えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

アニメ バナナフィッシュの感想考察

ちびちびと見ていたバナナフィッシュを漸く見終えました.もともとKing Gnuが好きでEDのPrayer X目当てで見始めました.

 

今も昔も人は悲劇作品が好きなんですかね.僕もシェークスピアは普通ですが,基本悲劇作品は好きです.

原作自体はかなり古いらしい(~1994らしい)のですが,劇中ではイラク戦争や9.11の話が出てきたので,そこらへんはずらしているんでしょうね.

あまりアニメは見ないのでわからないんですが,とにかく展開が速くて中弛みすることなく視聴できました.

 

以下ネタバレ

 

物語は,アッシュがバナナフィッシュを偶然にも知るところから始まりますが(偶然といっても時間の問題だったでしょうが),なんといっても物語(アッシュ)の運命を決めた最大の要因はエイジでしょう.また物語はバナナフィッシュを中心に展開されますが,大きな対称構造はアッシュとユエルンと思います.

 

アッシュとユエルンの共通した部分は「支配されている」と「支配者に対し恨みがある」と「女性のようである」という3点に落ち着くと思います(加えて言えば裕福であること).それ以外の部分はほぼ対称的といってもいいと思います.

 

1.アッシュの支配者のあるゴルツィネは,大きく歪んではいますがアッシュに愛を注いでいました.一方でユエルンの支配者である兄たちは一切の愛情を向けていません.

 

2.アッシュは自由を渇望し,ユエルンは自由を諦めています.

 

3.アッシュの周りには信頼する仲間がいましたが,ユエルンには雇った小間使いしかいません.

 

4.アッシュにはエイジのように心から愛してくれ,心から愛する友人が現れましたが,ユエルンには現れません(これは1や3の影響で心を開かないことが原因である).

などなどほかにもあると思います.1周しかみていないのでパッと書ける重要なところでもこのくらい.

 

その対称構造の結果は以下

1.憎しみのみを持ち続け,復讐のみを考えた結果,ユエルンは恨む兄たちを狩ることができましたが,アッシュは恨みのみで生きていたわけではないため,結局ゴルツィネを殺したのはアッシュではありません.むしろゴルツィネがアッシュへの愛ゆえに,アッシュを守っています.

 

2.アッシュはエイジをはじまりに,今まで敵対していたケインや交わるはずのなかったマックスたちと友好関係を築きますが,ユエルンはむしろ孤独の道を進むことになります(要所要所でシンが来たりと孤独を抜け出すタイミング自体はありました).

 

3.これはこじ付けかもしれませんが,アッシュは満足して死に,ユエルンは不満のまま生き残ります.

など.

物語の最後でユエルンのもとへシンが訪れますが,あそこが新たなユエルンの人生の始まりなんでしょうね.ブランカのいう「周りにきっと愛してくれるひとがいる」はシンを暗示していると思います.

 

ある意味での対称性はシンとブランカにも見られます.

共通点は「ユエルンの配下に一度なっている」「結局アッシュの助けをして,ユエルンから離れている」「ユエルンの孤独,心の傷に気づいている」でしょう.

対称性というのは,シンとブランカがユエルンの手下になっている時期がちょうど入れ替わりということです.シンがユエルンのもとを離れた直後,ブランカが登場しています.結局ブランカはアッシュの助けにはいる際に,この二人が組み合わさったのはともに,ユエルンのもとに入り,ユエルンの孤独さに気付いているという共通点があるからだと思いました.

またブランカは自分で「感情がなかった」と言っており,ユエルンには「憎しみだけ」と言っており,共に感情面での欠陥が示されていますが,シンはショーターが殺されたことへの恨みからという点で,同様の存在になりえたが結局はならなかったという対称性もあると考えます.これはアッシュのおかげです.つまり「憎しみだけ」の存在になりえたがそうはならなかったアッシュが,同様のシンを助けたのです.まあこの点は考え過ぎと思います.

 

アッシュとユエルンの太一るですが,言うまでもなく,劇中でブランカが語ったように,持たないものを持つアッシュへの嫉妬でしょう.

 

最後にアッシュの死について.アッシュの死は運命だと思います.上述の通り,アッシュが物語の最初でバナナフィッシュの存在に気が付かなくとも,それは時間の問題だったでしょうし,もしかするともっと早く気づいていたかもしれません.その場合エイジとともに行動するということもなくなるのですが,その場合アッシュは絶対的に守らなければならない対象はおらず,もっと無茶な,犬死にも等しい行動をとっていたでしょう.その結果死はほとんど決定的だと考えます.ゴルツィネはアッシュを殺さないでしょうが,エイジを人質に取られていないアッシュが一生飼いならされるとは思いません.自殺するか抜け出して再び復讐するかは知りませんが,死にはするでしょうし,その死までの期間はもっと早まっていたでしょう.

しかしながら,タイミングよくエイジが来たことで,アッシュの物語は大きく舵を切ります.自分への無償の愛を知り,だからこそアッシュは笑って死ねました.おそらくエイジのいない場合は,笑っては死ねないのではないでしょうか.文字通りエイジは救いの女神で,だからこそ長い間アッシュは生き残れましたし,目的も達成できました.

しかし運命は変えられず,救いの女神との別れがアッシュの生との別れになり,アッシュの運命は死という方向に向き直ってしまったのだと思います.

「僕の魂はいつも君のそばにいる,また会おう」とアッシュに伝えたエイジ.遠い未来のことですが,あの世で二人は再開できることでしょう.

 

なにかそれは違うとかありましたら教えてください. 以上