えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

銀色の感想・考察

さすがに古いだけあってUI周りはやってて辛かった。ただそれをすべて消すだけの内容だった。やっぱり過去の因縁を描くのが天才的だと思う。

 

どんな願いでも叶うという逸話の残る銀色の糸。自然の摂理を曲げてしまうその朱くなってしまった糸を巡る長い長い物語。

 

=感想・考察=

1章、4章が群を抜いて好き。次いで2章。3章は正直微妙かなあ。異色でテーマとあってない気がするし、なにより謎のままなことがほとんどで。

メインとなるのはやっぱり4章。

状況は違えど、声が出ないということで線を引かれていたあやめと、貴族だからと線を引かれていた大井跡。そして二人には線を無視して近くにやってくる明るい真也とあやめが現れる。

過去に救われた大井跡が生まれ変わって今度は真也としてあやめを救いに来た、って私は思う。喋れなかったり、身分が特異だったり、「普通」とは違うことで二人は引き裂かれかねなかったけど、本当は大事なものを過去に教わったから、魂がそれを憶えていたから、真也とあやめは結ばれたんですよね。過去ではたった1日だけだったかもしれないけれど、千数百年の時を超えてようやく本当に二人は結ばれたんですよ。

銀色は銀糸を巡る悲しい物語であると同時に、大井跡とあやめが結ばれるまでの長い長い物語だったんですね。花が誰かに見せるために咲くのを待っているのだとすれば、きっとそれは結ばれた二人を待っていたのでしょう。

という風に結局は二人の物語かーと思いきや、それは1章につながって、1章の二人も大井跡とあやめなんですよね。

 

しかしこれは4章までの勘違いだった様子。

すれ違ってしまいそうになった真也とあやめを、銀糸に翻弄されてきたものたちが二人を繋ぎとめた。

二人は生まれ変わりなんかじゃない。二人は二人で、あやめという名の少女を思った大井跡の願いが繋がっていただけなんだ。あやめが好きな人と一緒にあやめの花を見れますように。ただその願いを叶えるためだけに千年以上の時を銀糸の中で生き続けてきたんだ。そして願いを叶えて銀糸が無くなったから、一緒に声が奪われていた呪いまで無くなってしまった。だったら他の章もあやめにすればよかったじゃないかと思ったんですが、どうなんですかね?

石切姫を助けるために自らの命を捧げた久世。願いの代償はそれに相応する者が必要であること。

やはり願いは自分の手で掴まねばならないのだ、たとえできなくても藻掻き続け、それを自ら、苦しみながら考えなければならないのだと、最後に読者にメッセージを伝えてくれるシナリオでした。

石切はきっと大陸に戻り、残された銀糸を葬るたびに出たんでしょう。銀糸の願いで不老不死になったそれこそ永遠に、本当に世界から銀糸が無くなるまで。

ああ銀糸無くなってよかったね、めでたしめでたしっていうまま終わらせないところが好感持てる。ビターな展開で始まって、ビターな展開で終わるっていうところもね。

 

=第一章 逢津の圷=

恥ずかしながら、(たお、とうげ)という字を知らなかった。

 

脚の腱も切られ、ただ慰み者のされ続けるだけの、名前もない「わたし」。生きるためためらいもなく人を斬る「俺」。

 

本当ならもっと幼い時期に死という概念を学ぶはずなのに、捉えられ、ずっと利用され続けていたせいでそれすらもわからない。ということは自分がこのままいけば死んでしまう、そんなことすら、自らが不幸だということすらわからない少女。死を選ぶ権利すらない世界で彼女は生き続けていた。ただ目を閉じ、現実から目を背けることだけを繰り返し息をしていた。

開始30分でどうしてここまで心にしみる情景を描けるのだろうか。死を選ぶ権利というのが最後に残される権利である、というのはたしかヴィクトールフランクルも夜と霧で言っていて、私自身納得していますが、それすらないということは本当に文字通り、ただ利用され息をしているだけということ。

 

プレイヤーは少女の回想という形で知らされるが、男は少女の詳しい境遇も一切知らない。もちろん少女も男が過去に友人から裏切られた事実を知らないし、きっと理解もできない。

それでも死をもたらす男と、死に極めて近い少女は互いを助け合う。きっとそこに明確な理由はないでしょう。強いて言えばお互いが最も離れた存在で、そしてなにより同じように生きているか死んでいるかわからない存在だったからなのかもしれない。少女はともかく、強くなければ生きてはいけない、そう強迫的に思う男としては少女を認めることでようやく生きていることに近づけるのでしょう。

 

そして二人はついに朱色の糸を手に入れる。しかし少女の髪を初めて結ぶこととなったその朱糸は伝説に残る銀糸だったら、少女は何をの願うのだろうか。普通だったら脚が治ってほしい、豊かに暮らしたい。けれど少女にはそれすらもわからない。なぜならば生と死の違いがわからないから。今までが生きていたとは思えないから。

 

だんだんと衰弱し始める少女。そんな少女のためならば、危険を冒しても里に下りていく男。死んで当然だと思っていた弱い存在が、いつしか自分以上に生きていて欲しい儚い花のような存在に変わる名シーン。

 

死にゆく少女が朱糸に願ったのは、微かでもいいから生きた証しが欲しいこと。命の限り光り輝いていたあの時の渓の蛍のように、自分も生きた証しを残したかった。

その願いは彼女の死後、名前がもう二度と呼ばれることはないと思い込んでいた男が、名前のなかった少女に名前を与えることで叶えられることとなる。彼女が初めて美しいと笑みを浮かべた「あやめ」の花。その笑顔がもう一度見たかった。今度は自分の名前も呼ぶように、そう季節外れの渓に咲くあやめの前で冷たくなった少女に男は語り掛ける。ただ名前があるだけでなく、名前を呼んでくれる相手の名前を呼ぶ。きっと名前が生きた証しというのはミスリードで、この男こそが生きた証しなんでしょう。

 

タイトルの銀色と対となるのは金色ではなく朱色。伝説になっている銀糸は物語で朱色と描写され、かつて幸せだった日々を彩る木々の朱色は、男が成長した今は人を斬れば出てくる色に変わり果てる。きっとこれからの主人公たちも朱色に対する不幸があるはず。

 

最後に男が左脚を斬られたってのも粋というか、なんというか。これまでは男が少女を背負っていましたが、あの世ではきっと二人は片足ずつで互いを支えあうのでしょう。

 

=第二章 踏鞴の社=

名門久世家末弟である頼人は統治調査という大義名分のもと暇を言い渡された。そしてその逗留地である神社にて一人の巫女、狭霧と出会う。

ねこねこ名物ドジっ子。狭霧にも父母を鉱山で失ったという不幸はありそうなものの、一章とは打って変わって性格のよさそうな頼人と幸せそうな狭霧。

 

この神社に奉納されたものの一つこそが伝説に伝わる銀糸。その所在は宮司ですらはっきりとしない。しかしそのような恐ろしいものの所在などはわからない方がいいのかもしれない。

同じように奉納されたまま弾かれることのない琴を本懐が為されないから可哀そうだという狭霧。役割というものに固執するのは、過去の洪水が原因であった。洪水の救助にいったまま帰らぬ人となった両親。そして以降役立たずといじめられた境遇のため。

 

この世で自分にしかできないことがあると狭霧は嬉しそうに言う。

10年目の水害に、その10年前の水害で両親を失った狭霧と上記の言葉…予想がついた直後にその真相が明かされることになるが、笑顔でその事実を語る狭霧に対して、頼人同様私も動揺を隠せなかった。少しずつ状況を明らかにしていくなら、頼人と違って心構えもできただろうが、その間1分ともなると…

 

竹を割ったような性格だった故に、慕う者も多かったが疎まれてもいた狭霧の父。そして同じように優秀で他者の気持ちがあまり理解できない頼人。何か大きいことを推し進めようとすれば何処かに歪みが生じてしまうというのは、狭霧の事であり、頼人の事であり、きっとこれからも紡がれる銀糸の物語のことなのだろうな…

 

前日まで子供たちと遊ぶ狭霧。どこか遠くに行くという狭霧に別れを惜しむ子供たちを見て、ああ、こんなにも必要とされているのに本当に死ななくてはならないのかと思って仕方がなかった。人柱としてではなく、狭霧としてなの、どうしてと思ってしまう。

 

最後の夜に弾く琴の一本の弦だけが銀色に輝いていることに気づく頼人。狭霧はこれこそが伝承に伝わる銀糸だという。そして狭霧が願うのはやはり、里のものの幸せ。どうしてここまで優しい娘が、と思うけど、たぶんここまで優しい人なのだから人柱になるのを喜んで、きっと神も欲しがるのだろうな。いや実際は村人の企みなんだけど、きっと神というものが存在し、心が澄んでおらず誰かを欲するならきっと狭霧のような人物だろうと思う。

狭霧は頼人に抱きしめられて嬉しいとしか言えない無学さを恥じ、頼人はたった一言がどんなに技巧を凝らした言葉よりも尊いことを知る。

 

帰り際耳にしてしまった村人たちの企み。狭霧を狙って人柱にし、果てには狭霧が一輔に囲われているなどと、頼りないだのとほざく。

情動に駆られるまま狭霧を救いに行く頼人と同じように、初めて情動に駆られてノベルゲーで台パンしてしまった。

 

狭霧が銀糸に里の幸せを願ってこうなった、そうは思いたくなくて、狭霧の高尚な精神を否定したくなくて頼人は琴を壊す。知ってか知らずか、狭霧を救いたいといも願っていた頼人のそれは雷により叶うこととなる。

狭霧は怒った。そんなことは知っていたのだと。自身が助かっても、他の誰かが命を失い、その人の家族はまた悲しむことになる。そうなるくらいならば自分が死にたいといい、人柱として村を守った。

 

たぶん石切姫と久世のものが、第一章の糸を見つけ、銀色になっていた銀糸を奉納。そしてその久世の子孫である頼人の物語が始まり、時を経て第三章へって感じかな。

一瞬、一章と二章で時系列が前後しているのかもと思っておもしろいなってなってたけど、石切姫とともにいる久世が頼人だと銀糸が朱色ってのも可笑しな話になるしな。

 

第一章と同じく、詳しいお互いの過去を知ることはない(慰み者にされている、洪水で両親を失ったという事実は知るものの、詳しい過去が本人から知らされることはない。それに男の境遇がヒロイン側に知らされることもない)。けれどそれがリアルでいい。過去でなく、今をみて惹かれあってるのもいい。

 

=第三章 朝奈夕奈=

大正ロマンか…

 

茶店の看板娘たち、姉兼店長の夕奈と妹の朝奈。物語は自分のために仕事ばかりの夕奈のため、母からの秘密の形見、銀の糸が通った願いが叶うペンダントを使うことで動き出す。

だめだ、その糸を使っちゃだめなんだ!と涙ながらに思う。心優しき人たちがつまらない糸のためにそのささやかでかけがえない幸せを袖に振ってしまっては…願いが「お姉ちゃんが素敵な人と巡り合えますように」っていうのが愛そのものは偽物じゃなかったりして素敵な願いなんだけど、同時にそれはいつも一緒に居る朝奈も巡り合うということになり、そのあとの事は…どうしよう三角関係になったら…

まあまだ今までの銀糸は偶然だっていう可能性も!!………

サナララといい、ねこねこのオムニバスって神がかってない?

 

夕奈も志朗にだんだんと惹かれ始めているところから胸が痛くてかなわん…

お姉ちゃん!ごめんなさい!違うの!許して!!って叫びそうになりながらプレイしてた。悩みながら願っても、きっとその願いは叶わないんじゃないかなあ…

お姉ちゃん、怖い…この心変わりの早さはちょっと早すぎる気がするなあ…まあ5章立てだし仕方がないところなんだろうけど。ヤンデレかあ…もうちょいその素質がある布石とかがあればよりよかった。

志朗も気づけよ!!あからさまな夕奈の好意に!!ばかたれが!!!いいやつなんだよ、志朗。本当に。心から他人を心配できるいいやつだから、志朗が悪いとも言えないんだ…

 

人間って人を好きになってここまで狂うの?私が知らなかっただけ?

 

死を決意した朝奈は悪用しかねない姉ではなく、初めて好きになった志朗に託そうとする。しかし受け渡されたのはペンダントの石の部分。紐は朝奈に残された。そして皮肉にも二人の想いはその場で通じ合う。

嘘の下手な朝奈の嘘はすぐにばれた。それでも志朗とのことだけはバレてはいけないと、母の形見のことを伝える。この銀糸は願いを叶える銀糸なのだと嘘をついて。当然夕奈は銀糸にのめりこむ。

銀糸が本当に願いを叶える呪物だと知っていたら、志朗に銀糸を渡せていたならこれ以上、理が歪むことはなかったのに…残酷な物語。

 

もう夕奈は壊れてる。例え近づくためでも、きっと大丈夫とわかっていても、志朗が喉を詰まらせて、それを助けたいなんて願い、それはもう愛じゃなくて執着だよ。人じゃなくてモノだよ…

怪我する前に薬箱を取り出す描写こえーーーーー。

 

自分の顔を誰かに憶えてもらうのは嬉しい。そんな言葉が胸にしみる。

 

客が目に入らずに喧嘩、いや暴言を吐きあう二人。志朗によっていつしか見えなくなっていた佐々井亭の大切さを再認識した二人はようやく何が最も大切かを認識しあう。夕奈は今まではずっと一人で頑張ってきたのかもしれにけれど、これからは二人がお互いに支えあう。朝な夕なとずっとずっと。

夕奈の八つ当たりは朝奈にとっては甘えの表れだったんだ。当時の夕奈の心情はともかく、朝奈がそう感じられるならきっとそれが真実でいいと思う。

 

店の存続を銀糸に願おうとする夕奈。しかし朝奈はそれがニセモノだと知っていた。だからはっきりとその紐では願いが叶わないと白状するしかなかった。二人の絆は再び銀糸によって砕かれることとなった。偶然ではなく、自分の故意により志朗を傷つけたこと、嘘をつかれたこと、佐々井亭がなくなってしまうこと。様々な事実が夕奈を襲う。

銀糸は本物なのに!嘘じゃないのに!勘違いが、銀糸に願ったことによる代償が最愛であったはずの二人を引き裂き続けるのか…

 

夕奈はただ朝奈の復讐のために生きる。それでも佐々井亭のために死よりも苦しい生を選ぼうとする朝奈のため、嘘をついてまで志朗は夕奈の説得へ向かった。

一人黙って嘘をつかれて除け者にされていたからここまで夕奈は追い詰められてしまった。他人が信じられないから、その代わりに嘘とわかっていても銀糸を信じる。ターニングポイントは志朗への想いの交錯なんかじゃなくて、母の形見を黙って持っていたこと…だったら二人が元に戻るためには、その過去まで戻る必要があった。けれど、志朗への想いがあったから二人はそこが問題だと勘違いして、もう元には戻れないほど銀糸の呪いに囚われてしまったんだろうな…

 

朝奈に手をかけようとする夕奈の懐に銀色だったものが見えた志朗は思わず身体が動き出し、気づけば夕奈の身体は真っ赤に染まっていた。しかしそれは刃物ではなく、銀糸。朝奈や志朗でなく、自身が死ぬことに感謝を示す。

本人が言うように、朝奈が不器用だったように自分も不器用で、もちろん憎しみもあったけど全部が全部憎しみじゃなく、そこに愛があったのかもしれない。本当に虐めていたわけじゃなかったのかもしれない。本当に朝奈の将来を思っていたのかもしれない。真実はもう闇の中だけど、朝奈がそう信じられるなら、きっとそれが真実なんでしょう。あそこで再び裏切られたらBADって感じだから、きっと夕奈にとってもあのシーンは最後の瀬戸際だったんでしょうし、きっと本心に朝奈への愛は残っていたはず。

 

父の腕前にずっと届かなくて、それでも思い出の店を存続させるため努力努力して、そんな時、一筋差し込んだ志朗という光に出会う。しかし大好きになった志朗に朝奈すら取られて、、、そんな夕奈視点も見てみたいルートだった。

 

銀糸の代償は最も大切な人の命なのかな?2章では頼人の願いが叶って狭霧が死んで、狭霧の願いは自ら叶えたとすればいいし。3章はどうなんだ。銀糸は夕奈のもとにあったから、その大切な人の死って誰になるのか。自らが最も大切だったという悲しい現実…?逆に自らの命とすれば1章と2章の狭霧の一時の生還がわけわからなくなるし。

 

=第四章 銀色=

時は現代。大学のため、引っ越してきた真也と、声の出せない喫茶店の娘、あやめの物語。そしてかつてあった、旱魃のため銀糸を使った大井跡とあやめの物語。

ここにきてあやめかー。5章もあるみたいだけどタイトルといい、ここがメインというか終着点っぽいな。物語のつながりを重要視する傾向にあるし、3章で志朗と朝奈の子孫かな?

大井跡の物語は、銀糸を作るという点からもおそらく銀糸の始まりの物語。始まりと終わりの物語の交錯かー。綺麗だな。

 

それにしてもとんでもないカウンセラーだな、ほんとに資格もってんのか?人に頼ることはいけないこととか本気で思ってるのかな、しかもこんなに若い子に。

 

思ってもいない願いから母を銀糸で殺してしまい、その責任をまるで周囲から求められているようでついには言葉すら自身から奪ってしまった。

 

銀糸に命を吹き込むには、代償となる命が必要となる。だからこそ大井跡とあやめの想いが通い合おうと決して二人が結ばれることはない。

それとは別に願うために必要なものはなんなのだろうか。

 

状況は違えど、声が出ないということで線を引かれていたあやめと、貴族だからと線を引かれていた大井跡。そして二人には線を無視して近くにやってくる明るい真也とあやめが現れる。

過去に救われた大井跡が生まれ変わって今度は真也としてあやめを救いに来た、って私は思う。喋れなかったり、身分が特異だったり、「普通」とは違うことで二人は引き裂かれかねなかったけど、本当は大事なものを過去に教わったから、魂がそれを憶えていたから、真也とあやめは結ばれたんですよね。過去ではたった1日だけだったかもしれないけれど、千数百年の時を超えてようやく本当に二人は結ばれたんですよ。

銀色は銀糸を巡る悲しい物語であると同時に、大井跡とあやめが結ばれるまでの長い長い物語だったんですね。花が誰かに見せるために咲くのを待っているのだとすれば、きっとそれは結ばれた二人を待っていたのでしょう。

 

大井跡の本懐を無視してしまうことと、それでも死んでほしくないという二つのあやめの想いが痛いくらいに伝わってきて、さすがだなあとしか。こんなに短い、1章のさらに半分もないのに。

 

=第五章 錆=

大井跡が命を捧げた後の物語。旱魃のため、一人きりとなってしまった1章の少女の母の物語。旱魃により取り残された妹を守るため、体を産み、子を宿した姉とこずえの物語。

少女の名前が本当にあやめで、もう涙がほんとに…いやその前から姉のストーリーを見て泣いてたけど…

そしてこずえも同じことを繰り返し、あやめの命を繋いでいく。

 

もう一つ、ふたりのあやめの物語も。4章で描かれなかった続きを描く。

大井跡の代わりに命を捧げたあやめ。花は咲いたが結局一緒に見ることはできなかった。それに代償となるのは銀糸を作った大井跡の命でなくてはならない。後悔のみが残った。だから大井跡があやめと一緒に花を見たかったと思いながら命を絶ったのは当然なのかもしれない。だからこそ1章で、現代であやめの花を漸く二人は見ることができたのだろう。

すれ違ってしまいそうになった真也とあやめを、銀糸に翻弄されてきたものたちが二人を繋ぎとめた。

盛大な勘違いをしていた。二人は生まれ変わりなんかじゃないのか。二人は二人で、あやめという名の少女を思った大井跡の願いが繋がっていただけなんだ。あやめが好きな人と一緒にあやめの花を見れますように。ただその願いを叶えるためだけに千年以上の時を生き続けてきたんだ。そして願いを叶えて銀糸が無くなったから、一緒に声が奪われていた呪いまで無くなってしまった。

あったかもしれないみんなの未来を見て虚しいけれど良い涙が流れた。あやめの心の言葉にまで声がついたということにも感動。いままでは心の声すらないほどに、自分ん声を憶えていなかったということが感じられて。

 

=追加シナリオ―銀色―=

石切姫を助けるために自らの命を捧げた久世。願いの代償はそれに相応する者が必要であること。

やはり願いは自分の手で掴まねばならないのだ、たとえできなくても藻掻き続け、それを自ら、苦しみながら考えなければならないのだと、最後に読者にメッセージを伝えてくれるシナリオでした。

石切はきっと大陸に戻り、残された銀糸を葬るたびに出たんでしょう。銀糸の願いで不老不死になったそれこそ永遠に、本当に世界から銀糸が無くなるまで。

ああ銀糸無くなってよかったね、めでたしめでたしっていうまま終わらせないところが好感持てる。ビターな展開で始まって、ビターな展開で終わるっていうところもね。

これにて1章と2章の間の物語も完結。そして物語は朱へとつながる。