑顔と涙を一緒に見せるなんてあり得なかった。俺だって、そんな前向きな涙は見たことがなかった。だから、心が温かくなると同時に、胸を搔きむしられるくらいの嫉妬心すら抱いた。だって俺は、かずさを泣かせたことはあるけれど、でもその時、同時に笑ってくれることなんかなかったから。

柴田さんとのエピソード。春希のこの感情はもう完全に恋だよ。春希は気づいていないふりをしてるけどさ。

 

「なにもかも、あたしが初めてなんてさ。ほんと、最低だよな。………ざまぁ見ろ」

かずさと第二音楽室にて。ほんとは全部書きたかったけどあまりにも膨大だし。この直後、もうちょっと早くメールしろよ、なんで今なんだよ雪菜っていうかずさの叫びも好き。もっと遅ければ間違いを犯すことができたのに、もっと早ければ親友を裏切らなくて済んだのにって。

 

「でも、別にいいんだ。コンサートに来てくれれば、それでいい」

ただそれだけなのに、このコンサートの演奏で、すべてを決別する決心がついてたのに、ほんと春希の弱さのせいで。かずさの決心から雪菜の肉体へと逃げたせいで。

 

雪菜を抱きしめながら、その視線はまた、さっきと同じ場所を向いてしまう。

交わっててもずっとかずさのことを忘れていない春希。でもこのあと本心から雪菜が喜んでいたのだとすれば、すればだけど、それはそれほど気にするかずさを捨ててまで来てくれたからかなあ。

 

「ま、本当にわかってるかって言われると自信ないけど…でも、ミスもほとんどなかったし」「うん、それはあたしにもわかった、本当に、CD聴いてるみたいに正確でさ。なんか安心して聴いてられる感じ」

最低な誉め言葉過ぎて辛い。かずさがこの後暴れるシーンよりも、曜子のわたしがタクシーに乗るのよっていうのよりも、ずっとずっとこっちの方が辛かった。

 

「そんなの…あたし、耐えられないよ…お前に…お前に嫌われたらあたしは…っ、嫌だよそんな…そんなのやだよぅ…ぅ、ぅぅぅ…っ」
「今だけでいいんだ…今だけ、あたしを愛してくれればいい」

冬馬邸にて。これも全部載せたいけど。母親も、ピアノも、何もかも失ってしまって、壊れてしまった。雪菜には罪悪感があるし、もう心の拠り所は春希だけになってしまって。

 

 

ーノーマルー

「雪菜を、愛してる」「雪菜を、世界で一番愛してる…」

ほんまか?としか言いようがないが、ノーマルエンドを彩る台詞の一つだし。

 

「もしさ…もし、あたしの来日が、日本公演なんかじゃなくて、ただ、逃げてきただけだったらさ…」「え…?」「もしあたしが、ピアノでも失敗してさ、落ちぶれて、失意のまま帰国してたとしたらさ…」「かずさ…」「そんなあたしを憐れんで、お前は、抱きしめてくれたのかな?」「っ…」「同情で、キスしてくれたのかな…?」「ならなかったんだよ…」「そういうこと、ならなかったんだよ…だから、考えるだけ、無駄だよ」

これどっちが残酷なんでしょう。もしなってたらの答えとしては認めているようにしか聞こえない。間のかずさ…がもうそれ以上言わないでくれ、辛いからやめろとしか聞こえない。

 

追加公演は、彼女の体調不良を理由に一方的に中止され、しばらくは本人と冬馬曜子事務所を批判する声がうるさく湧き上がっていたけれど…それでも何事においても熱しやすく冷めやすい日本人は、一月もしないうちにその話題を口にしなくなり。今は冬馬かずさという名前は、日本においてもドイツ語、または英語表記だけで、漢字で書かれることはなくなった。

これどっちなんでしょう。1周目は曜子さんのことなんて知らなかったから、海外での活躍と思ってたけど、たぶん活躍とはほど遠い、惰性で、食うためだけにごまかしてやってる状態なんじゃないかな。そう思うと、当初はまあ及第点エンドか(春希的にね)と思ってたけど、えげつないENDだなと思った。

 

「私の気持ちは、変わらないよ、幸せに飽きたりしない、絶対に」

かずさのことを引きずる春希への救いの言葉。結局みんなを傷つけている最低の結末。自分だけが救われる最低の結末。

 

なぁ、雪菜…多分俺は、ずっと忘れられない。十年も、二十年も…このされない気持ちを引きずっていく。ずっと、愛する人を裏切り続ける。ずっと、愛する人の傍らで。ずっと、愛する人と一緒に。それでも…生涯ずっと、君に対して最低な気持ちを抱えたままでもさ…いまわの際には、君のことだけを想い、君だけを見て生涯を閉じて見せるから…だからごめん、雪菜…俺、あいつへの未練をこれからも引きずるよ。けれどその代わり、ずっと、君のことを愛する。絶対に、幸せにする。

そしてまた雪が降る。馬鹿野郎。目の前の人を一心に愛せもしないのに、そのことに気づいたその人を幸せにできるわけないじゃん。ああ気持ち悪い。どのルートよりも、浮気ENDよりも気持ち悪い。

 

ー浮気ー

「憐れみ、なんだからな? 今のお前、そうなんだからな?」「そう、思ってろよ。それでいいんだから」

春希はきっと自分と関係を持つことで壊れてしまう。春希を愛しているからこそわかることで、だからこそ今まではこんなことしなかったのに、もう自分が春希なしでは生きる希望すら持てないとわかってるから…どうしてそんなに献身的なんだよ…と泣きながらシーンを見ていた。

 

必死に、ひたむきに…けれど拙く、ただ必死なだけの、色気も何もない、下手くそなキス。俺が、いつもしているキスとは…何もかも、違う…
「痛くない、よ、あたし。お前…ヘタクソじゃ、なくなっちゃったなぁ…っ」

5年前はキスはもううまかったけど、セックスは下手だったのにね。もう何もかも変わってしまったんだなあって。二度もそんな気持ち味わわされて、かずさが不憫で仕方がない。

 

本当に、好きなんだ。ケチケチしてる雪菜が。所帯じみてる雪菜が。生活臭漂う雪菜が。家庭的で、こんな俺をもほっとさせてくれる雪菜が、心から、愛おしいんだ。

もうお前気持ち悪いし、心配だよ。だってもう壊れてるよ春希。二人ももちろんだけど、春希も見てて心配だもん。

 

「ごめん…ごめん、ごめん…春希。許して、許して許して………雪菜、ぁ」

時間を暗号にしたメッセージ。出ていったと見せかけて、二人の行為を聞いて自分を虐めるかずさ。自ら拷問を受けようとする…最低だよお前。でも今思うと、もう春希がこの時点で壊れかけてたんだろうな。二人を幸せにしようとして、それが叶わないとわかっても藻掻いて藻掻いて、その結果唯一、叶いそうに見えたのがこれだったんだろう。きっと春希は賢いから普通なら叶わないと理解できていたけど、もう無理だったんだろうね。頭が正解を導きだせなくなってしまった。現実を拒んでしまった。5年もの月日が春希を蝕んでたんだね。実際、そのあと、不意にかずさにコンサートへ来なかった事実を話されて、パニックになってるもんね。すごいなあ。この段階から伏線的になってたのか。焦ってるだけのようにも見えるけど、春希らしくないもんな。

 

「春希、お前はもう悩むな。もうなにも考えるな。いちいち苦悩することが、お前の最大の欠点だよ」

かずさからすれば最大の赦しなんだろうけど、悩むことで自分を傷つけ、そのことで自我を保てていた春希からすれば、止めなんだろうなあ。悩むな、嘘をつけ。きっとその言葉は自分にだけそうしろって言ってるんだろうけど、でも同時に雪菜にも嘘をつかざるを得ないわけで…だったら嘘とわかってくれてるかずさに”溺れて”しまうしかないわけで…

 

「顔が好みだったからだよ! 一目惚れだよ!」

ここの一連のシーンは大好きだけど、これまた多いので抜粋。冷静になってみると最低なだけなんだけど、でも一目ぼれだよ!のシーンは号泣しちゃう。このシーンはなんで泣けるかいまだに頭で整理できない。それほど素晴らしい。

 

「今、留守電聞いた。…もしかして、あたしのせいか?」「………何言ってんだ。それどころじゃないだろ。何で、お前…」「ん…?」「どうしてここにいるんだよ…?俺、俺………言ったよな、今日」

4番を告げたのに、隣室にいたかずさ。それも今までもずっと。プレイヤーとしての私はその事実を知っていたわけだけど、やっぱり泣いちゃう。かずさと、それに春希の絶望がちょっと伝わってきて。

 

「雪菜はさ…自分を選んだ数百人の男の中からお前を選んだ」「けどあたしはさ…最初からお前一人にしか選ばれなかったんだよ」

ずっとかずさ派だったけど、確定づけたのはこの一言だと思う。多分。

 

「別に慌てなくても大丈夫。三月いっぱいまでなら、雪が積もってるところなんか、日本にはいくらでもある」「三月…?」

春希がついに壊れてしまった。この直後の「春希…もうやめ…」っていうかずさの悲しそうな声が私を突き刺しにして辛い。

 

俺が、日本を捨てる? 何もかも…捨てる? たった一つ、大切なものを手に入れるために? それは本当に、選択可能な道なんだろうか? 世界でたった一人くらいは、自己満足を感じられる未来なんだろうか?

本当に可能なんでしょうか。今見ると、かずさTrueが頭をよぎっていいなあ、このセリフってなる。

 

「だからお前には…お前にだけは、聴かせられない。…悪い」だから弾けない。かずさが作った曲なのに…だってあの曲はもう…雪菜の、ものだから。

ここで弾けないからこそ、春希なんだよな。優しすぎるんだよ。誰に対してもじゃなくて、雪菜とかずさに対してだけ。そして自分に対しては優しくなさすぎる。

 

「なんてな…お断りだ。あたしはお前と一緒に行けない」

二人の別れは言い表せないのでいくつか抜粋。

POWDER SNOWから始まる別れ。2周目だからこその別れだなあ。

 

「あたしのために全部を捨てるって…?一緒に地獄に落ちるのも厭わないって…?」「そんなのがそんなぶっこ割れたお前が、本物の、あたしの春希であるもんか!」「そんないい加減な嘘に騙されるもんか! あたしの気持ちを馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

そして心はいつもあなたのそばに。前回したときには気づかなかったのに。春希がccで雪菜に歌を捨てたのは本当の雪菜なのか、って聞いたのと同じように、かずさも同じだったんだ。周りを捨てて、何もかも捨てて、武也も依緒も、仕事も、そして雪菜も捨てて、地獄に行くなんて、そんなの春希じゃないって。でもそんな未来もあるからこそいい。このルートは壊れてしまってかずさを、雪菜を、愛しきれていない。

 

「でも壊れてく! あたしといると春希がどんどん壊れていくんだよ!」「春希が普通の幸せをつかんで、笑顔のまま、長い人生を歩いていくことに比べたら、あたしのその場限りの幸せの、なんてちっぽけなことか」「人の幸せを望まない春希なんて…好きな人の心配をしない春希なんて…やっぱり、本物の、あたしの春希なんかじゃない…」
「帰るんだ…雪菜のいる世界に」
「…想いの差なんかじゃない。気持ちの強さだけなら、負けない。負け惜しみだけど、これだけは譲れない」
「だってあたし、雪菜のこと嫌いだから。今日から不俱戴天の敵だから」

他でもない春希を救うために、今日から二人は不俱戴天の敵となる。この世で一番好きな親友と好きな男と離れる。

 

きっと、俺と二人だけの閉ざされた世界に入るため、かずさはこんな凄いものを、ずっと隠していた。

春希をもとの、春希を幸せにする世界へと連れ戻すため、春希と雪菜の二人のためだけにコンサートに挑む。春希と自分は釣り合わないって、あたし達には何もなかったって演奏で証明するってどれだけ不器用で、どれだけかずさらしいんだ。

 

「今頃お客さんたち大ブーイングだよ? …本当に、迷惑かけてくれちゃって」

春希を追いかけてアンコールをぶっちした雪菜。あんなに裏切ってもなお…だから浮気ルートの後、雪菜Trueがいいんだよ…こんなに雪菜がおせっかいで、おせっかい焼きが好きなのは誰に似たんだろう。

 

「だってわたし、かずさのこと嫌いだから。不俱戴天の敵だから」
「一週間で、必死になって一年分泣いたの。だから一年間は頑張れるって自身があった」
『わたしを忘れて克服するか、わたしと一緒に克服するか、今の春希くんには、そのどっちかしかないんだよ?』『わたしにとってどっちが幸せか、春希くんには、わかるかな?』

もう親友じゃないと認めて、不俱戴天の敵だと認めて、吹っ切れた雪菜。なんて強い人なんだろう。雪菜に惚れないなんて人じゃないと頭ではわかってるんだけど、それでもかずさのことがいっちすっき。

 

ー不俱戴天の君へー

「私の、たった一つの希望を奪う権利なんて誰にもない」

曜子さんから自身の脊髄を移植しようとするかずさへ。不俱戴天の君へで本当に愛してたんだなって初めて理解できる、心から。

 

「そんなわけで、今までお前が俺に言ってくれたことは、いつも正しかった。…少なくとも、俺の判断よりはな」「それでも、自分で決めろ。俺に聞くな」「…念のため言っとくけど、今じゃないぞ? 決めるのは、もう少し先のことだ」「先っていつだよ…いつなんだよ…」「そうだな…自分がこうするって決めたことが、迷った末、悩んだ末の結果だと信じられるとき、かな?」「…『迷ったって信じられる』って、なんか変だな」「もし、その時が来たらさ…迷えるようになって、悩めるようになって、何かを決断する時が来たらさ…最初に俺に話せ」「お前が決めたことなら、俺に文句は言わない…なんてこと言うわけなからな。昔のお前みたいに、指図しまくってやる」

落ち込む春希に対し武也から。これすごくないですか?認める訳でも、咎める訳でもなく、ただ春希に感謝を伝えるだけ。今の春希を認めるだけ。過去の春希を認めたうえで、未来の春希とのつながりを保証する。最高のかけ言葉なんじゃないか?

 

「ずっと愛していたはずの雪菜を、裏切った…」そう、だからだよ…だからわたしは信じられるんだよ。変わらない気持ちが、色褪せない想いがあるってことを。五年もかずさを忘れなかったあなたが側にいるから、信じられてしまうんだよ…

たぶんかずさがいなければ、二人はこんなに愛し合ってなかったと思う。だからこそcodaノーマルでは破局してしまったんだし。春希がどちらと愛し合うにせよ、もう一人の存在まで愛することで、その人を深く愛するようになる。愛が数値的に分配するものではないという、尊いものだと伝わってきてイイ。

 

「コンチェルト、だって…?」ピアノコンチェルト。オーケストラとの、協演。つまりそれは、コンサートを開くか、それともオーケストラを借り切るか…

一匹狼のかずさにとっては難題で、かずさ自身は途中まで一人でやらなくちゃと思ってたけど、不俱戴天の敵である雪菜と、それと周囲の助けを借りて大きく成長する。ざまぁみろが際立つ…

 

「わからないわけないだろう…俺が、今の雪菜の状態に気づかないわけないだろう…」「だって今の雪菜は…半年前の、俺だよ」

優しい春希だからこそ、自分が窮地にあったとしても愛するものの異変だけは見逃さない。

 

「頑張れ…がんばれ、がんばれ、がんばれかずさっ」「言われなくたって、なってやる。お前たちの、手の届かない存在になってやる」「そして…あたしと絶交したこと、一生後悔すればいい」

かずさと雪菜の最後の会話は全て泣けるし、全て大切なんだけど、多すぎるので1ピックずつ。

 

「昔の彼も、今の彼も、そして、未来の彼も、全部。だから、一緒に歩いて行きたいの」「………それも、できれば一生」

すっごく好きな言葉。昔も今も、そして未来までも含めて彼が好きって。

 

今までは、焦ってた。一刻も早く、元の春希くんに戻って欲しいって。真面目で頑張り屋なカッコいい社会人に。わたしを愛してくれる、素敵な男の人に。でもね、でも…完全に、戻らなくてもいいじゃない。一生掛けて、ゆっくり治してもいいじゃない。一生掛けて、ゆっくり振り向かせても、いいじゃない。完治するのが、二人のいまわの際だって、いいじゃない。ついでに、わたしも引きずり込まれても、いいじゃない。って、それはちょ~っとマズいかな?とにかく、二人でのんびり戦っていこうって。のんびり、愛し合っていこうって。そんなふうに、激しくなく生きていこうよって。彼に、そう言って、もう一度押しかけ女房するつもり。だから…今まで心配掛けてごめんね、お父さん。これからも心配掛けるけどごめんね、お母さん。雪菜は…不誠実なあの人を。…ううん、わたし以外の女のひとに、ものすごく誠実なあのひとを愛していきます。これからもずっと。

これはノーマルと対をなす言葉だと思うんですが、二人を見ながらひとりを見ていく過程と、一人から自分へ振り向かせるっていうのはまったくもって意味が違うんだということがわかります。

 

「ざまぁみろ!」最後の最後に、今の彼女にとって、異国の言葉を残した。
「わたし、かずさとは永遠に敵同士なんだなって。…あなたのせいで」それはきっと、決別のメッセージ。それも、とびっきりの愛を込めた、特別な。

ざまぁみろ!春希!こんなにかずさは凄くなったぞ!不俱戴天の君へ。

 

ー雪菜ー

だったらどうして俺は、自分に『大丈夫』と言い聞かせてるんだ…? 『大丈夫』は、相手に言い聞かせるための言葉だろ? 彼女(せつな)を、安心させるための台詞だろ?

cc雪菜での一言とあわせて生きてくる台詞。これだけみるといきなり雪菜Trueやりたくなるけど、さすがに…

 

「本当は、わたしにこんなことする資格なんかない。でも、どうしても許せなかったの」それほどまでに雪菜が、自信の恥も省みず俺を責めたのは…「だって、春希くん…逃げてきたよね? かずさのコンサートから、逃げてきたんだよね?」あろうことか、かずさのためだった。
「終わらない、まだ終わってないよ。わたしたち三人、こんなことじゃ全然終わらないんだよ」

ずーっと、3人にいたいと思い続けてたのはやっぱり雪菜。強すぎるよ。

 

「お前の口から、あたしの知らない女の話聞かされて、冷静でいられるわけなんかないだろ…」
「お前は最低だ、春希。………だから、意地でも嫌ってなんかやるものか」

はい、かわいいかずさ。

 

「病気なんかにナメられてたまるかってのよ。冗談じゃない。戦うよ、わたし」

春希と同じく、尊敬、畏怖的な意味で印象的。

 

「人にはね、ギリギリのところで手を引く弱さも必要なのかもしれない」「どうにもならないことをどうにもならないって嘆く弱さも必要なのかもしれない」

春希がかっこよくて、クソみたいな男である理由を端的に教えてくれる人生経験豊富なお方。

 

「いつもお世話になっております。わたくし、ナイツレコードの…小木曽と申します」

ようやくかずさと雪菜が再開できて大泣きのシーン。

 

「もし自分のお母さんが重い病気だって知ったら…お父さんと、孝宏と…みんなで大泣きするだろうな」「泣きながら夜通し話し合って、けど何も決められなくて、なのにお母さんの病室に行くと、みんな笑うんだ。真っ赤な目をして、けれど、必死に笑うんだと思う」「病気のこと、とっくに本人にバレてるのに、誰もがそんなことわかってるのに、それでもかずさの言う『家族』を演じるんだと思う」「そしてもし、もしもその日がきてしまったら…きっと、かずさと同じように、世界の終わりが来たみたいな気持ちになると思う」「悲しくて、悲しくて、いつまで泣いても涙が溢れて、だからもう、何も考えたくなくて」「でもね、良くも悪くも、そこで終わりじゃないんだよ?」「看取ってくれたお医者さんにちゃんとお礼を言って、葬儀屋さんと打合せして、式場を押さえて、親戚みんなに、お通夜とお葬式の日取りを連絡して」「お葬式の日も、色々と忙しくって、親戚や知り合いが来たら一言二言思い出話をして、葬式終わっても、香典返しのリストを作らないと」「本当に辛いんだよ? 何もしたくないんだよ? それでもわたしたは、わたしたちは、人と触れ合わないわけにはいかない」「けれどそれは、嫌なことばかりじゃない」「そうやって人と話しているうちに、世界が壊れてしまいそうな悲しみが少しずつ癒えていくから」「人とつながっているうちに、ゆっくりと、世界が修復されていくから」
「違うよ、かずさ…違うんだって「何が違うんだよぅ…っ! 誰も、いなくなってしまったじゃないか! あたしの愛してた人が、みんな…!」「いなくなったなら呼び戻せばいい! 世界が壊れたなら、もう一度作ればいいんだよ!」「作り直せば、いいよ。あなたには、それができる。…神様から、そういう力を授かってる」「今までだってやってきたじゃない。あなたの周りの世界は、あなたが自分の力で作ったものだったじゃない」「あなたのピアノが春希くんに届いたから…その音につられて、春希君はギターを弾いた。そして、その音たちにつられて、わたしは歌った」「あなたが春希くんを世界に招き入れたから、彼が、一度離れていったお母さんを連れ帰ってきた」「そうやってあなたは、自分の周りの世界を作ってきたんだよ。全部、自分の力で成し遂げてきたんだよ」「あなたのピアノには、そういう力がある。人と人とをつなげる、強い力があるんだよ」「人を感動させることのできる、人に力を与えることのできるそのピアノで、あなたはこれからも、世界と触れ合っていくんだよ」「そうやって、大切な人、たくさん作るんだよ…」「お母さんだけじゃなく、春希くんだけじゃない…もっとたくさんの、あなたを好きな人たちを、あなたの世界の中で、遊ばせてあげようよ?」「そしたら、そしたらさ、いつか、わたしも…」「一度はあなたの世界から出て行ってしまったわたしだって…もう一度、あなたの世界の輪の中に…」

雪菜Trueで断トツ好きなシーン2つ。雪菜の強さとかずさの弱さの対比。けれど本当は誰よりもその強さを持っていたのはかずさだったという対比。これからの未来が明るいことの示唆。世界を広げられるのは雪菜が、風穴をあけるからだと思う。

 

「あたしたち三人が揃ったら、できないことなんかないんだぞ?」

かずさが言ってくれたら、ああやっと三人に戻れたんだって感じられて神。

 

「………つまり、この国にいない理由もなくなった。これからも、よろしくな」

ウィーンで才能を伸ばして欲しいって気持ちはなくならないけど、でもまあ泣くよね。

 

「さようなら…あたしの愛した春希」「そして、これからもよろしくな…あたしの大好きな春希」

codaの、WA2の終結。かずさの一生に一度の恋を、初恋を、最後の恋の終わり。

 

ー幸せへ続く道ー

「あと少ししたら、もう『春希くん』って呼べないから。あなたのこと、『お父さん』って呼ぶようになるから」「だから、今のうちに一生懸命呼んでおくね? 春希くん、春希くん、春希くん……おめでとう。それと、ありがとう」

春希、雪菜、おめ!

 

 

ーかずさー

「それでも…行くよ。ピアノ、弾くよ」「あいつ…聴かせろって言った。あたしのピアノ、聴きたいって言ったんだ…」「ならさ…祝福の曲、弾いてやらないと、さ」

そりゃ、こんな気持ちで日本に来て、コンサートぶっちされたら壊れるわ。

 

「どうしてあたしが無防備かって…?」「それはだな、お前に恋人がいるって知ってるからだ。あたしなんかを求めたりしないって、知ってるからだよ」「逆に聞きたいよ、春希…お前はどうしていつも、あたしの目の前で無防備に眠るんだ…」「こういう状況で、あたしが何度惑わされたか知ってるのか? …一度なんか、間違ってしまったんだぞ?」
「恋なんか、とっくにしてるに決まってるじゃないか」「最初から…あの学園祭でステージに上がったときから…ずっと、してる」

自分のことはわかってるのに、恋愛に疎すぎるかずさ。春希がかずさの近くにいる理由、いたい理由なんてわかりきった唯一つしかないのに。

 

『春希…聞こえてるか? ええと…冬馬、かずさです。ま、わかってるとは思うけどさ』そこから流れてきたのは、俺が知っているはずのあの言葉じゃなかった。『現在、1月25日、金曜の午後2時。お前と合流する少し前。…今から付属に向かうところだよ』それどころか、俺には録音した覚えのないメッセージ。『昨日お前、あたしの部屋にこれ忘れてったろ。なんて凡ミスだ。まったく呆れる。仕方ないから、こっそり返しといてやるよ』インタビュアーではなく、インタビューイが仕掛けた、ほんのちょっとしたイタズラ…『けどその前に、ちょっと時間差でメッセージ…お前の返事とか聞くつもりないから電話はしない。…そのくらいは、許してくれるよな』『ええと…これから先は推定の話になるんだけど…』『あたし、さ…今からお前に、告白する。そして、玉砕すると思う』イタズラ、じゃなかった。そんな生易しいものじゃ、なかった。『わかってるんだ、お前には雪菜がいるって。だから、あたしを受け入れられないって、そんなこと最初からわかってるんだ』『けどさ、けど…それでも、もう一度だけ、あたしは雪菜を裏切る』『春希に、今の本当の想いを伝えられたらって…あたしの五年間、わかってもらえたらって…そんな都合のいい夢が、まだ捨てられないんだ』『雪菜にとっては酷い話だけどな…後で謝っておいてくれよな? 春希』『それでさ…もう、聞いたんだよな? あたしの告白、全部聞いちゃったんだよな?』『笑っちゃうだろ? 全然似合わないだろ? 馬鹿かお前はって思うよなぁ?』『だって、だってさ…あたしみたいなのが…』『あたしみたいな、ピアノしか能がない、他にはなにもできない欠陥品が、お前みたいな普通の男、好きになるなんてさ…』『五年前の、あの時から…ずっとずっと、忘れられてないなんてさ…』『………なんてな。今さら言ってもしょうがないことだ。忘れてくれ』『…じゃなかった、今のは嘘だよ。その時のあたしもそう言っただろ? お前を、からかっただけだよ』『だから、だからさ、春希…』『その時のあたしもそう言ったと思うけどさ…コンサート、絶対に来てくれよな?』『雪菜と、一緒でもいい。いや、ぜひ雪菜と一緒に来てくれよ』『そしたらあたしは、お前の…お前たちのためだけに、一生懸命に弾いてみせるから。自分でも、最高の演奏ができるって自信があるから』『だってあたしは、お前たちの結婚式には行けない。…距離も、心も、行くには辛すぎるから』『だから明日のコンサートが、お前たちへの、最後のプレゼントになる』『来てくれる、だけでいい。そしたらあたしはもう、お前のこと諦めるから。その日限りで、お前への想いを昇華するから』『だから、その日だけは…コンサートの時だけは、あたしだけを見ててくれ』『お願い、します』『………追伸』『人の寝顔を勝手に撮るな。お前じゃなかったらぶん殴ってるところだ』『じゃあ、な』

ほんのちょっとしただって。あの春希が、重なった意味の言葉を使うほど同様してやがる。冬馬かずさからのイタズラ。これを聞かなかったことがありがたい。聞いていたらきっと春希は雪菜と結ばれてたし。

 

そうやって、いつまでも堂々巡りを繰り返し、今日という日をやり過ごそうとしていた俺を…神様は、許してくれなかった。とうとう、降ってきた。ずっと三人でいることを誓い合った日にも。三人から二人が抜け出してしまった日にも。二人から一人が去り、一人と一人が残されてしまった日にも。一人と一人が、もう一度二人になろうとして、けれどどうしても許し合うことができなかった日にも。一人と一人が、何度もお互いを傷つけあった末に、今度こそ、心の底から二人になろうと誓った日にも。そして今日…ああ、そうなんだ。やっぱり、今日なんだ。今日が、俺の人生の…そして、三人の分岐点なんだ。今日、俺がする決断は、俺の周りの沢山の人を巻き込むことになるんだ。だって、あの時からずっと。俺の運命が転がり始めるのは、必ず冬だった。その日には、雪が降っていた。いつも、降っていたんだ…雪が、滲む。体も心も搔き毟らんばかりの痛みが、俺の眼頭までも襲ってきたから。どうして…どうして、かつて結論を出したはずのことで、こんなに迷わなければならないんだよ、俺は。何が正しいのか、わかってる。正しくて、尊くて、嬉しいってわかってる。それなのに俺は迷う。だって、これが最後の決断だから…かずさは決められないから、だから俺が決める。ただ一つだけの、俺の気持ちに従う。…世界で一番大切な人を、選ぶ。俺は、誰を幸せにしたいんだろう。誰となら、間違えても後悔しないんだろう。これが最後…もう二度と引き返せない、最後の決断。考えよう…この雪が、終わるまで。だから、できれば…せめて、朝まで降り続いてくれ、雪よ…

icがあの回想から始めるなら、codaはこの回想から始めるともいえる。複数ルートだからそんなことはないんだけど、WA2ももう終わりだなってやつ。泣いて雪菜にかずさを助けてって頼む選択もいい。雪菜Trueでも同じセリフはあるけど、かずさ派ということで。

 

「お前は昔からそうだ。わがままで、だらしなくて、人として間違ってて…見てて、イライラする」「しかも悪い女だ。性格も、態度も、そして諦めも。お前のいいところなんて見た目とピアノの腕だけじゃないか!」「お前、見た目キンキラキンだけど中身は腐ってる。いくら才能だけ認められても、社会人としては失格だ」「そんな最低なくせに、俺なんかを好きだなんて最低の上塗りだよ。そのせいでどれだけ俺が苦しめられたかわかってんのか」「だから、お前みたいな奴は世界に弾かれて当然なんだ。才能の上にあぐらをかいて、社会と馴染もうとしない、人としては、本当に未熟な奴だから…」「かずさ…お前は本当に駄目な奴だ」「誰かに支えられてなくちゃ生きていけないくせに、頼ろうとする相手を選り好みしすぎて自滅して…」「俺と曜子さんの両方ともいなくなったら、どうやって生きていくつもりだったんだよ!?」「お前がこんなにも駄目な奴だから、どうしようもない弱い奴だから…」「だから………俺がなんとかするしかないだろ?」「俺、さ…そんな最低なお前が好きだ。…世界で、一番好きだ」「お前が幸せに生きてくれないと嫌なんだ」「お前が幸せになるために…いや、お前が生きていくために、俺が必要だって言うのなら…」「俺は、お前の側にいる。…たとえ、全てを捨てることになっても」

雪菜に頼らず、すべてを捨てて、かずさを、愛する女を幸せにする。このすべてを捨ててっていうのが最高なんだよ。私は不貞を働くこと自体よりも、不貞を働いた末、誤魔化すことこそが大問題だと思ってて、もし文字通りに全てを捨てる覚悟があるのであれば、不貞は容認できる。何かを手に入れるために、何かを捨てなくてはならないなんていう考え方なんて大嫌い。だけど何かを捨てたとしても手に入れなくてはならないなにかを手に入れるために、すべてを打ち捨てるのは、この上なく尊い。何かを捨てなくては手に入らないものは尊い。理屈じゃないんだよ。

 

「もう…雪菜と会わないで」「春希…雪菜を、裏切ってくれ。そして、あたしを選んでくれ」

上記への返事。何も言うまい。

 

雪菜は、最初から気づいてたんだ。俺が、今日話そうとしている内容を。そうだ…だって俺たちは、今までずっと繋がってたんだ。掛け値なしに、心を通じ合わせていたんだ。だから、雪菜にはわかってしまっていたんだ。俺の周囲に吹き荒れていた嵐も。俺が隠し持っていた残酷な刃も。俺が、かずさを嵐から護るために、二人にとって一番大事なものを、刃で断ち切ってしまおうとしていることが。

複数ヒロインから一人を選ぶ展開ってありふれてるけど、ここまで心からごめんって、ごめんなんかじゃ言い表せないくらいの罪悪感をもつのは他にはない。雪菜が好きなのも私や春希からしたら真実だし、すべて嘘にしちゃうのも真実だし。またやっぱり雪菜にはみんながいるんだよな。いくら春希のために全て捨てられるって言っても、雪菜は友人も、家族もいる。捨てられないものがたくさん守ってくれる。捨てようとしても捨てさせてくれない。裏切っていい理由にはならないけれど、裏切る理由にはなってしまう。かずさTrueを最後に回す理由は、かずさ派だからであると同時に、最もかずさTrueを味わうには雪菜を最も好きになった状態である必要があるからでしょう。ノーマルは雪菜ノーマルに、浮気はかずさノーマルに相当するはずだけど、かずさノーマルですらかずさとは結ばれず、雪菜と結ばれるのはかずさTrueでプレイヤーがもっとも傷つくためである。

 

「もしお前が壊れたら、今度はあたしが護るからな」「それがあたしの、次の生きる目的になる。だからお前は、壊れても壊れなくても、ずっと、あたしの側にいてくれ」

別にかずさに守ってほしいなんて、これっぽっちも思ってないけど、愛する人が自分のことを守ろうと思ってくれているのはこの上なくうれしい。

 

「………もし三人で背負ったら、俺はもう、二人のうちからかずさを選べなくなる」

ここ周辺の武也の親友としての態度も泣けるし、この決意も泣ける。二人のうちから雪菜を選べなくなる、と思ったのが雪菜Trueなんだろうな。

 

違う、違うんだ、雪菜…かずさだって、まだ雪菜のことが好きだ。ずっと、好きなままでいたんだ。でも…違うんだ。雪菜の『三人』と、かずさの『三人』は違うんだ。雪菜の求める『三人』には、周りに広い世界がある。自分たちを取り囲む暖かさや、優しさや…時には厳しさにみんなで触れながら、大きく広く、正しく生きていく、そんな生き方だ。でもかずさは、違うんだ…5年間、どれだけ世界を広げようとしても駄目だった。曜子さんと、そして思い出の中にしか居場所を見つけられなかった。ピアノはかずさを広い世界に知らしめた。けれどピアノは、広い世界をかずさに与えられなかった。…かずさが、拒絶したから。雪菜が樹木なら、かずさは浮き草だ。地面に根を張って強く生きていくことはできないんだ。地面と、世界と隔絶したところで、水から少しずつ栄養をもらって生きていくしかないんだ。好きか嫌いかじゃない。今まで広い世界と触れあって生きてきたけれど、別に、世界(おや)と触れあわずにでも生きていられる俺だけが、浮き草(かずさ)の水(せかい)になれるって…ただそれだけ。

臭い台詞の春希。でもいいよなぁ。雪菜Trueでは、かずさは拒絶しないようになったとは思いません。ただ雪菜が入り込んできて、閉ざされた世界に穴が開いただけだと思う。

 

「あたしは、お前がおあずけをやめてくれるまで…行儀よくお座りして、一生懸命しっぽ振って、今か今かと待ってるだけなんだからな?」

はい、かわいい、萌死。

 

「そうだよ、好きだったんだよ、雪菜のこと!」「春希が…お前さえいなければ、あたしたち、本当の親友になれたかもしれないのに」「…ううん、お前がいなければ、そもそもあたしたち、出会うこともなかったもんな」「お前があたしと雪菜を繋いだ。そして、お前のせいで断ち切られた」「………恨む、よ」

一生の親友になるか、不俱戴天の敵になるかのどっちかだ。

 

「こんなの、誰にも知られたらいけないの! 明日…かずさのコンサートなのに!」

支離滅裂になっても、かずさと春希のことだけはずっと覚えていられる想いの強さ。そして死ぬかもしれないのに、二人を気遣う愛。エピローグで曜子さんから覚悟しろって言われたとき、寝たきりかもなんて思ったけど、さすがにそこまでひどくなかった。

 

駅まで、あと数歩というところで、それは降ってきた。いつも俺たちの分岐点に現れ、辛いこと、悲しいことを時期限定で埋め尽くす、白い幕。白くて、儚くて、優しくて…けれど厳しい寒さを、冷たさとともに運んでくる。雪菜は…。大丈夫立って強がっていたけれど、寒い海風に吹き付けられ、今度は雪にまで覆い尽くされようという、雪菜は…俺は、もう、雪菜の側に寄り添えない。自分で、そして雪菜に言ってもらったじゃないか。やっぱり、降ってきた。一番大切なものを手に入れるために、一番大切なものを切り落とした日にも。まるで俺の罪を消そうかとするかのように、記憶から覆い隠してくれようとするかのように。雪が、舞い落ちる。幸せになって、幸せになって…雪菜。俺の、一生掛けてのお願いだ。もう、俺がそれをかなえることはできなくなってしまったけれど。それでも俺、ずっとずっと、願っているから。もし、辛いことが会ったら、悲しいことがあったなら…俺を思い出してくれ。強く恨んで、激しく憎んでくれ。怒りを、力に変えてくれ。君を立ち直らせる、力に。俺を否定する心が…俺がいない、そのことが当然な世界への道しるべとなる。だから、だから…ずっと、俺のこと憎んで、憎んで。そして、暖かさや幸せに包まれて…いつか俺のこと…忘れて、くれ。

WA2に終わりを告げる雪。春希のこの上ない、自分勝手な願い。きっと怒りや憎しみを持った雪菜は自分を嫌悪して、でも許せなくて、それを繰り返して、ようやく立ち直ったときには、二人を許して、また三人でいようと努力を再開したんだろうね。すごい、凄すぎる。

 

そして、俺の思い出した忘れ物も、本当に些細で、取りに戻る必要のないもので。荷物を運び出し、鍵を返したとき、それだけは捨てるつもりで手に持っていたのを、業者に渡し忘れていただけ。多分今ごろは管理会社が見つけて、ちょっと迷惑そうな態度で、適当に処分してるはず。「いいんだよ…」ちっぽけな、ギター一本…だってもう、二度と弾かないから。ギター君じゃ、ないから。それだけは、かずさに求められても、もう二度と手に取らないって決めたから。雪菜に…捧げたものだから。今までの雪菜の五年間と引き替えるには、あまりにもちっぽけで、笑ってしまうくらい不釣り合いな、下手くそな腕だったけど。でも、雪菜はいつも喜んでくれた。俺の拙いギターを、電話口で、目の前で、俺の方で、いつも噛みしめるように、堪能してくれた。だから、これだけは…本当に、これだけは…雪菜との別れとともに、俺の中で、永遠に眠らせて…

今できる、雪菜への、最大限の愛情表現。

 

「なぁ、春希、聞いてくれ…」「あたしはこの国で、三つの罪を犯した」「ひねくれ者のあたしと初めて親友になろうとしてくれた、一度は確かに親友だった、大好きなあのコを、世界で一番不幸な女の子にしてしまった罪」「ひねくれ者のあたしに初めて素直な気持ちをくれた、あたしを素直な女の子にしてくれた、ずっとずっと愛してたあなたを、世界で一番の罪人にしてしまった罪」「そして、そしてさ…」「こんなひねくれ者で、何もできなくて、人を恨んだり妬んだりしかできない、大嫌いな女の子を、世界で一番の幸せ者にしてしまった………重罪」「あたしの今の悲しみや、辛さや、後ろめたさは、どんな嬉しさや、楽しさや、前向きな気持ちでも絶対に和らげることはできない」「けど、けどね、それはね…」「今のこの幸福感は、どんな悲しみや、辛さや、後ろめたさでも絶対に消すことはできないってことなんだよ」「幸せだ、あたし幸せだよ、春希」「やっと、お前の胸の中に帰ってこれたことが。お前があたしのもとに帰ってきてくれたことが」「それが、こんなにも…この世に生を受けてから、一番幸せなんだよ」

春希への一番の報酬だよね、そして私は春希がムカつく。

 

「元気ですか? わたしは、今でも歌ってます」

かずさが初めてウィーンへ発ってから三年間歌ってなかった雪菜は、春希の下手くそなギターでまた歌うようになって、かずさがウィーンから戻ってきたことでまた歌を奪われた。けどそれか2年して、春希以外の、大切な人たちのおかげと、雪菜自身の頑張りで、今でも歌ってるんだ。おめでとう雪菜。ありがとう雪菜。

これコード自体はめっちゃ簡単だけど、2年かかってるっていうのは、2年の間に泣いて泣いて泣いて、あたって、それでも依緒たちや家族が支えてくれて。ようやく立ち直って考えたのがかずさと春希のことだった。急いで練習して、できる限り、それこそ以前の軽音楽同好会の合宿のように一夜漬けして、今また3人でいるためにメッセージビデオを撮っている。神。

 

ー幸せへと戻る道ー

「うわあぁぁぁぁん、春希ぃぃぃ~! やっぱり寂しいよ~!」「お前、お前さぁっ、なに呑気にシャワーなんか浴びてるんだよ! あたしのことほっといて平気なのかよ!」「やだよ、そんな悲しいこと言わないでくれよ……あたしが悪かったよ! 謝るから! なんでもするから! だから、そんなふうに見捨てるなよぅ!」「嫌だ……謝らせろ。ごめん、ごめんな春希ぃっ」

^^

 

「それからも、何度会ったか覚えてないけれど……でも、向こうの娘さんも一緒に説得してくれてね。それで、今は……」

雪菜らしい、優しさと強さいっぱいのエピソード。

 

「…準備、できたってよ」「じゃ、そろそろ行こうか?」「うんっ」

この3人がここに来てくれるまで、どんな苦難があったんだろう。春希がそこに割り込むことはないから、きっと描かれることはないけど、朋か依緒目線で、知りたいな。