えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

さよならを教えて ~comment te dire adieu~の感想・考察

鬱系の話はかなり好き。三大鬱ゲーのうち、他の2作品も買えないものか…

 

コンプレックスまみれで病んでいる主人公が壊れていくか治っていくかの作品。

うーん、期待していたほどでもなかったなあ。別に好きじゃない。ただ全体として完成度は高い気がする。ノベルゲーム黎明期だった当時は衝撃的だったのかもしれないけれど、娯楽作品を浴び続けられる現代においては結構早い段階から気付ける展開だろうし…

ただ考察モドキがしやすい内容ではあるから好きな人は好きそう。わけのないことに対して、いろいろ理屈をこねくり回すのが好きな私のような人には。といっても最後にすべてネタ晴らしをしているわけですから、意味がないんですけどね。

自分の中に猟奇性があるかを確かめるくらいの気持ちでやるのがいいんじゃないですかね?少なくとも自分大好き人間の私には刺さらなかった。

 

やるなら睦月ルート+他1つでいい気がするけど、いずれにせよ睦月ルートを最後に持ってくるのが吉かなあ。

 

睦月ルート以外飛ばし読みだから多少の矛盾は多い。↓

 

彼女たちは主人公を救うための精神の依代。現実から目を背ける主人公が唯一、現実を知覚する術。5ルートあるが実質的には睦月とそれ以外の2ルートに分けられるだろう。

 

天使には女性への憧れと理想と現実。猫には死という恍惚なものへの羨望、後悔。カラスには母から教えられた暴力という禁忌を破ることへの快感、家族というものへの恐怖。人形には破壊衝動、身体へのコンプレックス、孤独感。標本には女性を恐怖する自分に対し、男性だからと恐怖するものへの嗜虐心(女性へのコンプレックス)と嫌いだった勉強に対する忌避。

最後はどのルートでも彼女たちの中から一人を殺す。それは彼女たちにとって、主人公に選ばれたという幸せな結末なのだ。少なくとも彼女たち、主人公の妄想にとっては。

選ばなかった4人とは簡単に「さよなら」できるわけですが、残る一人とは、そのコンプレックスとは、真の意味で向かい合って「さよなら」することになります。ここが分岐。

結局、たった一つのコンプレックスと向かい合ったところで、ここまでねじ曲がった彼の中の世界が元に戻るわけはなく、というかこれが正面から向かい合っているかってが問題ではあります。そもそも目的が現実と向き合うというものではなく、この教育実習という地獄から抜け出す、彼女を救うの2つですから、行く先は見えているようなもんですが。

希望はといえば、唯一生身の人間だった睦月なわけです。しかしながら、睦月は本来この病院から退院して元の生活に戻っているはずなのに、彼の世界の中では首を吊って死んだことになっています。つまり彼女が退院する際に交わした現実的な会話と約束の甲斐も虚しく、彼はまた妄想の中に戻っているんですから、結局、ほかルートと同じく新たな妄想の世界に戻ってしまいました。インターンとして、大好きな彼女たちとの逢瀬を死ぬまで繰り返すことでしょう。

まあ最後にとなえたちが語っていること、まんまでしょう。長々書いていますが、考察もくそもなさそう。

 

主人公の女性コンプレックスと書きましたが、どちらかといえば、性別に対するコンプレックスな気もするなあ。女性への性的興奮というよりは、破壊や殺人に対して興奮することが幼少期より多かったようだし。

 

御幸が立ち去ったあとに残された花のような香りっていうのは「いいな」って感じましたね。溶剤を使ったりしますが、本当に甘ったるい、それでいて気分が悪くなるシンナー臭といいますか、これは状況にぴったりな言葉だと思いました。気分が悪くなりながらも妄想の中のぬるま湯のような光景。まあホルマリンの匂いなんて使ったことないので知りませんが。

 

きっと3つの場所しか回れないのは、記憶がそれほど多く保てないから。本当は5つの箇所を周っているけれど、3つの事しか覚えていられない、そんな彼の病状の1つを表しているんじゃないかなあ。

 

=共通=

ー1日目ー

なんだか帰るといったり、保健室といったりすると奇妙な返事をする先輩教師。全部空想だったりしてな!ガハハハッ。

 

ー2日目ー

1日で保健ニュース変わるってどんだけやる気ある保健室なんだよ。

司書係の目黒美幸、なんかデザインに悪意ないか…?

保険医は心のお医者様?で、先輩教師は事務の人とかお医者様に準ずる人とか。

 

ー3日目ー

年の離れた幼馴染きたー。田町まひる。おにーちゃーんって言われると、ジョジョ3部のダークブルームーンしか思い浮かばないよ、おにぃちゃあん。

 

普通の人でありたいっていう強迫観念に近い思い込みが随所に記述される日。そして女性への強烈なコンプレックスも。

 

ー4日目ー

人が死に面したとき見るものとは。

 

白と黒の世界を彩る真紅。3色目の赤は血飛沫であったり、花であったり。

 

大森先生にとって主人公は〇〇だからという高島先生だけど、「患者」かなあ。

 

ー5日目ー

記憶の混濁を自覚し始める主人公。そしてついに、大森先生や高島先生、他の少女たちを下の名前で呼び捨てにする。何が現実で何が夢なのか。

異常が加速しているというかなんというか。教育実習さえ終われば、そんな風に主人公は思っているけれど、主人公がその明確な終わりを意識したことはここまでない。普通ならばあと〇日がんばろうとか、あと〇週の辛抱だとか、終わりを見据えて自身を鼓舞するにもかかわらず、主人公はただ漠然とその終わりを望んでいる。終わることのない日常、教育実習をただ耐え続けるしかない。

 

日誌を見て、昔からこんな文体だという高島先生。

家族のことを聞かれても、データとしても記憶しか残っていない主人公。おいおい、お前が姉か?

 

ー6日目ー

例え休日でも休診日という札のついた保健室なんてあるわけないんだよなあ。きっと高島先生が姉で、職員室が病室、保健室が診察室かなあ。問題はといえば、二人以外の登場人物で、いったい誰なのか。どこまでが現実なのか。少なくとも睦月については大森となえが観測しているはずなのだ。

 

ー7日目ー

これ、まひるは猫か~?だったら文面通り、望美はカラスで…?

姉との会話を思い出したり、少しずつ主人公は現実を知覚し始めている気がする。

 

ー8日目ー

となえと高島せんせの断片的な会話で、ほぼほぼ確定かな。

 

小鳥や小動物のようにじっと中空を見つめる望美。きっとは彼女は人ではない。鳥という記述が散見されるからきっとカラスで間違いない。

それにまひるが猫っていうのも、確定的になった。というかまひるだけなんか露骨だな。

問題は睦月が何かなんだよなあ。

 

高圧的な高島先生に対し、暴力を働きかける。

暴力性が芽生え始めた日。芽生えたというより、露見が正しいかな。もともと暴力性は幼少期から抱えていたみたいだし。

 

ー9日目ー

チャイムの音がおかしく聞こえる。

 

大麻を数ジャンキーなマリオと主人公を重ねるとなえに、主人公は自身を操っているのはあなただと襲い掛かる。

ここで最終分岐かな。もしかしたら好感度システムなんかないのかもしれない、分岐はここだけで。

 

毎日日誌を書かなければならないという義務。その枷があるからこそ、自分はこの繰り返す日常に囚われ続けているのだ。昔からそうだった。

殴りつけた彼女は、自身が姉だと、見守るのが義務だと訳の分からないことを言う。こんな訳のわからないことを言って、惑わさせる目の前の女にすることはただ排除、それだけだった。

 

ー10日目ー

今日はとなえも訳のわからないことを言う。自分と向き合うだのなんだの。誘惑する全裸のとなえと、そして自分を救い出そうとするとなえと。いつしかその声は誘惑の声のみになって、僕は逃げ出していた。

 

自分は先生といわれるからこの学校の教師で、だからこそみんなを救わなければならない。全員は無理でも、例え他のみんなを犠牲にしてでもただ一人彼女だけは。

 

ー11日目ー

となえと交わった。きっとそれは現実である。今現実にいるならば彼女を救わなくてはならない。

邪魔するものはすべてねじ伏せなければならない。高島先生であろうと、誰であろうと力のままに。

 

彼女を救うために、五芒星を描くように少女たちの元を訪れる。そこが思っている場所とは少々違う様相をしていても、もう僕には関係がなかった。

 

彼女たちが紡いでいた「さよなら」という言葉だけが僕の中に残った。

 

そして今日から僕はこの病院のインターンだ。

 

=睦月=

・可憐。そうとしか言い表せない少女、そして女性、巣鴨睦月に、主人公は夢の中で怪物に襲われる天使を重ねる。

・主人公が闇であるならば、睦は光。睦が天使であるならば、主人公は夢の中の怪物。そう認めてしまえば、本当に地震が何かになってしまうかのような恐怖心を持つ。

・授業の練習をしていたつもりでも、気づけば天使と怪物、その2つの言葉しか書いていなかった主人公。完全にアレだな。

・天使のごとき睦月を気が付けば愛撫していた主人公。それは地獄のような悪夢から逃れるため、誰かと一緒に居るため、白く染まるため。気が付けば天使は主人公の手の中から飛び立っていた。

・天使の樹の物語。そんな話を目の前の天使から聞き出す。なんてことはない学生が好みそうな話。そんな中に主人公は睦月が天使であるという確信を抱く。

・自身の白濁液で睦月を白く染め上げる。目を離したすきに風のように消失する彼女に、主人公は何の違和感も抱かなかった。

・ついに睦月が真実を語った。天使が舞い降りた。天使の声は聞こえない、気づけば天使は樹と一体になっていた。

・天使に助けを求められた。主人公は天使を救わねばならない、そう強く思う。自身が現実に戻るためにも、怪物にならないためにも、そして何よりもそうできるのは自分しかいないのだから、自分こそが彼女を天に帰さねばならない。そうできるのは自分しかいない。そう強く確信した。

・天使と、いや同じ境遇である巣鴨睦月と向かい合う。大切な人に裏切られここにきてしまった彼女は一足早くここから出ていく。思い出を求める彼女と交わった。それでも彼女は救えなかった。だから…

・彼女は天使の樹に首を括り付け、ついに天へと帰っていくのだ。救われたのだ。樹とともにいずれ天へとたどり着く。漸く今日が終わる。帳が下りる。