えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

素晴らしき日々~不連続存在~の感想

 

=全体の感想=

良作。ただし過大評価ではあると思う。難解な引用があり、読者層が(もちろん私も含め)その引用を正確に理解できていないため、深読みしてしまう。結果評価があがっているように感じたのも事実です。

 

サクラノ詩をしたくなったんですが,先にこっちの方がいいだろうと重い腰を...あんまりオムニバス好きじゃないんですが,それでも今作は面白い.

1章2章は完全電波で,2章終わりかけくらいで物語のトリックに気づき始めます.なので読んでて面白くなってくるのは3章(Looking-glass Insects)ないしは4章(Jabberwocky)あたりから.

基本的には7/20までの流れを多人数の視点で追うことになります.同じような手法の作品もありますが,これほど何度も同じ事象を見せておいて,後半になるほど面白くなっていくのは凄いと感じました.前半が読んでて苦痛ほどの電波っていうのはありますが.

 

やっぱり「幸福に生きよ」これを伝えたいがための作品なのではないでしょうか。やれ哲学的だのなんだののレビューを見ましたが、本作でも多数引用されているウィトゲンシュタインが言ったように、あまりに言葉遊びチックになるくらいなら哲学にのめりこんでも(外の世界にのめりこんでも)仕方がないぞ、と個人的には読めました。難解な道筋を辿ってきたが故の単純な答えこそが真髄だと。というかこれについては語られていましたね。

 

哲学的な要素といわれれば、すべてが終ノ空に押し込められている気がします。果たして7つの仮説はどれが正しいのか。

 

ENDはいくつかありますがWonderful every dayだけがメインで他はおまけでしょうかね。

 

=Down the Rabbit-Hole=

主人公は由岐.電波な少女,ざくろと,双子の鏡と司と,夏の大三角形が見える場所で夏に一度だけ地上の世界少女と空の天空少女が出会うまでの物語.

 

4人の同居編からは一気に百合百合展開.この世から男なんていなくなって,こんな平和な世界がくればいいのに~.

 

おそらく記憶を失っているのであろう由岐.それを想うざくろが健気で好き.好きな曲を弾いてくださいなんてところとか特に.

 

ざくろルートの奇妙なアトラクションが鍵なんでしょう.86400秒,24時間のカウントは由岐とざくろだけが,終ノ世界で過ごせる時間.残された二人の逢瀬の時.ざくろによれば人が内面を持ち,外の世界を共通に持っているという考えは過ちに近い.おそらくそれはそこが内で,あちらが外だと明確に線引きできないという点で正しいと言っていると思う.そこに何かがあると思うから,それはそこに存在するのだという認知の誤謬.

自殺をしたざくろが巻き込まれた由岐を,幻想世界から現実世界へと連れ戻す物語.ある意味では現実が辛かったざくろに与えられた大好きな彼女との短い蜜月.

鏡,司ルートは由岐の潜在意識にあった同性愛的側面の現れなのでしょうか?男は嫌いと言っていたし.二人を選んだ末,ざくろだけが旅立ってしまう物語の結末は何を意味するのでしょう.現実に戻れないというのは植物状態かと思ったりもしましたが,必ずしもベッドで目を覚まさないというざくろの言葉から考えるとそうではなさそう.まあ不思議な世界ですし,その世界に囚われ続ける程度の認識でいいのかな?

 

「私は八十二歳にもなって」の一節は聞き覚えがあるんだけれどなんだったかしら.線というのは本に引いた線?

銀河鉄道なんかも昔に呼んだけれど,もうほとんど覚えていない.というかまったく.

 

女の子同士の,男のまったくいない恋愛がみられて私は幸せでした...

終わってみれば聞いていたような哲学的なものはほとんどなく,これからに期待.

 

=Down the Rabbit-Hole Ⅱ=

まさかのⅡ.

ウィトゲンシュタインかー...いったい何人が理解できているのだろう.私はまったく.入門レベルでリタイヤ.元のやつは全く読めない.

 

彩名と卓司は違う世界にいて,由岐は世界を移動しているって考えるのが自然かなあ.もしくは二人も移動できる.

由岐の推理もそんな突飛なものではないから面白みがない.いやまあ世界の秘密が隠されたままだから面白みがなくて当然なのかもしれないけど.まだまだ情報が少ない1章.

どこから面白くなるんだ―.面白くなる気がまったくしない.あまりにレビューいいから後半一気におもしろくなるんだろうけど.

 

瀬名川先生のメールで12日に来たメールなのに6日後に世界が滅ぶって書かれてるのはミス?

 

ところでどこらへんがウィトゲンシュタインだったんだろう.読み飛ばしてる可能性が大いに高いけど.

 

=It’s my own Invention=

卓司,お前か!お前思ったより元から口悪いな!

そして卓司よりやばい皆守.こいつも確か主人公だったと思うけど...感情移入できないよ...

 

P2Pで落とすのが正しいと思ってたりまじで共感できん.

あと永遠にいじめ見せられてるけど,これを見て私はどうすればいいんだ...

 

司と鏡は,あるいは加えて皆守は卓司からして想像の産物なのだろうか?急に現れるし,心読んでくるし.

 

死を理解しないものは永遠の相を生きるっていうのは面白い言い方だなあ.というより個人的に思うのは死を理解できる,もしくは認識できる,恐怖できるのは時間の概念を(感覚的に)理解している生物のみに限られるっていうのが真な気がする.いつか死ぬかもしれない,の「いつか」に時間の概念が必要であり,そして死ぬという事象は少なくても未来の現象であるので「いつか」が必要となる.従って死を理解できない者は,時間の概念を理解できないこととなり,今という永遠を生きることとなる.さらにいうなれば,死をよく理解するほど,向き合うほど,時間の概念を理解したこととなる.時間の貴重さを知ることとなる.

書いてみてみるとあたりまえだなあ…

 

全体を通して1章でおかしかった卓司の視点を追っていく形なのでほとんどなにもわからなかった...ただ本当に世界が2つあるかは少し怪しくなってきたなあ,卓司の妄想世界と現実世界のごちゃまぜはさておき.5分5分?まあまだまだ分からないよねー...

あと卓司と由岐が重なってるのはなんなのだろう.鏡,司が話しかけてきたり,横山やす子と話してたり.二重人格?皆守も含めて三重?もしくは3つの世界?世界は1つな気がするけどなあ.

皆守のナイフを奪えたり,世界に干渉できているのもどういうことだ...皆守の傷がそのまま卓司にも行ってるし,つながりがあるのは確かなんだけど...

かなり飛ばしながら見たけど,全部見れる人いるのか...?

 

ここまでで考えをまとめるなら

 1.由岐,卓司,皆守は何かしらの関連がある(3重人格?)(2章)

 2.鏡,司はそれに気づいている特別な存在であり,鏡は人形である(三者の認識の問題?)(1章-2,2章)

 3.ざくろの自殺→由岐人格が受け止める→1章-1→帰って来る→卓司人格,写真を撮る

かなあ.

皆守にカツアゲされたのに,グッズを買うお金があるからお金は同一人物でループしてるんじゃないかなあと思うけど...

 

=Looking-glass Insects(希実香END)=

次はざくろかー.もしかしてずっと7/20までの話かな...?

冒頭のざくろと卓司の会話を三重人格っぽいけどなー.鏡,司はどうなんだろうか.いずれにせよ,3人以外の視点だから何かしら明らかになりそう.携帯を持ってないっていう由岐の話は主人格じゃないからってことかな.

心読まれるっていうのは独り言ってことでFA?

 

はー,鏡=人形,司=羽咲だったのか.

 

カントール対角線論法なんて久しぶりに耳にした.実数の濃度とかそこら辺の話はかなり感動した記憶.

 

ウィトゲンシュタインは言葉遊びな哲学を批判してたけど,間宮(卓司以外)にそういう言葉遊び的なことを結構喋らせるのは伏線なんだろうか,キャラ付けなんだろうか.

 

三者視点で見せてもらったことで急に面白く感じて来た3章でした.シラノを読んでいたらもっと面白かったのかも.

 

希実香ENDの彩名の話を聞く感じ,彩名は世界の可能性を見れる者っぽい?希実香ENDは一つの幸せの形,一つの素晴らしき日々の形.ようやく1つENDを見れた感じがある.

 

=Looking-glass Insects=

ざくろがぶっ飛んだのは,希実香を見捨ててしまった自分への嫌悪,いじめの再発から,か.いじめというよりは大犯罪も大犯罪だけど.

 

やっぱり正史は頭おかしくなりますよ...!

 

=Jabberwocky=

次は皆守.多重人格ではあるが,まともではある.たぶん...

 

いきなり多重人格のネタ晴らし.とはいえここまで気づいていない人もいないでしょう.

不連続存在というサブタイトルを鑑みるとやっぱり3人が主人公だなあと思う.もともとは西田幾多郎の連続と連続の間的な奴だと思ってたけど違いそう.

 

2章までと違って皆守の好感度たかーーい.羽咲いないからカップ麺食べられる,ゲームできるってウキウキだったり.

 

縁と同じで一度現れてしまい,さらにはそれが友好的であるなら,その消失はとても辛く思えてしまう.それでもきっと3つの人格のうち,2つは消えてしまう.そんな避けられない運命の虚しさ,哀しさが良い...

 

水上由岐の人格はさらにもう一つある.鏡,司を認識する人格と羽咲を認識する人格.面白.どこまで違うかは議論の余地があるだろうけど.やはり主人格強し,完全に利用するためのもの.

由岐と皆守を見ていると卓司が巨悪に見えてくる.立ち向かわねばと.でも卓司の性格はさておき,主人格は卓司なはずで誰が人格を取り戻すべきかと言われれば卓司だと思うし...その性格すらも原因は彼本人にはない様子だし.

 

=Which Dreamed It=

単純な多重人格じゃないのかー.双子の兄,卓司.

卓司は皆守で,本当の卓司は皆守が正当防衛で殺してしまった...卓司自身も元の人格ではないっていう予想はあってたけど,皆守が本当の兄とは思わなかった...とも兄さんであってたんだね.

そして由岐もまた存在していた.いや存在していたのはマスターの苗字や話からわかっていたけど.

きっと全員が被害者である悲しい物語.すこ...

 

=JabberwockyⅡ=

さあ7年前の話,ネタ晴らしパート...これとあとは彩名と世界の秘密くらい?

 

皆守と羽咲と由岐の幸せな生活。

事実としては知っていたけど、こう皆守が羽咲をおぶって帰るシーンを見ると胸がつまる。

大きなうさぎのお人形も。若槻商店の大きなうさぎのぬいぐるみ。若槻姉妹って勘違いしたんだからやっぱりあの間宮卓司は皆守なんだなーと。約束を憶えているんだなーと。

 

幸福に生きよ。ただただこの一言のためにこの作品はあったのだろうか。ウィトゲンシュタインに再挑戦しようと思う。

 

卓司の死に方と、皆守の死に方(仮)の一致も美しい。

 

=Wonderful every day=

羽咲ENDかなあ?確か分岐あったから。

 

誰も悪い人なんていなかった(教祖を除き)。ある意味で皆守にとっては最も残酷な結末。この事実はあまりに悲しくてこの作品で一番泣いてしまった。

世界の外と内。器とそれを満たすもの。そんなものはなく、すべてはただ自分の世界である。あんな電波からよくここまで綺麗に…ジグソーパズルの比喩も上手い。

 

木村が言うような破壊願望消滅願望は現実、多くの人にあるように思います。理由は述べられている閉塞感であったり、存在意義であったり、いろいろあると思います。だからこそ根源的理解よりも、対処療法的な、哲学というよりも実戦的倫理学的な思索が必要なんだと個人的には思います。ありもしない哲学的な外側を求め続けるのではなく、手の届く範囲のものを大切にする、足るを知る精神が必要なんだと。

一方で広がりたいという根源的な欲求が人間社会を発達させてきたのも事実ではあるので、何が正しいとかそういうものではなく、本作品の伝えたかったことは上述したようなことだろうという限り。

 

=himawari no sakamichi=

由岐END。不思議なこともあるなあ。あんまり好きじゃない。

 

終ノ空Ⅱ=

彩名の正体と最初の不思議な世界。

クオリアが仮に本当に共通しているならば、その根源はすべての生物に宿る魂が共通の、1つであるからである。

展開的にはこの仮説7が正統そうであるけれど、何が正しいかは言うことができないですし、だからこそ哲学的とこの作品が言われる由縁になっているような。

ハガレンの真理みたいな一言ですね。

魂は回り続ける。そしてその魂は共通なもの。多重人格が物語の最大の仕掛けとなっているためやはりこの仮説7こそが正しそう。

 

=Knockin' on heaven's door=

himawari no sakamichiの果ての世界。おまけ。ただ幸福に生きよという単純で現実的な答えのあとに、非現実的なこれはあんまり好きじゃない。