えす山の日記

自分用のゲームの感想日記とか

すばらしき世界の感想

基本的にノンフィクションはあまり見ないのですが、いや本当に見てよかった。丁寧に丁寧に心理描写や現実を描いた作品だと思います。

主人公が殺人犯で、癇癪もち。ただそれ以外は本当に普通の、弱い中年男性です(喧嘩は強いけど)。犯罪者へのあたりの強さ、そんな中でも優しい人はいるということ。実際これほど優しい人がこの世にいるかと言われれば、少なくとも現代社会においては甚だ疑問ですが。。。それでも0ではないはず。こんな辛い浮世でも、こんなに優しい人がいるんだ、すばらしい世界ってことでしょうかね。辛いんですよね、生きるのは。あくまで辛いが主体。だけどちょっとした幸せがあるのがすばらしい世界。全部が全部素晴らしいわけではないし、むしろマイナスなんだけど、それでも素晴らしいと言ってしまう部分がこの世界にはあるんだと。ラストシーンではウィトゲンシュタインの遺言が想起されました。

もちろん殺人は赦されざることで罪は償わなくてはなりません。しかしその全ての責任が本人にあるとはとても言えないでしょう。前科10犯、原作を描いた作者はその戸籍謄本の白さに驚き、書くことを決めたと述べています(wiki情報です)。

役所さんはもちろんですが、六角さんや仲野さんの演技に泣かされました。お気に入りのシーンは元妻を訪ねた際、娘とのみ会い、年齢を聞き指折り数えていくところ。一つずつ指を折っていき、自身の娘ではないことがわかると少し震えながら指をクシャリと閉じ、何とも言えない悲しそうな表情を見せる。そんなわけない、そうわかっていながらも期待してしまう。もし自分の娘だったら、例え元妻とよりを戻せなくとも、この子のために生きていけるはずだ、そんな願いを託してしまったのかもしれません。

上述しましたがラストシーンも素晴らしい。中野さんの泣きの演技はもちろん、彼らが、特に彼が走って家に向かうシーン。きっと改心していなければ、彼は本当の意味で孤独に死んでいきましたから、そういう意味でよかったなと。

好きなセリフはダントツで「娑婆は我慢の連続でたいして面白くもない。だけど、空は広い」

介護で働いてる際、虐められている男性を助ける葛藤する所も好き。

 

いやーこの文章を書きながら段々と、ますますこの映画は胸に残っていく。