えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

妹と彼女〜それぞれの選択〜の感想・考察

 

=全体の感想=

どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!     を彷彿させるお兄ちゃん。

なんかよくわからんけど休みテンションで買ってしまった。WA2、離脱症状用。

まったく同じ顔という設定がいい。顔が好きなのか、妹の性格が好きなのか。

 

値段だけあって結構長め、しかも途中結構ダレるし、文はクドイ。

家族という代替不可能性を押し付ける役職、特に血のつながりがある場合で、それがもし代替可能だったら…そんな問いを考えるうえでやって良かった。そういったことに興味がないならそんなにですかね。
自分という存在が乗っ取られる恐怖というものもあるんですが、それを見るには同じシーンばかりでやっぱりクドい。

陽香編が慧編に追いついてからは好み。死生観というか、命より誇りというものは大切になりうるかという好きなテーマ。ここについては後で詳しく。個人的にはこの描写だけで一読の価値があったと思う。

というか物語の核心に触れるので書いていないけど、面白い部分は考察部分に書いてあるので気になる人は見てほしい。

小説はともかく、ノベルゲームとして同じ状況を繰り返すっていうのはあっているんだろうか?要所要所は面白いのに、商業用、値段にふさわしいボリュームというのに引っ張られたのかなあ。残念。

 

=だらだら=

ー慧編ー

まず良かった点ですが、入れ替わることで愛の向かう方向がややこしい点。入れ替わった妹を愛すれば、その愛は満月に行くが、妹という存在を愛されている幸福は存在する。逆も然り。非常にドギマギして良かった。そしてどれだけ似ていようが、妹という人間性に惹かれていく様もよかった。見た目だけじゃないんだっていうのが。けれど!妹が好きだから世間に認められなくてはという葛藤のため、妹を愛しているという固定観念があってという苦しみ。

次に満月がどんどん”妹”に近づいてる、奪っていく恐怖。

最後、最愛の妹と結ばれる答えなんてものはこの世には存在しないという悲しい事実。陽香のキスシーンなんて最高やで~。にやにやが止まらなかった。正直、人ではなく役割で人を見ていた慧が悪いとしか思えなかったから、そんな辛くなかった。慧だけが完全に悪いわけじゃないんだけどね。

 

不満点は、慧が目の色の違いを気づいていながら、なぜか入れ替わりに一向に気づかないところ。ゲームとしてできるっていうので目の色の違いを導入したんだろうけど、気づかないほど似てるっていう設定にするなら、目の色まで一緒にしてほしかった。そのトリックは定位置が左右入れ替わっている、コーヒーに砂糖をいれないっていうのでよかった。親すらも気づかないっていうのはもう奇跡的な相似なはずなので、目の色まで一緒でも構わなかった。くどい位にそんな描写をいれるてるので余計に。
一方で素晴らしいのはちょっとした「いつもと違うんじゃない?」っていう指摘を察知して、雰囲気に合わせる満月の敏感さの表現。

あとはお風呂を覗いてしまうっていうシーンもあったが、身体の傷に気が付かなかったり。それでさすがに気づかないような描写も増え、結果的には気づいてたんですが、主観的にそれを気づかせないっていうのもどうなんでしょうか。

あとはBGMループが不自然なのも残念。

あと単純に必要でない部分が多い。

 

ー陽香編ー

妹側の入れ替わるという決心がよかった。普通なら考えられない決心だからこそ、それを結構すんなりとしてしまうのは違和感がありながらも、余計説得感も出る。

ちゃんとお金周りについて言及してたのもありがたい。

不満点は、どうして兄に相談しなかったのかという点。冷戦中であり、かつて告白を黙殺されたという過去があったとしても、想いが通じ合っているという確信やがあるのなら、もしくはなくても、そもそも通じ合っていなければ意味がない入れ替わりなのだから、先に相談して、鼻から結婚までできる状態で入れ替われば何の問題もなかったのに。社会的妹という役割でなく、遺伝的妹という役割がネックになっていると考えたのだろうか?

あとは当然、他視点で同じ話を見ているので、少々、いやかなり飽きる。結構飛ばしながら見た。

 

私はここでリタイアだった。満月同棲編が真新しい内容含んでるとわかってても、読む気にならなかった。

 

ー考察ー

慧編に時系列が追いつき、視点が慧に戻ってからは面白かった、というか当初期待していた死へと物語が向かい始めて、ようやく本筋に入ったかという感じ。結局兄としての、妹としての矜持に拘っていながら、それを自ら汚してしまい、生よりも大切なそれを失った二人は死ぬしかないという、プライドの物語。最近では珍しい?誇り>命というのは。

最近のよく巷で言われる誇りっていうのは、一度捨てても生きていれば取り戻せるんだ、だから生きなくてはならないっていうのが多いと思う。世論的に。しかし妹という誇りについては生来的なものであるから、取り戻すことは不可能、一度捨ててしまえば不可逆的である。そうせねば陽香が死んでしまうのなら、慧は妹を生かすために、”妹”を殺さねばならない。

結局のところ、陽香のアイデンティティというものは「兄をこの世で最も愛する妹」というのが核だった。一方で慧は「妹をこの世で最も愛する兄」。しかしながらその愛を叶えるために、慧はこの世の倫理やしがらみというものが問題だと思い(こみ)、つまり愛するという部分が問題になっていると思い、一方で陽香は兄妹であることが問題だと思ってしまった。全く同じ悩みを思っていながら、全く別の正反対の部分を取り除こうとしてしまった。相反となっている、集合をそれぞれ取り除いてしまえば、そこには何も残らない。この世で最も欲した、唯一欲したものは決してもう叶うことはない。これ以上の愛を見つけることもできないという業。だとするなら、もう二人は死ぬ他ないのである。しかしながら、死という恐怖に人はあらがえない。特に現代なら兄妹心中のように、物理的に死ななくともよい。だから二人は満月という人物も殺すことにした。しかし他人を犠牲にした幸せなど報われるわけもなく、結局は二人は死んでしまう。

作中、慧はもしかしたらもっといい未来がなんて言ってるけど、そんなものはない。あってたまるか。